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2024年 映画・演劇・舞台 etc

    
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2024.1.23

PERFECT DAYS
パーフェクト・デイズ




ビム・ベンダースが、役所広司を主役に撮った
映画『PERFECT DAYS』。
ビム・ベンダースというと、必ず『パリ、テキサス』や
『ベルリン・天使の詩』が代表作として出てくる。
これらは、映画ファンとしては、
マストなんだろうけど 私はなぜか観ていないんだ。
「観たい映画のリスト」には、いつも入ってるんだけどね。

友人が『PERFECT DAYS』を観てきて、
「同じことの繰り返しで、何が良いか分からん。
観て感想を聞かせて欲しい」というので、妻と観てきた。

私の感想は「素晴らしかった」だ。
役所広司のセリフの少ない演技も脚本も。
役所は、カンヌ国際映画祭で男優賞を受賞したが、
それも納得の演技だった。
そして本作は、米国アカデミー賞の
国際長編映画賞にノミネートされたようだ。

役所演じる平山は、トイレの清掃員。
無口で仕事は丁寧。
毎日同じルーティンの繰り返し。
他人に干渉せず、余計なことは言わない。
草木を愛で、読書を愛し、古いフィルムカメラで
木々の写真を撮る。
全てを受け入れ、ささやかなことに
喜びと満足を見出す。

そんな様子を淡々と映し出すのだが、
平山の個人的な情報は、ほとんど語られない。
説明がない分、観る側の想像力で、
色んな解釈が可能だろう。

結婚していたのか。
子供はいるのか。
なぜ、父親と会わないのか。
なぜ、妹と疎遠になったのか。
なぜ、トイレ掃除の仕事に就いたのか。
なぜ、姪っ子は平山を慕うのか。

映像や言葉で語られない部分に
物語を感じさせられる、凄い作品だ。
言ってみれば、行間を読む映画だと思った。

平山が、自宅や車の中で聴くのはカセットテープ。
最初にかかるのはアニマルズの『朝日のあたる家』。
そのほか、オーティス・レディング、ルー・リード、
ヴァン・モリスンなど、選曲も渋い。
ルー・リードの『PERFECT DAY』が流れる。
「Oh, it's such a perfect day
あぁ、なんて完璧な一日なんだろう」

平山の一日一日は、パーフェクト・デイなんだ。

掃除に周るトイレに、知っているトイレが
4カ所も出てきた。
恵比寿周辺ね。

出演は、役所広司のほか、
柄本時生、中野有紗、アオイヤマダ、
麻生祐未、石川さゆり、田中泯、三浦友和 等。


★★★★★


2023年製作/日本
上映時間:124分
配給:ビターズ・エンド






2024.2.14

罪と悪



映画『罪と悪』。
監督・脚本は、齊藤勇起。
助監督としてもキャリアはあるものの
監督としては、本作が初のようだ。
出演は、高良健吾、大東駿介、石田卓也、
椎名桔平、ちょい役で佐藤浩市。

高良健吾の底知れぬ何かを感じさせる雰囲気が良い。
あと、中学生役の子役らがとても良い仕事をしている。

ミステリーとヒューマン・ドラマのミックスのような作品で、
展開が読めず、退屈することもなく、
作品に引き込まれたのだけど 結末がどうも釈然としない。
ちょっと後味の悪い終わり方で、
一体どういうことなのかよく分からない。

映画のコピーは
「正義とは、罪とは――本当の悪人は誰か」
となっている。
哲学的な問いかけなのだけど、
この映画の中で「正義」はどれのことなんだろう。
「悪人」は、何人も出てきたよ。
でも「本当の悪人」って何なんだろうな。
「正義」も「悪人」も観客自身で
考えろってことだろうけど。


★★★▲☆


[PG-12]
上映時間:116分
製作:2023年(日本)





2024.3.1

ボブ・マーリー
ラスト・ライブ・イン・ジャマイカ

レゲエ・サンプラッシュ
REGGAE SUNPLUSH



もう30年以上も前にFMラジオで、
Pink Cloud のベースの加部正義が、
「ボブ・マーリーがロンドン公演に行った時、
飛行機を降りて『こんな寒い所では
演奏できない』と言って帰ったらしい」と
言っているのを聞いた覚えがあるが、
たぶんガセネタだったんだろうな。
ボブ・マーリーの有名なライヴ盤は、
ロンドンのライヴだもん。

さて、今日はボブ・マーリーの映画を観てきた。
タイトルに「ボブ・マーリー ラスト・ライブ・イン・
ジャマイカ」とあったので、てっきりボブ・マーリーの
ライヴ中心のドキュメンタリーだと思っていたら、
109分の上映時間で、ボブのライヴは、
後半の40分ほどだった。
それもそのはず、原題は
「Reggae Sunplush」なんだ。

「Reggae Sunplush」というのは、
1979年7月にジャマイカで開催された
レゲエのフェス。
この映画は、その模様を収録した
ライブ・ドキュメンタリーで、ボブの
ジャマイカでのラスト・ライヴの記録。

私は、レゲエに詳しくないけど、
ロックやポップスを演っていれば、
避けては通れない音楽なので、
少しは知っている。
とはいえ、人生で観に行ったことのある
レゲエのライヴ・コンサートは、1982年に
"Try Jah Love" が大ヒットした「サード・ワールド」だけだ。
もう40年以上前だけど、リズム(ドラム)が
凄かったという覚えがある。
ググってみて初めて知ったけど、
"Try Jah Love" が収録されていたアルバム
『You've Got the Power』は、
なんとスティーヴィー・ワンダーが
プロデュースだったんだな。

話を映画に戻そう。
そのサード・ワールドの他に ピーター・トッシュ、
バーニング・スピアなどが出演。
スクリーンからハッパ(マリファナ)のニオイが
してきそうだった。
マリファナのことを、ジャマイカでは、
ガンジャと呼ぶらしい。

レゲエは、ただのポップ・ミュージックではなく、
その背景には、宗教があり、政治があり、
貧困があり、奴隷制度からの長い歴史がある。
平和ボケ日本人の私には、とてもじゃないが
理解できない深さがある。
そういえば、若い頃『アイ・ショット・ザ・シェリフ』の
歌詞を訳そうとして、意味が分からず
挫折した覚えがあるよ。
『ノー・ウーマン、ノー・クライ』の意味だって、
「女がいなけりゃ涙も出ねえ」かと思いきや
結局、女性に向かって「泣くなよ」と
歌っているんだし、ジャマイカのことや
ジャマイカ英語についても理解がないと、
分からないんだと思う。

でも、そんなディープな背景を全く
知らなかったとしても、あのゆったりした
リズムに身をゆだねていると、
脳内で何かが分泌されて来るのが
分かるんだよな。
ハッパなんてなくても。

ボブのバンド、ザ・ウェイラーズのギターが、
ヤマハのSGだったのは、興味深かった。
もう一人のギターは、ギブソン(レスポール)の
ようだったけど。
ベースも ヤマハ(BB)のように見えた。
もしかしたら、その年の4月に彼らは最初で最後の
来日を果たしているので、その時に買ったか、
もらったのかもな。
ピーター・トッシュは背中に「一番」と
書かれた半纏を来ていたよ。
ボブ以外の多くのミュージシャンが、
汗だくになりながらも、長袖だったのは、
ファッションなのだろうか。
その暑苦しさが、また熱い。

レゲエ・サンプラッシュには出演していないんだけど、
太鼓と歌だけで、「これがレゲエだ」と
演奏する3人組が、エレキギターや
シンセサイザーを使って演奏することを
批判していた。
「彼らのやっているのは、金儲けだ」と。
なんだか印象に残った。

当時のジャマイカの街の様子なども
興味深い。
映画の終わり方が、突然な感じで残念。

ボブは、1981年に病気で他界。
36歳だったんだ。


★★★★☆


上映時間/1時間49分
製作年/1980年
製作国/西ドイツ・ジャマイカ合作




市 子




友人が「観て感想を聞かせて欲しい」と
言っていたので、映画『市子』を観てきた。

哀しい、切ない、やり切れない。
というのが、感想だ。

市子は、3年間一緒に暮らしていた彼氏、
長谷川にプロポーズされる。
そのシーンがとても良い。
そこだけ、もう一度観たいほど良い。
(市子を演じるのは、杉咲花。
2016年『湯を沸かすほどの熱い愛』で、
助演女優賞を受賞。
久しぶりに観たけどやはり大物だ。)

以下、ちょいネタバレ。
市子は、プロポーズを心から喜んでいる
ようだったのに、翌日、長谷川の前から、
何も言わずに姿を消す。
長谷川には、市子の失踪が理解できないんだ。
その秘密が徐々に明かされていくと
いうストーリーなのだけど、その失踪の
背景があまりにもつらく哀しい。
幸せでいたいのに、幸せでいられない、
市子の選択が切ない。

後半、ある事故(事件?)が起こるのだけど、
その意味が全く分からなかった。
何かを見落としたのか、私の想像力不足か。
そこだけが不完全燃焼。
原作を読みたいと思ったんだけど、
原作は、舞台なんだな。

映画は、東大阪や和歌山が舞台。
杉咲花の関西弁があまりにも自然で、
関西出身かと思ったら、東京出身だと。
それだけで、凄いわ。
プロの役者でも関西弁は中々モノに
出来ないよ。


★★★★☆


上映時間 /2時間06分
製作年/2023年
製作国 /日本


(2024.3.3 追記)
「後半、ある事故(事件?)が起こるのだけど、
その意味が全く分からなかった」と書いたけど、
ネットに上がっていたレビューを読んで、
半分ぐらいは意味が分かった。
でも、残り半分はスッキリしない。
原作、小説にならないかな。





2024.3.6

ぼくたちの家族




友人Hが、最近 映画に目覚めたのか、
私にお勧め映画を訊いてくる。
「〇〇〇はどう?」と LINE に送ると、
その日のうちに「観た」と返事が帰ってくる。
暇か。

で、お勧めする映画は何かと探すのに
この「ひとりごと」に残した感想が
とても役に立つんだな。
でも、なんとなく、内容を覚えている映画も
あるのだけど、★5つを付けていても、
題名を観ても記憶にない映画が多いのには驚く。

2014年に観た映画『ぼくたちの家族』。
観た当時の自分の感想にはこう書かれていた。
「母親 (原田三枝子) の病気 (脳腫瘍)
発覚を機に長男 (妻夫木聡)、
次男 (池松壮亮) と父 (長塚京三) が
力を合わせ、絆を取り戻していくという物語」

しかし、それを読んでも、内容が
全く思い出せなかった。
どんなに感動しても、泣いても、10年後に
内容まで覚えている映画は本当に希少なんだ。
年をとればとるほど、それは際立っていくのだと思った。

さて、あらためて鑑賞した『ぼくたちの家族』。
やはり、泣いてしまった。
家族4人ともハマり役で素晴らしい。
10年前に何に感動したかなんて
全く覚えていないんだけど、
「そんなこと どっちだっていいじゃない」
(原田三枝子のセリフ)と思える作品。


★★★★★


Amazon で鑑賞(400円)

監督 石井裕也
原作 早見和真
脚本 石井裕也
2014年製作/117分/G/日本
劇場公開日:2014年5月24日





2024.3.7

落下の解剖学
Anatomy of a Fall




映画『落下の解剖学』。
人里離れた山荘で、男が転落死し、
小説家である妻に殺人の容疑がかけられる。
目撃者はおらず、現場にいたのは
視覚障害のある11歳の息子だった。
果たして、彼女は夫殺しなのか。

カンヌでパルムドールを受賞したこともあって、
期待して観たのだけど、ちょっと期待が
過ぎたのか 物足りない感じがした。
2時間半もあるんだけどね。

以下、ネタバレ含む。
私が物足りないと思ったひとつには、
彼女が犯人かも知れない、と
ほとんど思えなかったかも知れない。
本当にどっちか分からなければ、
もう少しサスペンス度が上がったかも知れないと思う。

もちろん、映画では夫の落下シーンの真相は
描かれていないので、事実は分からないと
言えば分からないんだけどね。

私は、彼女を犯人とは思えなかったので、
最後の最後に大どんでん返しが来て
「やられたぁー」ってなるのかと思いながら
(期待しながら)観ていた。
それがなく、判決が出たらそのまま終わったので、
物足りない感じがしたんだと思う。

とは言え、(彼女が無実だとして)あの息子の
証言がなければ、殺人犯に仕立てられたかも
知れないわけだから、裁判というか、
人の解釈・観点って怖いと思うね。
そして、彼女のセリフあるように裁判に
勝ったって、何のご褒美もないんだよな。

主演のサンドラ・ヒュラーも良かったが、
息子役のミロ・マシャド・グラネールも素晴らしい。
そして、犬も。
あの犬は助演賞ものだな。
薬を飲んだシーンは、もう演技じゃないような気がするけど。


★★★★☆


2023年製作/152分/G/フランス
原題:Anatomie d'une chute
劇場公開日:2024年2月23日





コットンテール



日英合作の映画『コットンテール』。
監督は、パトリック・ディキンソン。
出演は、妻を亡くした男にリリー・フランキー、
その妻に木村多江、息子に錦戸亮、
その妻に高梨臨。

リリー・フランキーと木村多江といえば、
2008年の『ぐるりのこと』でも
夫婦役を演じている。
あの映画も良い映画だった覚えがある。

妻を亡くした男と母を亡くした男の
再生の物語というところだが、
妻との間に何があったのかは、
過去の回想シーンで徐々に
明らかにされていく。

残念ながら、ビールに泡があったり、
なかったりとか、細かいところで
気に入らない点がいくつかあったのと、
登場人物の誰にも共感できずじまいだったこと、
そして、妻の最期のシーンのあいまいな描写など、
やや不満な点があった。
50年以上前と同じ景色なんて、
見つけられないと思ったしね。

しかし、妻が認知症になり、
壊れていくシーンは、いたたまれなくて
きつかった。
ちょっとしんどい。
木村多江、上手いんだもん。

あと良かったのは、イギリスの大自然の
美しさね。

タイトルのコットンテールは、
ピーターラビットの妹の名前。


★★★★☆


2023年製作/94分/G/イギリス・日本合作
劇場公開日:2024年3月1日





2024.3.14

ゴジラ −1.0



私は、ゴジラ、ガメラ、ウルトラマンで育った世代。
だけど、1998年のハリウッド版も、
2014年のハリウッド版も2016年の『シン・ゴジラ』も
劇場で観たんだけど、それほど面白いと思えなくて、
(もうこういうのは卒業だなぁ)と、
自分が歳を取ったことを痛感していた。

『シン・ゴジラ』は、庵野秀明監督だったけど、
現在公開中の『ゴジラ−1.0』は、 VFX の素晴らしい
山崎貴監督なので、観ようかどうしようかと思っていたら、
なんと邦画・アジア映画史上初のアカデミー賞、
視覚効果賞を受賞した。
ハリウッドの作品とは、予算が全く違うので、
これは本当に快挙なんだ。
世界に誇る日本のVFX映画、これは観ておかなきゃと思った。
本作11月3日公開だから、もう4ヵ月以上やってるんだな。

さて、映画の感想はというと、
まさかゴジラを観て泣くとは思っていなかったけど、
泣いてしまったよ。
ストーリーは、ベタベタなんだけどね。

単なる娯楽映画ではなく、社会批判や反戦の
メッセージもしっかりあった。
VFXは、さすが。
大迫力だったよ。
あえて苦言を呈するなら、一部ゴジラに投げられる
列車や船がちょいちゃちいなと感じたシーンも
あったけれど、総じて素晴らしいと思った。

以下はネタバレ含む。
後半、これはもしかして「アルマゲドン終わり」かと思った。
主人公が、自ら犠牲になりゴジラに爆弾ごと
突っ込むという結末が見えだしたのだ。
主人公の敷島(神木隆之介)は、
戦争中、特攻隊員として出撃したにもかかわらず、
死にたくなくて、逃げた過去を持つ。
だから、その落とし前を付けるために
敷島は死を覚悟して、飛行機の乗るのだが、
最後は、違う展開になり命を落とさずに済む。
これに対し、「彼は死ぬべきだった」という意見が
あると聞いて、私は哀しいと同時に憤りを感じた。
それは、まるで特攻を肯定し、美化する危険な
思考にほかならないからだ。
おそらくは、そんなに深く考えもしないでの
発言だろうと思いたいが、私にすれば、
特攻の肯定も許しがたいし、
映画として「アルマゲドン終わり」も勘弁してほしい。

VFX は素晴らしいし、概ね面白かったのだけど、
一部、突っ込み所もなくななかった。
戦時中、敷島がゴジラを戦闘機の機銃で
撃たなかったため、飛行場の整備兵が
死んでしまったように描かれているのだけど、
20ミリの機銃なんて、ゴジラには全く
歯が立たないことはすぐに分かる。
つまり整備兵の死の責任は、
敷島にはないと思うのだ。
なのに、いつまでもそのことを引きずっているのが
解せなかった。
あと、ゴジラに追われて、横に逃げれば良いのに
皆 真っすぐ縦に逃げていたりとかね。

それから、神木隆之介には私だけかもしれないけど
どうしても、軽いイメージがあり、
この主人公の戦争の苦悩を引きずるシリアスな役に
合ってないような気がした。
もちろん、彼は本気で演じていたんだろうけど、
やはりTVCMで、繰り返し見せられる印象は、
役者には不利で気の毒だと思った。
そのイメージをぬぐい切れない、観客にとってもマイナスだな。

映画は、お決まりのように続編があるかのような
終わり方をする。
本作がヒットすれば、続編もあるのかも知れない。

タイトルの「−1.0」の意味が分からなかったが、
「戦後、無(ゼロ)になった日本へ追い打ちを
かけるように現れたゴジラがこの国を負(マイナス)に
叩き落とす」という意味があるらしい。

もうひとつ、ゴジラのフォルムは昔の方が好きだ。
なんだか首が短くなったような気がする。


★★★★☆





2024.3.24

アバウト・ライフ
幸せの選択肢
Maybe I Do




リチャード・ギア、ダイアン・キートン、
スーザン・サランドン、ウィリアム・Hメイシーらが
出演する映画『アバウト・ライフ』。

以下、ネタバレ含む。
結婚を夢見る女と結婚を躊躇する男。
彼らの両親が会うことになるのだが、
それぞれがダブル不倫していたというコメディ。
まぁ、不倫といっても片方は、
数時間 話しをしただけなんだけど。
コメディなので、それなり笑える。
ただ、誰に対してもイマイチ感情移入に至らなかった。

結局、長年夫婦として連れ添っていると、
相手のことをちゃんと見なくなるということなのかな。
肝に銘じよう。

まあ、ファンタジーだから良いのだけど、
両家とも妙にお金持ちなのもなんだかなぁ。
あとアメリカ人って、自分ちのベッドでも
靴のまま上がるんやな。
それは、気になったな。


★★★▲☆


2023年製作/95分/G/アメリカ
原題:Maybe I Do
劇場公開日:2024年3月8日





梟ーフクロウー




李朝朝鮮史に残る謎の王子毒殺疑惑を
モチーフにしたサスペンス映画。

以下、ネタバレ含む。
殺人事件の目撃者が盲人というと、
最近観た『落下の解剖学』とも似た設定だが、
こちらはその目撃によって自分の命まで
危ないというサスペンス。

どうして、人間はこんなにも権力に振り回されるのだろうか。
権力を得るためなら人の命も大した価値を持たない。
自分の息子の命さえも。

これは、もちろんフィクションだろうけど、
王の座を巡って血を流した歴史は事実だろう。

主人公ギョンスは、生き延びるために
見えないふりをし、余計なことは言わずに生きてきた。
「卑しい身分の者はそうするしか生きる道がない」と言う。
しかし、彼は最後に立ち上がるんだな。
自分の病気の弟と、殺された王子の息子とが
ダブって、見捨てることができずに救けに行くんだ。

自分ならどうするだろうか。
生き延びるために黙って悪を見過ごすんじゃないか、
と考えさせられるのでした。


★★★★☆


2022年製作/118分/G/韓国
原題:The Night Owl
劇場公開日:2024年2月9日





2024.3.27

島守の塔



2022年公開時、気になっていたのだけど、
劇場で見損ねた映画『島守の塔』。
太平洋戦争末期、沖縄県知事を
務めた島田叡と警察部長だった
荒井退造の物語。

島田は神戸在住だったが、
沖縄戦が近いことを知りながら、
誰かが行かなければならないんだと、
県知事を引き受ける。
荒井は栃木県の出身で、
ふたりとも沖縄の人ではなかったのだが、
県民の命を守るために尽力する。

知事の島田に萩原聖人、
警察部長の荒井に村上淳。
島田の世話役を務める県職員、
比嘉凛を吉岡里帆が演じる。

両軍、民間人合わせると20万人、
県民の4人に一人が死んだという、
沖縄の地上戦。
なんで、こんなことせなあかんかったんやろ。
どんなに考えても狂っていたとしか、
言いようがない。

若い女性が、「恥を知る者は強し。
生きて虜囚の辱(はずかしめ)を受けず、
死して罪過の汚名を残すこと勿れ」の
精神で、敵軍に捕まるなら、
自決する覚悟で生きている。
この異常さ。
その背景には、敵軍に捕まると、
男性は八つ裂きにされ、女性は乱暴される、
と刷り込まれ、信じ込まされていた教育がある。

戦争映画に分類されるのだろうが、
あまり戦闘シーンはなく、そういう意味では、
描写が甘いという気もしたが、
本作では戦闘シーンの悲惨さよりも、
日本軍の沖縄の扱いの酷さ、
地上戦に巻き込まれる民間人の悲劇、
戦争の無意味さ、間違った教育の
恐ろしさなどがテーマなんだと思った。
そして、極限状態で人はどう生きるのかも。
あの状況における知事の「生きろ」という
言葉の重さと、ラストシーンに観る平和の大切さも。

今度、沖縄に行ったら、島守の塔に
手を合わせに行こう。


★★★★☆


2022年製作/130分/G/日本
劇場公開日:2022年7月22日

Amazon Prime Video で鑑賞





2024.3.30

オッペンハイマー
Oppenheimer




昨日 ロードショーの映画
『オッペンハイマー』を観てきた。
アカデミー賞13部門にノミネートされ、
作品賞、監督賞、主演男優賞、
助演男優賞ほか合計7部門で受賞した。

原子爆弾の開発に成功した、アメリカの天才
物理学者ロバート・オッペンハイマーの物語。
日本人にも深い関係のある人物だ。
私の無知だけど、原爆を開発した人について
何ら興味を持ってこなかった。
でも、当たり前だけど、誰かが作れと言い、
誰かが作り、誰かがそれを使うことを命令し、
誰かが投下したんだ。
その辺りのことが映画ではよく分かる。
なぜそんなものを産み出さなければならなかったのかも。

科学研究の行き着いた先が、
大量破壊兵器であって良いはずがない。
しかし、人類はバカなのだ。
どうしようもなくバカなんだ。

考えなければならないポイントは多い。
これ以上、自国の兵士を死なせないために
原爆を使うという考え、戦争を終わらせるためには、
多くの民間人を殺すこともいとわない考え。
人間は自分で戦争を始めておきながら、
この狂気をも産み出してしまう。
原爆の投下に成功したニュースを聞いて、
歓喜する人間。
このシーンは、気持ち悪い。
これも戦争が招く狂気の表れだろう。

原爆を作り出し、栄光を手にした
オッペンハイマーは、その後、
ある疑いをかけられ失墜する。
彼を貶めようとするヤツらがいるんだ。
ここでも人間の愚かさが描かれている。

彼が苦悩したことで、人間の良心を
感じることができるのは、救いと言えば
救いになるだろうか。

彼が、アインシュタインに語った言葉が、
核開発の間違いを象徴しており大変印象的だった。

ちょっと登場人物が多く一度観ただけでは、
100%理解しきれてないけど、
とても重厚で見応えのある映画だった。
復習して、もう一度観たいぐらい。

監督は、クリストファー・ノーラン。
オッペンハイマーを演じるのは、
主演男優賞のキリアン・マーフィ。
助演男優賞を受賞したロバート・ダウニー・Jr も良い。
禿げあがったオヤジの役で誰か分からなかったよ。
陸軍将校役のマット・デーモンがええ味出してる。
貫禄出てきた。もう若者ではない。
それから、エミリー・ブラントやケイシー・アフレック、
ラミ・マレックなども出演しており豪華です。

IMAXで観たので、原爆の実験シーンは
とても迫力があり怖いほどだった。
これは、家のテレビではなく劇場で観ないと
原爆の威力が伝わらないと思う。

180分を感じさせない作りも素晴らしい。
音楽も良いです。
作曲賞(ルドウィグ・ゴランソン)受賞です。


★★★★★


2023年製作/180分/R15+/アメリカ
原題:Oppenheimer
劇場公開日:2024年3月29日





哀れなるものたち
Poor Things




今日は、もう一本映画を鑑賞。
こちらもアカデミー賞がらみ。
計11部門にノミネートされ、
主演女優賞(エマ・ストーン)ほか
計4部門を受賞。

何の予備知識もなく観たら、
内容はちょっと引くような映画だった。
シュールな SFロマンチックコメディということだが、
私はあんまり笑えなかった。
(笑えるシーンも確かにあったけど。)
これは、おそらく好き嫌いが分かれるだろう。

身体は大人だけど ある事情で知能は子供という
女性ベラは、どんどん成長し賢くなっていく。
その過程は、確かに面白いのだけど、
私は結末のある一点が、イヤだった。
あれがなければ まだ救われたのに、と思う。

外科医役のウィレム・デフォーが、
強烈な存在感を放っております。

「R18+」(18歳以上)の指定がある通り、
大人のファンタジーです。


★★★☆☆


2023年製作/142分/R18+/イギリス
原題:Poor Things
劇場公開日:2024年1月26日





2024.4.1

ザ・ダイバー
Men of Honor




日本では2001年に公開された映画『ザ・ダイバー』。
ロバート・デ・ニーロとキューバ・グッディング・ジュニアの出演。
実在した黒人初の米国海軍潜水士、
カール・ブラシアを描いた作品だ。

20年以上前にビデオを借りて観たと思う。
観たことさえ、記憶に残らない映画の方が多い中、
本作は覚えていたんだからインパクトがあったんだ。
まあ、ロバート・デ・ニーロの出ている作品ということでも
記憶には残っただろうけど。
この度、約20年ぶりに鑑賞した。

キューバ・グッディング・ジュニアが
カール・ブラシアを演じ、ロバート・デ・ニーロは、
肺を痛めて潜れなくなったマスター・ダイバーで、
そのあとダイバー・スクールの教官となる、
ビリー・サンデーを演じる。
このビリーと、ダイバー・スクールの指揮官が
差別主義者でひどいんだ。
しかし、その逆境にも負けず、カールは
マスター・ダイバーになる。
だが、話はそこで終わらない。
マスター・ダイバーになったあとも、
とんでもない試練がカールを襲う。

やはり実話べースというのは力強い。
カールの不屈の精神には、
ただただ感服と頭が下がる思いで、
自分のだらしなさが際立つ。
同時に1940年代50年代とはいえ、
アメリカの黒人差別の酷さには声を失う。
こんな国が自由の国だと声高らかに
して来たことへの疑問も湧くほど。
それは、現代でも解決されていない。

どこまで事実に忠実に描かれているのかは分からないが、
差別主義者だったビリーが、最後にはカールの味方に
なるあたりは、アメリカらしく私は嫌いではない。
まあ、ビリーは気に入らない上官の思い通りに
したくなかっただけなのかも知れないとも思うけど、
それでもあの人がカールの味方になったことに
私はある種の希望を感じる。
単純かも知れないけど。

原題は「Men of Honor」。
「名誉の男たち」という意味だろうか。
カールの気高さは、米国海軍軍人であるという
誇りから来ていると思う。


★★★★▲


DVDで鑑賞

2000年製作/128分/アメリカ





2024.4.15

LIFE! / ライフ
The Secret Life of Walter Mitty




最近、友人のT君が映画に目覚めたみたいで、
お勧めの作品を訊いてくる。
記憶に残っている良かった映画なんて、
ほんの数本ほどですぐにネタに尽きてしまった。
この「ひとりごと」は大変有効な資料で、
ここに5つ星を付けた作品を紹介している。
ハズレはない。
それもそうだろう。
たぶん、10本は大げさでも7〜8本観ないと
星5つの作品に出会わない。
つまり、10本選んだらそれは、70〜80本の
映画から選んでいるということなんだ。

観た当時の自分の感想を読み直して、
もう一度観たくなる映画も多い。
そんな中の1本『LIFE!』を鑑賞。
アドベンチャー・コメディというジャンルのようだが、
大人のおとぎ話、ファンタジーという感じ。
ハッピーエンドだったろうとは思っていたけど、
10年ぶりに観たら、ラストは全く覚えていなくて、
初めて観たように感動したよ。

アメリカのライフ誌の写真担当者が、
最終号の表紙を飾る写真のネガを紛失してしまい、
(元々なかったので、紛失という感じではないのだけど)
ネガの在りかを聞こうと、連絡の取れない
写真家のショーンを追いかけるというストーリー。
この写真担当者 ウォルター・ミティが、
しょっちゅう空想しているちょっと臆病な男。
その彼が、どんどん変化していく様が痛快。
ウォルターを演じるのが、本作の監督も
務めるベン・スティラー。
ウォルターの母親にシャーリー・マクレーン。
年をとっても美人です。
ウォルターが心を寄せる同僚シェリルにクリステン・ウィグ。
そして、写真家のショーンにショーン・ペン。
出番は少ないのだけど、めちゃくちゃ渋くてカッコ良い。

原題は、「The Secret Life of Walter Mitty」。

現実のライフ誌は、2007年にオンライン版のみに
なったが、今はそれも閉鎖されたようだ。
驚いたのは、この映画の原作は1939年の
短編小説で、1947年に映画化されているんだ。
その邦題は、『虹を掴む男』。
だから、本作はリメイクなんだな。
出版社や色々な設定は違うようだが、
そちらも観てみたい。

実際のライフ誌印刷版の最終号の表紙を
見てみたいと検索したけど、見つけられなかった。
きっとあるんだろうけど。


[映画に出て来る「ライフ」のモットー]

To see the world,
things dangerous to come to,
to see behind walls,
to draw closer,
to find each other and to feel.
That is the purpose of life.


世界を見ること
近づくと危険なものを
壁の向こうを見ること
近くづくこと
お互いを知って感じること
それが人生の目的


★★★★★


2013年製作/114分/G/アメリカ
劇場公開日:2014年3月19日

Amazon Prime Videoで鑑賞





2024.4.16

虹を掴む男
The Secret Life of Walter Mitty




昨日観た映画『LIFE! / ライフ』は、
2013年にベン・スティラー監督・主演で制作された。
原題は、『The Secret Life of Walter Mitty』。

昨日調べていて、1947年に作られた映画の
リメイクだと知った。
興味があったので、その1947年版も観てみた。
邦題は『虹を掴む男』。

もう全く別の物語。
主人公ウォルター・ミティに妄想癖があると
いうこと以外は、何もかもが違う。
原作は非常に短い短編小説ということなので、
映画制作の際に設定など自由に膨らませたのかも知れない。

77年も前の映画ということもあるだろうが、
ちょっと退屈だった。
何よりウォルターの妄想が面白くない。
これは時代だろうな。
そして時々ミュージカル風になるのも
私には余計な演出に感じた。
『ライフ』では、ウォルターの妄想は最初の方だけで、
割とすぐに実際に行動し始めるのだけど、
『虹を掴む男』では、結構後半まで
あまり面白くない妄想が続いた。
ある事件に巻き込まれるのだが、
これがまたイライラする展開。
途中で観るのを止めようかと思ったほどだった。
これは、時代の違いが大きいと思う。

人の言いなりだったウォルターは、
最後に自分の意志で行動をするのだけど、
邦題『虹を掴む男』は、いかがなものか。

主演は、ダニー・ケイ。
谷啓が、ダニー・ケイから芸名を決めたというのは、
有名な話だが、ダニー・ケイの映画は初めて観た。


★★☆☆☆


1947年製作/110分/アメリカ

Amazon Prime Videoで鑑賞





2024.4.21

青天の霹靂



2014年に公開された映画『青天の霹靂』。
劇団ひとりが、自身の書き下ろし小説を
初監督で映画化した作品。
公開時に劇場で観たのだけど、当時の感想は★5つ。

イマイチな人生を送っている晴夫(大泉洋)が
40年前にトリップし、父(劇団ひとり)と
母(柴咲コウ)に会う。
自分の人生がイマイチなのは、
自分を捨てた母親と、ダメな父親のせいだと
生きてきたのに、若い頃の両親は、
自分が思っていた 二人ではなかった。

10年前のエントリーにも書いたけど、
大泉洋が上手い。
泣かされます。

でも、ちょっと期待し過ぎたかな。
思ったほど感動できず、今回は★4つ半。
これって、やはり劇場で観るのと
自宅で観るのとの違いが大きいと思う。
劇場で観る方が絶体 映画にのめり込めるし
感動するんだと思う。
それだけ、劇場で観ることには価値があると思うね。


★★★★▲


2014年製作/96分/G/日本
劇場公開日:2014年5月24日

Amazon Prime Videoで鑑賞





2024.4.26

すばらしき世界



西川美和監督、役所広司主演の映画
『すばらしき世界』。(2020年)
原作は、『身分帳』という佐木隆三の小説。
映画化に当たり、時代設定を変え、
タイトルも変えたようだ。
観終えてから知ったのだが、実在した男の物語だった。

殺人罪で13年間の刑期を終えて出所した、
元ヤクザの三上(役所広司)が、
なんとか社会に適用しようともがく姿を描く。

原題の『身分帳』は、刑務所で、収容者の経歴や
入所時の態度などが書かれた書類。
もちろん、原本は持ちだせないだろうが、
映画では、本人がノートに書き写したものが登場する。

三上は、かっとなると見境がなくなる男だが、
まっすぐで、義理堅く、優しい人間でもある。
しかし、元殺人犯が社会にとけ込むのは
容易なことではない。
何度も「元」に戻りそうになる三上を
周りの人が支える。

今年公開された『パーフェクトデイズ』とは
全く違うストーリーだし、主人公のキャラも全く違うのに、
役所広司が演じているせいか、
言葉にできない共通点を感じてしまう。
なんだろうな。

それにしても、このタイトルには考えさせられる。
「すばらしき世界」。
どこがすばらしいのだろうか。
何がすばらしいのだろうか。
過ちを犯してもやり直すことができることだろうか。
しかし、そんな人を社会は簡単には受け入れない。
身元引受人になった弁護士や、スーパーの店長、
三上を取材する小説家志望の男、
ケースワーカーの職員など、三上を支える、
優しい人々の存在だろうか。
現実は、そんなに甘くないだろう。
三上は、母親に捨てられ(捨てたわけでは
ないかも知れないけど)、誉めてもらえるという理由で
ヤクザの仕事を請け負ってきた。
そんな三上が最後に、自分の怒りをコントロールすること、
いや見て見ぬふりをすることを覚え、「普通の人」になる。
それがすばらしいことなのだろうか。
それとも、そんなことまで(自分の本性を殺してまで)して
生きる価値があるほどこの世界はすばらしいのだろうか。
あるいは、三上が最期に観たコスモスの花のことだろうか。

いくら考えても分からないので、
ここまで書いて、検索してみたら、
スゴイ答えに出会った。

「すばらしき世界」というタイトルの謎

高田ともみさんというライターさんの記事なのだが、
彼女のタイトルの解釈を読んで、
不覚にも落涙してしまった。
「すばらしき世界」の意味、すばらしいです。

映画のオフィシャルサイトにある、
西川監督と六角精児の対談を読んだ。
「すばらしき世界」の意味を六角さんが
「『まんざら捨てたもんじゃねえ』ってことでしょう」
と語っているが、西川監督はタイトルに
「本当に悩みました」と書いているけど、
明確にはその意味を話していない。
でも、英語のタイトルが、
「Under the open sky」になったことは、
喜んでいるので、繋がっているんだろうな。

西川作品では『ゆれる』が一番好きだったけど、
『すばらしき世界』が抜いたな。
原作『身分帳』も読みたい。

ところで、長澤まさみと仲野太賀のコンビは、
虫コナーズのCM思い出してしまうな。
映画とは関係ないけど。


★★★★★


2021年製作/126分/G/日本
劇場公開日:2021年2月11日

Amazon Prime Videoで鑑賞





2024.4.29

生きる LIVING



黒澤明監督の映画『生きる』(1952年)の
リメイク作品『生きる LIVING』。
舞台を1950年代のロンドンに移し、
オープニングから、その時代の映画のような
錯覚を覚える。

黒澤の『生きる』は、もうずいぶん前に
ビデオで観たのだけど、あらすじは覚えている。

仕事一筋だけど、空虚な人生を送っている、
公務員のウイリアムズが自分の余命を知り、
残りの人生を生まれ変わったように生きる。
誰もが関わろうとしなかった、公園作りに
命を懸けるんだ。

ウイリアムズの手柄を横取りしようとする上司、
ウイリアムズに見習って、
「これからは責任逃れをしない」と誓ったのに、
すぐ元通りになるウイリアムズの後任の課長や同僚。
そんな人間のダメの部分もしっかり描かれていて、
単純に「死期を知った人間ががんばって生きた」
だけの話に終わらない。
最後の警官とウイリアムズの部下だった、
ピーターとの会話が良い。

オフィシャルサイトの解説には、
「日本の社会もイギリスの社会も、感情を表に
出さないことを基本としています」とある。
そういう面もこの脚本に合っていたんだろう。

脚本は、イギリス在住のノーベル賞受賞作家、
カズオ・イシグロ。
リメイクの発案も彼だったらしい。
ウイリアムズを演じる、ビル・ナイがとても良い。


★★★★☆


2022年製作/103分/G/イギリス
原題:Living
劇場公開日:2023年3月31日


Amazon Prime Video で鑑賞





2024.4.29

空 白



2021年10月に劇場で観た映画『空白』。
その時の感想は、こちら

2年半ぶりの鑑賞だったけど、
やはり重い作品だった。
つらくてしんどいけど観るに値する。

マスコミ(テレビ報道)の酷さや
「正しさ」「親切」の押し売りには辟易する。
持って行き場のない怒りと悲しみ、
起きてしまった どうしようもないことを
人はどうやって乗り越えていくんだろう。

つらいストーリーだけど、明日に向かって
生きていくしかない、再生と希望の物語でもある。

乱暴な 添田充 を演じる古田新太が素晴らしい。
自分の責任で添田の娘(中学生)を交通事故で
死なせてしいまい、心を病んでいくスーパーの店長を
松坂桃李、おせっかいなスーパー店員を寺島しのぶ、
添田の弟子に藤原季節。
監督は『ヒメノア〜ル』の吉田恵輔。


★★★★★


2021年製作/107分/PG12/日本
劇場公開日:2021年9月23日

Amazon Prime Video で鑑賞





2024.5.2

オッペンハイマー
Oppenheimer




一度では到底理解のできないであろう映画
『オッペンハイマー』の二度目の鑑賞。
前回観てから、1ヵ月以上経っているのだけど、
その間に、YouTubeで数本解説動画を観て、
復習(&予習)をしたので、前回の理解度が
50%だったとしたなら、今回は 75%ぐらいだろう。
それぐらい複雑な話だ。
一度目にはほとんど分かっていなかったと
いうこともよく分かった。

もちろん、あらすじは理解しているし、
この映画のテーマ(おそらくノーラン監督が
提言したかったこと)は、自分なりに
受け止めているつもりだが、まだ不十分な
感じがしているので、もう少し登場人物の
相関関係など整理したうえで、もう一度
上映中に観に行きたい。
もうこれは「何度も観ろよ」という映画だと思う。
何がそんなにこの映画に惹かれるのか
よく分からないのだけど。

おかげで今まで観たノーラン監督の
「なんかよう分からんかった」的な作品、
『インセプション』『インターステラー』
『テネット』も、もう一度観てみようという
気になっている。
もしかしたら、ノーランにハメられたか。

前回は、IMAX で観たので、
音響がもの凄い迫力だった。
今回は、前回と同じシネコンの IMAX ではない
劇場で観たのだけど、それでも結構な迫力だったよ。

米国での上映では「日本人なら絶対笑わないような
場面で笑いが起きていた」と何かで読んだ。
その記事には、どの場面か書いていなかった。
確かに日本人なら、笑えるシーンは全くない。
たぶんだけど、原爆投下に関する会議で、
「京都をターゲットから外した」という場面では
ないだろうかと思った。
偉いさんが、「京都には新婚旅行で行ったから」と言う。
その前に彼は「京都には文化的価値がある」と
本当の理由を言い、そのあとに付け足しのように
新婚旅行の話をするのだけどね。
ほかには思い当たらないので、
もし、そこだったとしたら、あれは米国人には面白いのかな。

一度目の感想に「原爆の投下に成功した
ニュースを聞いて、歓喜する人間。
このシーンは、気持ち悪い」と書いた。
しかし、彼らはおかしくないんだな。
日本人であっても、あの立場で
あの場所にいたら、原爆の投下を喜び、
戦争の終結を祝っただろう。
気持ち悪いのは、アメリカ人に対してではなく、
「人間」に対しての気持ち悪さだ。


★★★★★


2023年製作/180分/R15+/アメリカ
原題:Oppenheimer
劇場公開日:2024年3月29日






2024.5.4

悪は存在しない



『ドライブ・マイ・カー』で数々の受賞と
ノミネートをされた濱口竜介監督の
最新作『悪は存在しない』。
タイトルからも ちょっと期待していたのだけど、
これが難しかった。

思えば『ドライブ・マイ・カー』のレビューに私は
「全くもって 『??? 』な終わり方だった」
「残念ながら、私はこの映画のターゲットから
完全に脱落している」と書いた。

本作も全くもって然り。
今回も「???」な終わり方、何がこんなに
高評価なのか分からないところを鑑みると
本作についても「私はこの映画のターゲットから
完全に脱落している」ような気がする。

あまりに不可解なので、本作に関する記事や
監督のインタビューも読んだのだけど、
それでも謎は解けない。
それもそのはずだろう、監督は結末の解釈を
鑑賞者に預けているんだ。
もちろん、それはどの映画だって同じだ。
でも「なんで主人公はそんなことをしたの?」
という疑問を解くカギが私には見当たらないんだ。

本作は、ベネチア国際映画祭で銀獅子賞
(審査員グランプリ)を受賞した。
(そのほかにも受賞歴あり)
もしかしたら、高評価の人たちは、
その受賞を受けて、訳も分からず高く評価
しているのではないか、実は何も分かっていない
のではないかと勘繰ってしまうほど、
私にはよく分からない。
自分の理解力の低さを棚に上げてるのだが。

監督のインタビューやその他の解説を読んだ上で
もう一度観ると、違って観える可能性もあるが、
そこまで惹かれないのが正直なところだ。

映画や文学で、結末を観客や読者に
委ねるタイプのものを「オープン・エンディング」
というが、あまりにもオープンの角度が
広すぎて、私は置いてきぼりをくらってしまった。
やはり、私には濱口監督作品を理解する
センスはなさそうな気がする。

ただ、映像と音楽は良い。
元々が『ドライブ・マイ・カー』の音楽を
担当した石橋英子からの
ライブパフォーマンス用映像の依頼が、
本作のスタートだったというから、
音楽との相性は良いのだろう。

毛細血管を連想させる木々の枝を
見上げる映像に、あまり旋律を感じさせない、
重厚なストリングスの響きという組合せは、
環境音楽としても良いし、そこから何かの
示唆を受取るという意味でも嫌いではない。
が、あのエンディングは、どうしてよいか分からない。

なぜだかヨーロッパ、それもイタリアやフランスではなく、
イングランドか北欧のイメージを感じてしまった。
そういう意味でも、監督が国際的評価が
高いという意味でも、外国映画的なのかもね。

舞台は、長野県の水挽町(みずびきちょう)という
架空の村なのだが、登場する車が諏訪ナンバーだった。
実は、来月諏訪地方へ行く予定をしているんだ。
昨夜、ちょうどホテルを予約したところだった。
もうひとつ、映画の上映前、席に着いてから
妻と話していてノーム・チョムスキー
(哲学者・言語学者)の話が出た。
予告編が始まったら、なんと佐藤真の
ドキュメンタリー映画『暮らしの思想 佐藤真
RETROSPECTIVE』の予告編の中に
チョムスキーが登場した。
そんな、シンクロニシティな映画鑑賞でした。

ところで、冒頭
「EVIL DOES NOT EXIST」と字幕が出る。
昔、何かの本で「EVIL」は、「LIVE(生)」の
逆だから「悪」なんだと読んだのを思い出した。


★★★☆☆


2023年製作/106分/G/日本
劇場公開日:2024年4月26日





2024.5.5

マイ・スイート・ハニー
Honey Sweet



例年のゴールデン・ウィークは、一泊か二泊程度
国内旅行に出かけていたのだけど、
退職して、いつでも行けるとなると、
わざわざ料金の高い、そして混むこの時期に
行かなくても良いだろうと、今年は
どこへも行かなかった。
でも、どこかに行くには、
季節は今が一番良いんだよな。

さて、昨日は、難しい映画を観たけど、
今日は超分かりやすいラブコメ。
公開されたばかりの韓国映画の
『マイ・スイート・ハニー』。

45歳のもてない男チャ・チホを演じるのは、
ユ・へジン。
少し前に観た映画『梟―フクロウ―』で
朝鮮王朝の国王を演じていた役者だ。
あまりにも違うキャラなので、
言われないと気付かない。
ヒロイン役、明るくエネルギッシュな
シングルマザーのイ・イルヨンを演じるのは
キム・ヒソン。

大人のメルヘンということだろうが、
40代の恋愛にしては、なんというか
ちょっとウブすぎやしないかと思う。
恋愛経験のない45歳だとこうなるのかな。
まあ、コメディということで、野暮なツッコミはいたしません。

家族を大切に思うがゆえに、
いったんは恋愛を諦めようとするふたり。
だが、双方の家族が再びふたりを
結びつけるというハッピーエンド。

後半、主人公がテレビに出演することが
決まった時点で、その先が読めてしまったのは残念。
やっぱり、意外性が欲しいもんな。
結構笑えたのは良かった。


★★★▲☆


2023年製作/118分/G/韓国
原題:Honey Sweet
劇場公開日:2024年5月3日







 ひとりごと