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 つつみしんやのひとりごと 
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2024.4.25

DANILO PEREZ, JOHN PATITUCCI
& BRIAN BLADE
"CHILDREN OF THE LIGHT"




パナマ生まれのダニーロ・ペレス(pf)と
ジョン・パティトゥッチ(b)、
ブライアン・ブレイド(dr)のトリオ、
「チルドレン・オブ・ザ・ライト」。
元々は、2000年に結成した、
ウェイン・ショーターのカルテットだったらしい。
ウェイン・ショーターは昨年、逝去。
享年89歳。
私はこのジャズの巨匠についてほとんど知らないんだ。
若いころ読んだ吉田ルイ子の本に
ウェインが出てきて、それで名前を覚えたのだけど、
音楽は、ほんの少ししか聴いていない。

「チルドレン・オブ・ザ・ライト」は、
ウェイン抜きのトリオで、2015年に1stアルバムを発表。
とにかく忙しい3人なので、中々観る機会がないだろう。
今回は、ブルーノートの会員ポイントが貯まったので、
招待券をもらい、何を観ようか散々迷った挙句、
本ライヴを選んだ。
3日間6公演のラスト・ショーで、満席。
出て来るなり、ダニーロは、
「今日は最後だから一番長くやるよ」と言った。(たぶん)

さて、このジョンや、ブライアンは、何度か
観ているのだけど、このトリオを聴くのは全く初めて。
正に名手たちの演奏。
あまりに自由過ぎる。
特にブライアンが、終始嬉しそうで弾けていた。
満席のお客さんは、大熱狂。
私にはちょっと高尚過ぎて、なんだかよく分からないほど。
アンコールは『'Round Midnight』。
これは、分かりやすくて良かった。
「長く演る」と言った通り、アンコールを含めて90分。

ジョンは、コントラバスとエレベ(6弦)を演奏。

ダニーロの言葉にシビレた。
「We are quartet. Trio and you.」


[ MEMBERS ]
Danilo Perez (p)
John Patitucci (b)
Brian Blade (ds)

@ Blue Note Tokyo
2nd show





2024.4.21

青天の霹靂



2014年に公開された映画『青天の霹靂』。
劇団ひとりが、自身の書き下ろし小説を
初監督で映画化した作品。
公開時に劇場で観たのだけど、当時の感想は★5つ。

イマイチな人生を送っている晴夫(大泉洋)が
40年前にトリップし、父(劇団ひとり)と
母(柴咲コウ)に会う。
自分の人生がイマイチなのは、
自分を捨てた母親と、ダメな父親のせいだと
生きてきたのに、若い頃の両親は、
自分が思っていた 二人ではなかった。

10年前のエントリーにも書いたけど、
大泉洋が上手い。
泣かされます。

でも、ちょっと期待し過ぎたかな。
思ったほど感動できず、今回は★4つ半。
これって、やはり劇場で観るのと
自宅で観るのとの違いが大きいと思う。
劇場で観る方が絶体 映画にのめり込めるし
感動するんだと思う。
それだけ、劇場で観ることには価値があると思うね。


★★★★▲


2014年製作/96分/G/日本
劇場公開日:2014年5月24日

Amazon Prime Videoで鑑賞





2024.4.20

五街道雲助一門会
~ 雲助祭り的な ~




昨年、落語家の五街道雲助師匠(76)が、
重要無形文化財保持者に認定された。
人間国宝だ。
落語家の人間国宝は、柳家小さん、
桂米朝、柳家小三治に続いて4人目。
3人はすでに故人なので、現役落語家では
ただ一人となる。

雲助師匠を観るのは、今日が4回目だったが、
人間国宝になられてからは初めて。
まず、弟子3人とともにトーク。
ここだけ写真を撮ってOKだった。



雲助師匠等身大パネルとご本人。



もう人間国宝になって大分時が経つので、
お祝い的な会もそろそろ終わりのようだ。

弟子の桃月庵白酒と隅田川馬石は、
好きで良く聴く。
もう一人の弟子、蜃気楼龍玉も面白いが
兄弟子ふたりの個性が強いため、
やや目立たない印象。

龍玉の演目は「鹿政談」。
上方の古典落語で、過去に米團治の口演しか
聴いたことがなく、東京の噺家では初めて。
オチが「マメで帰ります」というのだが、
この「マメ」が調べると「身体が丈夫なこと」なんだけど、
ほとんどの人が「?」ではないかな。
こうやって、意味の分からないオチの意味を
知っていくのも落語の勉強ね。

続いて馬石の「締め付け」。
最近、寄席で柳家さん喬師匠のを聴いた。
正統派なさん喬師匠と、
いく分オーバーではち切れた馬石と
芸風の違いを観るのも落語の楽しみだ。

休憩を挟んで、白酒の「犬の災難」。
トリは、雲助師匠の「幾代餅」。
なぜか、この噺だけ睡魔に襲われて、
まともに聴けなかった。残念。


[ 演 目 ]
<トーク> 雲助・白酒・馬石・龍玉
「鹿政談」 蜃気楼龍玉
「締め込み」 隅田川馬石
--- 仲入り ---
「犬の災難」 桃月庵白酒
「幾代餅」 五街道雲助

@ 渋谷区文化総合センターさくらホール





2024.4.19

DOMINIC MILLER
ドミニク・ミラー



2019年以来5年ぶりの来日だった
ドミニク・ミラーを観てきた。
2017年はトリオ(3人)、
2019年はクインテット(5人)での
来日だったけど、今回はカルテット(4人)。
ベースは、前回と同じくニコラス・フィッツマン、
ドラムも、前回と同じジヴ・ラヴィッツ。
キーボードは、前回のマイク・リンダップに
代わり、ジェイソン・リベロ。

全員素晴らしかったのだけど、特に
このピアノのジェイソン・リベロが良かった。
この人のリーダー・ライヴを観たいと思ったほど。
調べてみると、スティングやジェフ・ベックとの
共演歴のある、イギリスのピアニスト、
ソングライター、プロデューサーだ。

音楽は、ジャズ的だったり、アンビエントの
ようだったり、プログレ・ロックのようだったりと、
ジャンルレス、ミクスチャー。
メンバーが楽しんでいるのが伝わってくる。
いつまででも聴いていたいと思わせてくれる。

ドミニクは、どちらかというと派手な
ソロを弾くタイプではないけど、その分、
ほかの3人が活躍する場面が多くあった。

スティングの『Shape Of My Heart』、
『Fragile』、『Fields Of Gold』もプレイ。
でも、歌がない分、別世界の曲。

ドミニクのギターは、白いヤイリ。
前回は黒だったような記憶があるので、
新しいギターだろうか。
とても良い音で、欲しくなったよ。
アンコール2曲目で、タカミネのスチール弦を使用。



なんだかいつもより、ステージ上のマイクの数が
多いような気がしたのだけど、
レコーディングしていたのだろうか。


[ MEMBERS ]
Dominic Miller (g)
Jason Rebello (p,key)
Nicolas Fiszman (b)
Ziv Ravitz (ds)

@ Cotton Club
2nd show





2024.4.16

AVISHAI COHEN TRIO
アヴィシャイ・コーエン・トリオ




昨年は、アヴィシャイ・コーエン・トリオ(2月)と
アヴィシャイと小曽根さん(pf)のデュオ(10月)を
2回、合計3回もアヴィシャイを観ることができた。
今日は半年ぶりの来日公演を観てきた。
昨年2月と同じメンバーのトリオでの来日だ。

2017年の公演は、3日(6公演)、
2019年は、4日(8公演)、
2023年は、4日(6公演+小曽根さんとのデュオ2公演)
だったけど、今年は、5日(10公演)に増えている。
13日に配信があったのに、うっかりミスして
見逃してしまった。残念。

今日は、公演4日目。
申し込んだときは、追加公演(19日)が決まって
いなかったので、最終日だと思って申し込んだんだ。

さて、追加公演が決まるほどなので、
今日は満席のようだった。
人気の高さが伺える。

昨年2月のトリオのライヴの感想に
「エモーショナルで野性的なのにどこまでいっても知的」
と書いた。
今日の感想は、1曲目で決まり。
「ワイルド&ビューティー」。
美しいんだよ。
もう「ワイルド&ビューティー・アヴィシャイ」と
名付けたいぐらい。

このメンバーによるトリオとしても
数多くのステージをこなしてきただろう。
バンドとしても進化を感じた。
何より3人ともホントに素晴らしい。

アンコールは、昨年観たステージ同様、
アヴィシャイのヴォーカルで『Summertime』だった。

彼らの国(イスラエル)は、難しい状況だが、
ミュージシャンの仕事は、良い音楽を生み出すこと。
平和への祈りを込めて。


[ MEMBERS ]
Avishai Cohen (b,vo)
Guy Moskovich (p)
Roni Kaspi (ds)

@ Blue Note Tokyo
2nd show


Avishai Cohen Trio - Seven Seas (Live at Blue Note Tokyo - 2023)





2024.4.16

虹を掴む男
The Secret Life of Walter Mitty




昨日観た映画『LIFE! / ライフ』は、
2013年にベン・スティラー監督・主演で制作された。
原題は、『The Secret Life of Walter Mitty』。

昨日調べていて、1947年に作られた映画の
リメイクだと知った。
興味があったので、その1947年版も観てみた。
邦題は『虹を掴む男』。

もう全く別の物語。
主人公ウォルター・ミティに妄想癖があると
いうこと以外は、何もかもが違う。
原作は非常に短い短編小説ということなので、
映画制作の際に設定など自由に膨らませたのかも知れない。

77年も前の映画ということもあるだろうが、
ちょっと退屈だった。
何よりウォルターの妄想が面白くない。
これは時代だろうな。
そして時々ミュージカル風になるのも
私には余計な演出に感じた。
『ライフ』では、ウォルターの妄想は最初の方だけで、
割とすぐに実際に行動し始めるのだけど、
『虹を掴む男』では、結構後半まで
あまり面白くない妄想が続いた。
ある事件に巻き込まれるのだが、
これがまたイライラする展開。
途中で観るのを止めようかと思ったほどだった。
これは、時代の違いが大きいと思う。

人の言いなりだったウォルターは、
最後に自分の意志で行動をするのだけど、
邦題『虹を掴む男』は、いかがなものか。

主演は、ダニー・ケイ。
谷啓が、ダニー・ケイから芸名を決めたというのは、
有名な話だが、ダニー・ケイの映画は初めて観た。


★★☆☆☆


1947年製作/110分/アメリカ

Amazon Prime Videoで鑑賞





2024.4.15

LIFE! / ライフ
The Secret Life of Walter Mitty




最近、友人のT君が映画に目覚めたみたいで、
お勧めの作品を訊いてくる。
記憶に残っている良かった映画なんて、
ほんの数本ほどですぐにネタに尽きてしまった。
この「ひとりごと」は大変有効な資料で、
ここに5つ星を付けた作品を紹介している。
ハズレはない。
それもそうだろう。
たぶん、10本は大げさでも7~8本観ないと
星5つの作品に出会わない。
つまり、10本選んだらそれは、70~80本の
映画から選んでいるということなんだ。

観た当時の自分の感想を読み直して、
もう一度観たくなる映画も多い。
そんな中の1本『LIFE!』を鑑賞。
アドベンチャー・コメディというジャンルのようだが、
大人のおとぎ話、ファンタジーという感じ。
ハッピーエンドだったろうとは思っていたけど、
10年ぶりに観たら、ラストは全く覚えていなくて、
初めて観たように感動したよ。

アメリカのライフ誌の写真担当者が、
最終号の表紙を飾る写真のネガを紛失してしまい、
(元々なかったので、紛失という感じではないのだけど)
ネガの在りかを聞こうと、連絡の取れない
写真家のショーンを追いかけるというストーリー。
この写真担当者 ウォルター・ミティが、
しょっちゅう空想しているちょっと臆病な男。
その彼が、どんどん変化していく様が痛快。
ウォルターを演じるのが、本作の監督も
務めるベン・スティラー。
ウォルターの母親にシャーリー・マクレーン。
年をとっても美人です。
ウォルターが心を寄せる同僚シェリルにクリステン・ウィグ。
そして、写真家のショーンにショーン・ペン。
出番は少ないのだけど、めちゃくちゃ渋くてカッコ良い。

原題は、「The Secret Life of Walter Mitty」。

現実のライフ誌は、2007年にオンライン版のみに
なったが、今はそれも閉鎖されたようだ。
驚いたのは、この映画の原作は1939年の
短編小説で、1947年に映画化されているんだ。
その邦題は、『虹を掴む男』。
だから、本作はリメイクなんだな。
出版社や色々な設定は違うようだが、
そちらも観てみたい。

実際のライフ誌印刷版の最終号の表紙を
見てみたいと検索したけど、見つけられなかった。
きっとあるんだろうけど。


[映画に出て来る「ライフ」のモットー]

To see the world,
things dangerous to come to,
to see behind walls,
to draw closer,
to find each other and to feel.
That is the purpose of life.


世界を見ること
近づくと危険なものを
壁の向こうを見ること
近くづくこと
お互いを知って感じること
それが人生の目的


★★★★★


2013年製作/114分/G/アメリカ
劇場公開日:2014年3月19日


Amazon Prime Videoで鑑賞





2024.4.13

輪島お父さん金沢駅車椅子

もう3か月以上経ってしまったけど、
書いておきたいことがある。

今年元日の16時10分、能登半島を
大きな地震が襲った。
能登半島地震と呼ばれるこの地震は、
輪島市や志賀町に震度7の地震をもたらし、
大きな被害を出した。
2月29日時点の総務省消防庁の発表では、
死者244人、負傷者1,299人で、
全半壊の住宅は、約2万戸に上る。

友人Y子の実家が輪島市にあり、
一昨年は所用があってY子夫妻と
輪島を訪れ、美味しい魚をご馳走になった。
2005年にも妻とふたりで金沢へ旅行し、
レンタカーで輪島まで走ったこともある。

Y子のお父さん(91歳)が輪島の老人ホームに
入所していて、被災した。
地震後、電話は通じなくなり、安否は分からず、
無事が確認できたのは、地震から6日目の
1月7日だった。
たまたまその日にY子家族と会食があり、
その場でお父さんの無事を聞いた。

老人ホームからの電話は、無事の報告と共に
「迎えに来て欲しい」という依頼だったという。
老人ホームには、電気も水道も来ておらず、
高齢者がこれ以上 長くいるには、
難しい状況だったんだと思う。
しかし、被災地の状況をテレビのニュースで観ると、
輪島まで行けるのかどうか分からない。
救助の邪魔になるかも知れず、
東京から行って良いのかどうかも分からない。

Y子は、翌8日から輪島へお父さんを迎えに
行くという。
たまたま、金沢へ避難していたY子のいとこが
車で輪島に戻るので、金沢から車に乗せて
もらえることになったんだ。
Y子のご主人や息子たちは、翌日からの
輪島行きはスケジュールが難しく、年末で
仕事を辞めたので時間のある私が同行することになった。

1月8日の夕方、北陸新幹線に乗り、
金沢へ向かった。
金沢は、「えっ?被災したの?」と思うほど、
全く地震の影響を感じない日常のままで、
飲食店なども平常通り営業しているように見えた。
金沢駅前のホテルに宿を取り、翌朝8時40分、
Y子のいとこの車に乗り、輪島へ向かって出発した。
その日の金沢は、快晴だった。

能登半島を北へ向かう道路は、自衛隊や消防署、
救援物資を運ぶ車などで混雑していた。

七尾市あたりは、ひどい被害はないように見えたが、
北へ進むほどに傾いた家などが見られるようになった。
穴水町のコンビニは、営業をしていたけど、
断水の為、トイレは使えなかった。

輪島市に入ると、被害の大きさが見えだした。
全壊している住宅がいくつもあったし、ニュースで見た
横倒しになった鉄筋コンクリートの7階建のビルの前も通った。

被災地では、なにしろトイレが大問題。
途中、金沢で頼まれた荷物をY子の知合いの
家に届け、そこでトイレを借りた。
その家は、まだ新しい家で、地震の被害は
なかったようだが、やはり停電と断水は免れない。
トイレは、用を足すたびにペットボトルやバケツに
入れた水を流すのだが、この水が大変貴重だ。
私は、大きい方を催していたので、
ちょっと多めに水を使うことになり、
大変申し訳ない思いで一杯だった。
(ちなみにこのトイレを借りた家のご主人は、
輪島塗の関係の人で、その後、テレビの
報道番組で2回観たよ。)

結局、目的地の老人ホームに着いたのは、
15時を過ぎていた。
金沢から、7時間ほどかかったんだ。
(普段なら2時間ぐらいで着く。)

老人ホームは、建物には大きな損傷は見えなかったけど、
停電のため建物の中は暗く、屋根の雪解けの水が
破損した樋から流れ落ちていた。
ちょうど自衛隊のトラックが玄関に停まっていて、
なにか物資を降ろしている所だった。

Y子は、年末にお父さんと会ったらしいのだが、
その時は、普通に歩いていたという。
地震から1週間でお父さんは、見るからに弱っており、
自力で歩く事も困難な状態だった。
Y子が言うには、最初見たとき
お父さんだと分からなかったほどの変わりようだったらしい。

帰りは、Y子のいとこの娘さんの車を借り、
金沢まで戻ることになった。

お父さんを乗せて、金沢へ向かった。
最終の新幹線に間に合えば、その日中に
東京へ戻るプランだったが、とても間に合いそうにない。
金沢のホテルは、観光客のキャンセルが
出ていたんだろう。
当日でも、空き部屋があった。

輪島から金沢への帰り道の混み具合は、
行きほどではなかった。
しかし、暗くなってから、気が付くと前にも後ろにも
車がいなくなり、それでも走り続けると、
通行止めになっていたりして、
結局、4時間以上かかって金沢に着いた。
途中、余震が来て車を停めたり、緊張の運転だった。

往復とも、落石の為、片側通行になっていたり、
道路がひどくひび割れしていたり、隆起していたりで
徐行せざるを得ない箇所もいくつもあった。

お父さんは、疲れているのか、
ほとんどぐったりしたままで、心配な状態だった。

お父さんを金沢の駅前のホテルに降ろし、
車を返しに行って、ホテルに戻り一息ついたのは、
22時ごろだったような気がする。

翌日(10日)、9時49分金沢発東京行きの
新幹線に乗ることにした。

お父さんは、歩ける状態ではなったので、
駅まで車椅子が必要だった。
ホテルの中では車椅子が使えたので、
朝、フロントに行って「金沢駅まで車椅子を
貸し出して欲しい」と、申し出た。、
そのホテルから、金沢駅までは
ほんの100メートルほどの距離だ。
しかし、フロントのスタッフは、
「車椅子の貸し出しは館内のみです」と言った。
私は、事情を説明した。
前日、輪島の老人ホームから、友人の父親を
避難させてきたこと。
輪島には、いられないので今から東京まで
連れて行くこと。
歩けないので、車椅子がないと駅までもいけないこと。
すると、ホテルのスタッフは、責任者らしき人に
相談してくれ、快く貸出してくれることになった。

次は、金沢駅でホームまで車椅子を
借りるために駅に向かった。
駅の窓口で、気が付いた。
駅の車椅子を借りてホテルに戻れば、
ホテルに車椅子を返しに行かなくても済む。
ホテルの車椅子を借りると、お父さんを駅の
車椅子に乗せ換えたあと、ホテルに車椅子を
返しに行かなければならないのだ。
あんまり時間に余裕がないので、
駅員に掛け合ってみることにした。

「すぐそこの○○ホテルなんですけど、
そこまで車椅子をお借りできませんか?」

ホテルのフロントと同じく、
「車椅子の貸し出しは館内のみです」という回答だった。
私は、事情を説明した。
窓口の駅員は、後ろに立っている上司らしき駅員に
その事情を伝えてくれた。
が、その上司らしき駅員の答えは「ノー」だった。

私は、少し頭にきたが、冷静にもう一度
事情を説明し、車椅子を貸して欲しいと頼んだ。
ほんの100メートルのことなのだ。

窓口の駅員は、もう一度、後ろに立っている
(もう私には意地悪にしか見えない)上司に
訊いてくれたのだが、やはり「ノー」だった。

おいおい、ここは石川県だろ。
この度の地震と関係ない土地ならともかく、
石川県の県庁所在地、玄関口だろ。
それなのに、被災者をそんな扱いをするのか。
お前は、何県人だ?
JR はそんなサービスなのか?
と、声を荒げたくなったが、そんなことを
している時間はない。

結局、ホテルの車椅子で駅までお父さんを
連れて行き、ホテルに返却しに戻り、
新幹線に間に合って乗ることができた。

金沢駅では改札口からホームまでは、
駅員が手伝ってくれたし、
東京駅にもちゃんと連絡をしてくれて、
東京駅では、ホームで車椅子が待機していてくれた。
そこは、しっかりと連携があって素晴らしいと思った。
でも、その介添えの駅員も、金沢駅より東京駅の方が、
親切に感じたのは、あの車椅子貸出の一件が
あったからだろうかね。

そんなこんなで、Y子のお父さんを
東京へ連れてくることができたんだ。

大分、具合が悪かったようで、
お父さんは、そのまま数日間入院し、
その後、東京の施設に入ることができた。
あのまま、何日も輪島の電気も水道もない、
おそらく暖房も食事も十分ではなかったであろう
施設にいたら、どうなっていたか分からない。

それにしても金沢駅の対応は残念だった。
あまりにもマニュアル通りにしか対応できなくて、
血が通っていなくて、残念だ。
確かにマニュアルも大事だろう。
しかし、状況が状況なのが分からないのだろうか。
しかも、金沢駅は石川県ですぜ。
何度も言うようだけど。

なんだかひとこと言わずには気が済まなくて、
JR西日本に投書をした。
ウェブサイトに意見を送る窓口があったんだ。

一通りの事情と 残念な駅員の対応、そして、
私の失望と怒りを書いて、こう付け加えた。

「マニュアルは大事でしょうが、あまりにも
融通が利かな過ぎるのではないでしょうか?
友人は、前日の輪島往復で疲れ、
故郷である輪島の被災現場を実際に目にして
ショックを受け、そして、自力で立つことも出来ない
父親を前に動揺と不安を覚えている状態です。
この事態において、あまりにも思いやりや配慮が
ないのではないでしょうか?
ぜひとも非常時のマニュアルの運用についての改善を求めます。
そして、時にはマニュアルよりも優先すべき事があるという
人間らしい職員に教育して頂きたいと思います。
この投書は、金沢駅の駅長にも送って下さい」

「人間らしい職員に教育して頂きたい」なんて
ずい分上からだけど、そこは容赦願いたい。
投書は、1200~1300文字ぐらい書いたんだけど、
送れるのが、1000文字以内というので、
大分削らなきゃいけなかったんで、こんな文章に
なったと言い訳しておこう。

で、1週間ほどして JR から回答があった。

「このたびは金沢駅係員の対応により、
ご不快な思いをおかけいたしまして、
誠に申し訳ございません」というお詫び。
そして、「このたびのご指摘を重く受け止め、
関係係員には点呼の場などで周知させていただきます。
今後このようなことのないよう、
応対改善に努めてまいりますので、
何卒ご容赦賜りますようお願い申し上げます」
という今後の対策ね。

これ、お約束通りの文面やけど、
私は、言いたいことを送ったから、
それだけで良かった。
なのに、余計なこと書いてきたの。

「車いすの貸し出しにつきましては、
基本的には駅構内(改札からホームまで)と
させていただいております。
しかしながら、このたびは身近なホテルであったこと、
また数10分後の列車にご乗車される点を鑑みて、
ホテルまでの貸し出しを行うべきでございました」
と。

ちゃうやん。
ホテルが近いとか、数10分後の列車に乗るとか、
そこちゃうやん。
確かに駅近のホテルやったけど、そこがポイントちゃうやん。
それ書かん方が良かったのになぁ。

ほんで「車いすの貸し出しにつきましては、
基本的には駅構内(改札からホームまで)」て
書いてあるけど、たぶんどこの駅でも(金沢駅でも)
タクシー乗り場まで、使わせてくれるよね。
改札から、タクシー乗り場まで「歩いて行け」とは
言わんやろ?
だから「基本的には」と書いているんやろうけど、
あの場合も現場の判断で対応できたんちゃうかと思うのですよ。

ということで、この回答にも苦言を送りました。

「ご返信いただきありがとうございました。
ご回答を読ませて頂きましたが、
私の書き方が悪かったようで、
投書させて頂いた意図が伝わっていないようでした。
(中略)
私が言いたかったことは、被災地石川県の駅でありながら、
被災者の心に寄り添わないその非情な態度への苦言でした。
再度、乗客、特に被災者など通常ではない乗客への
『思いやり』について考えて頂きたいと思いました。
よろしくお願いいたします」

言葉が「非情な態度」とかキツなってるやん。
こうなると、相手にすれば、もうめんどくさいクレーマーかしら。

この2通目には、もう回答がないよ。
言いたいこというたから、なくて ええねんけど。

ちょっとは有事の際の対応について、
考えるきっかけになってくれたらええねんけど、
どうやろなあ。


ところで、輪島から戻って数日は、
自分で分かるほど、心が不安定だった。
輪島では、老人ホームでお父さんを乗せて
とんぼ返りだったので、時間も心も余裕がなく
Y子の実家の様子も見なかったし、
朝市の火災の跡も見ていない。
行き返りの車の中から見た被災の様子は、
目の前にある現実なのにリアリティがないという感じもした。
あれは、おそらく心が感じないように
衝撃をブロックしていたのかも知れない。

輪島から戻った翌日のこと、恵比寿のカフェで
コーヒーを飲んでいたら、その前日、前々日の
体験と 東京の日常のあまりのギャップを
心が処理しきれていないような感じで、
道行く人々の平和な光景にわけもなく
涙が出てきて、自分でも驚いた。

「ああ、あんまり分かってないけど、
深い所で、かなり衝撃を受けてるんや」と思った。
もし、朝市の焼け跡とか見てたら
もっと酷かったかもしれない。

自衛隊、消防、警察、医療関係など、
救助や支援の方々には本当に頭が下がる。
きっと、私の体験などとは比べ物にならないほど
衝撃的な光景をたくさん目にしていると思う。

そして、被災地からどこかへ避難した人も、
被災地に残る決断をした人も、
みんな心の傷を負っていることでしょう。
どんな言葉をかければ良いのかも分からない。
癒しは時間しかないのかも知れない。
それでも生きるしかない。
そして、東京にもいつ大地震が来るのか分からない。
自然の前に人間は無力だけど、
「思いやり」という力は持っていたい。





2024.4.12

文春落語
柳家喬太郎・柳家小ゑん二人会




一時は年に30本以上の落語会に足を運び、
CDを聴き、DVDを観て、と落語にずっぽり
ハマっていたのだが、この数年は落語会も
年に10回前後と、やや落ち着いていた。
2020年などは、コロナのせいで
観に行った落語会2回だった。
(まあ、この年は観客を入れて
ほとんど演っていなかったけどね。)
ところが、今年はまだ4月なのに来週も行く予定で
6回(うち2回は寄席)になる。
なんだか、落語熱が再度高まっている感がある。

今日は柳家喬太郎、柳家小ゑんの二人会。
柳家喬太郎は、好きな落語家ベスト10に入る。
誰が一番かというのは決めにくいけど、
10人選べと言われたら、必ず入るね。
古典も新作も両方OKで、自由な芸風が魅力。
柳家小ゑんは、一昨年、初めて寄席で観て
印象に残った噺家。
この人も新作を演る人なんだ。

さて、本日の感想。
少し前から喬太郎は、正座が出来ないようで、
見台を置いての口演になった。
座ったり立ったりが、辛そうだけど、
噺に入った途端にそんなことは忘れてしまう。

終演後 貼り出された演目を見ると、
喬太郎の一席目は「毒蛇小噺」となっていたが、
15分話したうち小噺は、1分か2分であとはマクラ。
今日は生配信もしていたようだが、そのことも
ネタに取り入れ相変わらずの爆笑を取っていた。

2席目は、小ゑんの「ぐつぐつ」。
居酒屋のおでんの鍋の中の具が話すという
超シュールなネタ。
ナンセンス過ぎて笑えない部分もあるのだが、
時々ツボにハマって爆笑してしまう。
この人の魅力はこれだな。

仲入りを挟んで、喬太郎の「やとわれ幽霊」。
初めて聴いた新作。
これまた、破天荒な爆笑噺なのだが、
最後にはしんみりさせられた。
上手いね。

そして、最後はおふたりのトーク。
オタク(マニア?)なふたりの
ディープなトークで、楽しめました。


[ 演目 ]
「毒蛇小噺」 柳家喬太郎
「ぐつぐつ」 柳家小ゑん
--- 仲入り ---
「やとわれ幽霊」 柳家喬太郎
<トーク> 小ゑん・喬太郎

@ 文藝春秋西館地下ホール





2024.4.9

今年の桜

今年の桜の開花は3月29日で、例年より遅かった。
昨年は、3月14日だったので、2週間以上
遅かったことになる。
3月の気温の上がり方が鈍かったためらしい。
おまけに寒くなったり、暖かくなったり、
寒暖の差が激しい。

先日(4月5日)、洗足池の桜を観に行った。



翌日には、目黒川の桜や明治通りの桜を楽しんだ。



今年は、気候が不安定なせいか、
桜の咲き方が、例年よりバラバラのような気がする。
目黒通りの桜を見ていると、木によって
結構満開に近いものから、
ほとんどつぼみというものまで様々だった。
中には、つぼみだけで全く咲いていない木もあった。
あれは、種類が違うのだろうか。
また、通常は花が散った後に、
葉が出て来るような印象があるが、
すでに葉っぱを付けている木も見受けられた。

東京の今日と明日の最低気温は、
10℃違うという。
桜もどうしてよいか分からないのかも知れない。

明治通りの桜(4月6日)


葉の出てきた桜(4月6日)






2024.4.8

SILVIA PEREZ CRUZ
presents "Toda la vida, un dia"




スペインの歌姫、シルビア・ペレス・クルス。
2018年の初来日公演で、すっかり虜になり、
2019年には、名古屋まで観に行き、
東京と合わせて3公演も観た。
そのシルビアの約4年半ぶりの来日公演を観てきた。
今日は、1stショー、2ndショー続けて観たよ。

2018年は、弦楽五重奏と、
2019年は、ピアノのマルコ・メスキーダとの
来日だったけど、今回はトリオ(弦楽三重奏)と来日。
このトリオが凄い。

バイオリンのカルロス・モントフォートは、
1曲でトランペット、数曲でドラムを担当。
バック・コーラスもした。
チェロのマルタ・ローマもトランペットを吹いた。
また、ベースのボリ・アルベロは、1曲でシンセベースを弾いた。
シルビアは、ギターだけでなくサックスも吹いたよ。
メンバーは、4人だけど4人とは思えぬ演奏。
なんだろう、めちゃくちゃ楽しそうで、
1曲終わるたびに笑顔で握手したり、
何か楽しそうに話している。
あんまり感じたことのないバイブレーションだ。

生のストリングスのハーモニーって、
シンセサイザーで鳴らすのと全然違うから
もの凄く重厚でリッチ、そして厳か。

1stショーは、観やすかったけど比較的後ろの方だった。
ステージまで10メートルはあっただろう。
2ndショーは、中央の前から2列目。
手を伸ばせばシルビアに届きそうな距離だ。
アンコール以外は、1stショーと同じセットリストだったと思うけど、
伝わって来るバイブレーションは、全然違った。
ステージ上のメンバーの息遣いまで感じられそうな距離。
同じ曲でも、1stショーでは、聞こえていなかった音まで、
聴くことが出来た。


シルビアの素晴らしさについて、初来日を観た私は、
「重厚で情熱的、哀愁と慈悲の混在したような
エモーショナルな魂の歌声で予想以上に感動」と書いた。
2019年には、自分の語彙では表現できず
音楽評論家・渡辺亨さんの言葉を引用した。
曰く「シルビアの歌は、燃えさかる炎や
深紅の薔薇のようであり、乾いた土や孤独の匂いも
すれば、苦い血の味もする。
艶やかな光彩を放ち、官能が匂い立つ」
表現が素晴らしいね。

今回も彼女歌声の素晴らしさを言葉にするのに
自分のボキャブラリーの不足を感じずにはいられない。
シルビアのライヴを観ると音楽を聴いたというより、
「体験した」という感想を持つ。
これは、他の人には中々ないことで、
私がこんなに行きたくなるのもそのせいだと思う。
CDやビデオで聴くのとは全く違う体験なんだ。
これはもう言葉に出来ないな。

前回の来日では、東京2日、名古屋1日の上に
東京の追加公演(1日)まであったのだが、
今日は1部ではなぜか空席が目立った。
見た感じ半分ぐらいの入りだっただろうか。
月曜日ということもあるのだろうか。
おそらくは、プロモーションが
働いていなかったのではないだろうか。
私のようにブルーノートからのメルマガを受信し、
しょっちゅうサイトを見ている者は良いけど、
そうでないファンなら今回の来日を知らない可能性もある。
実際、私も知っていれば間違いなく観に行ったであろう
アーティストの来日を知らなかった例は、少なくない。
もうこれは、自分でアンテナを張り巡らす以外、
情報を入手する術はないだろうな。
でも、2部は、ほぼ満員だったよ。


[ MEMBERS ]
Silvia Perez Cruz (vo, g, sax)
Carlos Montfort (vln, tp, drs, back vo)
Marta Roma (vc, tp)
Bori Albero (cb, synth)

@ Blue Note Tokyo
1st and 2nd show


[ 関連エントリー ]
2018.5.7 SILVIA PEREZ CRUZ
2018.5.12 SILVIA PEREZ CRUZ
2019.10.8 SILVIA PEREZ CRUZ & MARCO MEZQUIDA
2019.10.11 SILVIA PEREZ CRUZ & MARCO MEZQUIDA





2024.4.7

父が息子に語る
壮大かつ圧倒的に面白い
哲学の書

2018年に妻が『サルトルの教え』という本を
出版して以来、書店で「哲学」のコーナーへ
立ち寄ることが増えた。
少し前に書店で手に取って買った本が
「父が息子に語る
壮大かつ圧倒的に面白い
哲学の書」



著者は、この本が一冊目だという、
スコット・ハーショヴィッツ。
ミシガン大学の法学・哲学教授。
最近、どの書店にも必ずといって良いほど
置いてある(しかもほぼ平積み)ので、
結構 売れているんだと思う。
私が買ったもののオビには
「世界18か国で続々刊行!」と書いてあった。

著者のふたりの息子との対話がたくさん出て来る。
著者は、その息子たちは特別ではなく、
子供はみんな哲学者だと、書いているのだけど、
中々そうは思えない。
こんなこと、話せる5歳児、6歳児がいるのだろうか、
と思ってしまう。
しかし、その会話を引き出すのは、大人
(この場合は著者=父親)なんだと気付く。
つまりは、(著者も書いているように)
親が子供の考える機会を奪い、
考えられない人間に育ててしまっているんだろう。

思えば、私が子供の頃、親や教師に質問をしたとき、
「あなたは、どう思う?」と尋ねられた覚えは
一度もない。
そして、そこには必ず質問された親や教師の
答えがあった。
ほとんどのケースで、その答えを鵜のみに
していたような気がする。
その答えに同意できなかったとき、
何かを言えば、返ってくる言葉は
「大人になれば分かる」だったり
「つべこべ言わずに言うことを聞け」だったり、
「世の中はそういうもの」だったりして、
けして「一緒に考えてみよう」などという言葉ではなかった。
彼らには(いや、私にも)問いには答えがある、
という前提があり、答えられない、答えがない質問は
「へりくつ」のように追いやられていたのではないかと思う。

では、私から哲学(考える力)を奪ったのは、
親や教師だったのかと言えば、そうでもない。
著者自身が5歳の時に母親の見ている赤色と
自分の見ている赤色が同じかどうか疑問を持った
というのだから、私に言わせれば、この人には
特別な資質があったんだと思う。
そんなこと思いつきもしないからね。
(それとも、忘れてしまっただけだろうか?)

哲学というと「正義とは何か」「権利とは何か」と
いうような日常生活とは、"関係ない"(ような)ことを
テーマにああでもない、こうでもない、と考えている
(議論している)ような印象があるが、
実はそれらは、私達が生きることに、
密接に関係している。
それをいつの間にか「学問」にしてしまい、
切り離してしまったのは、人類のミスだったと思う。
今や世界を救えるのは、宗教でも道徳でもなく、
哲学しか残されていないようにさえ感じるもの。

著者のように、大人(親や教師)が、
子供に考える(=哲学する)力を付ける対話を
始めれば、世界はもっと良い方向に向かうと
思うのは、楽観的だろうか。
いや、そんな未来に楽観的な希望を持つためではなく、
(つまり、子供に対してだけではなく)
大人がもっと考えた方が良いし、対話が必要だな。
誰よりも自分がね。

面白かったけど、オビに書いてある
「ページを繰る手が止まらない」はちょっと大げさかな。
哲学入門書としては、良いと思うけど、
それでも部分的に難しかった。

原書は
「Nasty, Brutish & Short:
Adventures in Philosophy with My Kids」
訳者あとがきにある訳は、
「意地悪で、残酷で、短い、
――子どもと楽しむ哲学の冒険」


★★★★☆





2024.4.6

JAMES TAYLOR



本日は「死ぬまでに観ておきたいアーティスト・シリーズ」、
ジェイムス・テイラーを観てきた。
この「死ぬまでに観ておきたい」は、ふたつの意味で
私が死ぬまでであり、そのアーティストが
死ぬまででもある。

ジェイムス・テイラーは、実はそんなにたくさん
聴いてこなかったので、有名な数曲しか
知らないんだけど、やはりアメリカを代表する
シンガー・ソングライター。
一度は、ナマで聴いておきたい。

前回の来日が2010年というから、
14年ぶり(4回目)。
厳密には、2015年にも来日にしているのだが、
それは、彼のツアーとしてではなくて、
セイジ・オザワ・マツモト・フェスティバルで、
小澤征爾の80才を祝うためにはるばる来日したようだ。

(2015年を除くと)来日の頻度は、51年間で4回。
先月、76歳になったので、おそらくこれが
最後の来日になるのではないかと思う。
前回 2010年の来日は、キャロル・キングとの
ツアーだったんだ。
これは見逃して、惜しいことをした。
キャロル・キングは、もう 82歳なので、
来日は厳しいかな。
(グレン・キャンベルの新しいアルバムには、
キャロルとのデュエットも含まれているが、
現在の活動はよく分からない。)

さて、コンサート。
会場は、アクセスにやや不便を感じるが、
とてもステージが観やすい東京ガーデンシアター。
今年は、ビリー・ジョエル、ロッド・スチュワートと
大物のライヴを続けて観ているが、
ビリー、ロッド同様、ジェイムスも今夜、
一夜限りの公演だ。

定刻の18時を5分ほど過ぎて始まった。
ロッドの時は、登場しただけで
アリーナは総立ちだったけど、
今夜は落ち着いた始まり。
まあ、ちょっと音楽の種類もロッドとは違うよね。

バンドは「His All Star Band」。
ドラムは、スティーヴ・ガッド。
ベースは、ジミージョンソン。
キーボードが、ケヴィン・ヘイズ。
そして、ギターが、ディーン・パークス(77)。
マイケル・ランドウでなかったのは、やや残念だが、
ディーン・パークスを観るのは、もしかしたら
初めてだったかもしれない。
ディーンは、アメリカのセッション・ミュージシャンで
もの凄い数のアルバムに参加しているので、
知らず知らずに彼のギターを耳にしているはずだ。
アメリカのセッション・ミュージシャンの記事には
必ず登場する要人物。
ギターは、1stセットでは、ヤマハの Revstar。
メンバー紹介の時、ジェイムスはヤマハの
ギターのことにも触れていた。
2ndセットでは、たぶん PRS 。
私の席からは、ギターの見える角度が微妙で
確信はないのだけど、PRS のように見えた。
あと数曲でペダル・スティールを演奏。
ザ・職人という感じの演奏だった。

特筆すべきは、ハーモニーの美しさ。
ジェイムス以外にコーラスの人が3人いたのだけど、
素晴らしいハーモニーだった。
キーボードのケヴィン・ヘイズも何曲かで歌っていた。
コーラスの一人は、フィドルも演奏。
このフィドルとドラムのデュオになるシーンが
あって、素晴らしかった。

そうそう、ケヴィン・ヘイズとジミー・ジョンソンは、
スティーヴ・ガッド・バンドのメンバーでもある。

ジェイムスは、76歳を感じさせない歌声。
リズミカルな曲では飛び跳ねるほど元気。
そして、MC は相変わらず3割りぐらいしか
英語が聞き取れないのだけど、
とても誠実な人柄が伝わってきたよ。

バンドは、本当に素晴らしかった。
ジェイムスのメンバー紹介も とても丁寧で、
紹介するたびにそれぞれのメンバーと
握手やハグをして、彼のメンバーへの
愛と尊敬、感謝が感じられた。

あと、ジェイムスのギターの音が美しい。
何本も持ち替えたけど、同じメーカーのモノのように見えた。

曲は、聴いたことがある曲でも、
曲名があんまり分からないのだけど、曲名が言えるのは
『How Sweet It Is (To Be Loved by You)』や
『Up on the Roof』、『You've Got a Friend』など。
『You've Got a Friend』からは、奥様のキムさんが
コーラスとして参加。

休憩(30分ぐらいあったと思う)を入れて
アンコールまで、2時間30分ぐらい。

アンコールは、1曲演って、2曲目に
『Your Smiling Face』。
これは聴きたかったの嬉しい。
全員並んで挨拶し、これでおわりかと思ったら、もう1曲。
最後に、小澤征爾の話に触れ、
「This song for Seiji Ozawa」と言って
『You Can Close Your Eyes』。
奥様のキムは、ボストン交響楽団の
広報・マーケティング部長。
小澤征爾が、ボストン交響楽団の
常任指揮者だったこともあり、縁があるんだ。
前述のセイジ・オザワ・マツモト・フェスティバルへの
2015年の来日も、その縁のようだ。

ジェイムスは、日本のあと、フィリピン、オーストラリア、
ニュージーランド、ハワイを5月の初旬まで周る。
オフィシャルサイトのツアー・スケジュールを見ると、
オーストラリアは、10公演もある。
今日はそのツアーの初日だったわけだ。
そして、5月の終わりから9月まで全米ツアーなのだ。
元気やなぁ。

残念だったのは『Don't Let Me Be Lonely Tonight』を
聴けなかったことだな。
この曲は、ジェイムス・テイラーの曲なのだけど、
私は、何十年も前にアイズレー・ブラザーズで知った。
その真っクロなヴァージョンしか知らなかったので、
てっきり黒人の曲だと思い込んでいた。
だから、初めてオリジナル・ジェイムスのヴァージョンを
聴いた時は、ひっくり返るほど驚いたよ。


[ His All Star Band MEMBERS ]
ジミー・ジョンソン : bass
ディーン・パークス : guitar
スティーヴ・ガッド : drums
ケヴィン・ヘイズ :keys
アンドレア・ゾン : fiddle and vocals
ケイト・マルコウィッツ : vocals
ドリアン・ホリー : vocals
ゲスト)
キャロライン・”キム”・スメドヴィグ:vocals

@東京ガーデンシアター




山種美術館
「花・flower・華 2024」




約1年ぶりの山種美術館。
昨年3月に「富士と桜」という展覧会に行き、
奥村土牛(おくむらとぎゅう)の『吉野』という
桜の絵を観て、好きになったので、
また観られるかなと思って行ったのだけど、
今回はなかった。残念。
土牛の『醍醐』(チラシになっている作品)は、
観られたけどね。

日本人画家の作品展なので、
掛け軸になっているような絵も多かったが、
私はやはり洋画の方が好きなのがよく分かった。
掛け軸になっているような絵の良さはあんまり分からないし、
今まで日本画で良いなと思った人は、あんまりいない。
片岡球子は、好きだけどね。
(彼女は、西洋画的だけど日本画に入るらしい。)
版画は、川瀬巴水、棟方志功とか好きな人いるけど、
版画には、和と洋の区別はないのかな。

今回の展示の中で良かった洋画は、
梅原龍三郎の『薔薇と蜜柑』、『向日葵』、
中川一政の『薔薇』だな。


梅原龍三郎 「薔薇と蜜柑」 1944年





2024.4.3

「づつ」ではなく「ずつ」

先日、とある公共機関の建物で
トイレの個室に入ったら、壁に貼り紙があった。



トイレットペーパーを一度にたくさん流すと、
トイレが詰まるので「少量づつ」流してください、
という注意書きだ。

良く見ると「少量づつ」の「づ」を二重線で消し
その上に「ず」と書いてある。



誰が書いたか分からないけど、間違いを
見過ごすことができない人だったのか、あるいは、
それを読んで違和感を感じ、その場でスマホで
検索して、思わず訂正したのか。
いずれにしろ、書かずにはいられなかったんだろう。

私も以前、どちらが正しいのか迷って
調べたことがあり、それ以来「ずつ」を使っている。

「少量ずつ」と書く場合、「づつ」も間違いではないが、
文化庁の内閣告示や NHK では、「ずつ」が
原則として正しい、となっているらしい。

「づつ」は歴史的仮名遣いという記述も見た。
歴史的仮名遣いというのは、
例えば、ヱビスビールの「ヱ」だったり、
蝶々を「てふてふ」と書いたりする、あれだ。

「ずつ・づつ」で検索すると何件も似たような
解説のサイトがヒットする。
多くの人が私同様、どちらが正しい書き方なのかと
疑問を持ったようだ。

どっちでもええやないか、という声も聞こえてきそうだ。
確かに言葉は生き物で、時代と共に変化する。
「ずつ」か「づつ」は、どっちでも良いような気もする。
今、正しいと言われている仮名遣いが、
数十年後には、使われていなかったり、
間違いとされている可能性だって十分にある。
それでも、書き言葉であれ、話し言葉であれ、
美しいものを使いたいと思う。

この10年ぐらいで観れば、「大丈夫」という言葉は
大分意味合いが変わってきたのではないか。
いや、基本は変わっていないのだろうけど、
新しい使い方が加わったように思う。

何かを勧められた場合、
最近は断り文句として「大丈夫」を使う。
特に若い人に多いと思う。

例えば ショップで、
「ポイントカードをお作りしますか?」と尋ねられ、
「大丈夫です」と言うのだ。

「作らなくて大丈夫」、つまり、
「ノー」という意味だとは、分かるけれど
私は気持ち悪くてしょうがない。
若者に向かって、「正しい日本語を使え」
などと言うジジイにはなりたくないと思っていたが、
言いたくなることもある。
言わないけどね。



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