カメラと写真 13
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2025.3.3
喫茶店の水
qp(キューピー)という人のインタビュー記事を読んだ。
qpさんは、喫茶店で出される「水」の写真を撮り続けて
フォトエッセーを出版されたという方。
本職は、画家のようだ。
インタビュー記事を読んで俄然興味が湧いたので、
そのフォトエッセーを取り寄せた。
エッセーは、喫茶店と喫茶店の水に関することが
ほとんどで、読みやすい文体で内容にも共感が持てた。
初めて入った喫茶店の黒板に
「伝言 qpさん会えるでしょうか?ご一報ください S」
と書かれていたエピソードは、泣くような話では
ないのにどういうわけか、泣いてしまった。
また、行くたびに違うグラスで水を出す、
喫茶店の店主の粋な計らいの話も良い。
qpさんは、2020年の夏から 400店舗以上の
喫茶店をめぐり、水を撮りためてきた。
フォトエッセーの出版は昨年11月だが、
私が入手したものはすでに第二刷だった。
何でもないことを続けると、
同じだと思っていた物に
その違いが見え始め、発見があり、
物語が生まれるんだと思った。
写真は、全て水の入ったコップを
ど真ん中に置いて撮られている。
構図は、コップを置いたテーブルの縁のラインや
背景に映る壁、窓、椅子、カーテンなどが
作り上げている。
コップは表面が曇っているもの、
結露しているもの、柄の入ったもの、
形の凝ったもの。
ほとんどは透明だけど、薄っすらと
色のついたコップもある。
そして、ただの水なのにこんなにも
色んな表情があるのだと発見する。
それは、水の表情というよりは、
写真がかもし出す表情だけど。
考えてみれば、違う店で 違うコップで
違う日に 違う光で写しているわけで、
同じものなどないということは当然なのだけど、
喫茶店で出される水なんて、特に特徴もなく
どこも同じでしょ、と浅い考えのバイアスに
支配されていることに気付く。
もう一つ、このフォトエッセイには、
85枚の水の写真が収められているが、
意外にも氷の入った水が少ない。
数えてみると 15枚程だった。
(氷なのかどうか分かりにくい写真も
数枚あったけど。)
なんだか 喫茶店に行きたくなったよ。
[ 記 事 ]
「喫茶店の水」を400店で撮り続けて
身の回りの美しいものに光をあてる
話題のフォトエッセー著者qpさんインタビュー
2025.3.27
ロバート・キャパ 戦争
WAR ROBERT CAPA
東京都写真美術館
ロバート・キャパの写真展「戦争」に行ってきた。
解説によると「本展は、東京富士美術館が
所蔵するキャパの約1000点のコレクション・
プリントから、“戦争” に焦点を当てた作品
約140点を厳選して展示」とある。
有名な「崩れ落ちる兵士」(1936年)や
ノルマンディ上陸作戦を撮影した
「『Dデー作戦』でオマハ・ビーチに上陸する米軍」
(1944年)は、もちろんのこと、兵士だけではなく、
戦禍の中の人々を写した写真も多かった。
キャパは、1930年代のスペイン内戦に始まり、
日本軍による中国の漢口爆撃、
第二次世界大戦での北アフリカ戦線、
イタリア戦線、ノルマンディー上陸作戦、
イスラエル建国(第一次中東戦争)、
50年代のインドシナ戦争まで、5つの
戦争を撮り続けた。
「写真家」ではなく「ジャーナリスト」だと
自らを名乗ったキャパ。
ひと言で言うと圧倒された。
歴史の目撃者の目撃の証拠の数々。
予想を超える衝撃のようなものがあった。
キャパは、1954年5月25日、
地雷に接触して死んでしまう。
40歳だった。
この写真がキャパが死ぬ直前に撮ったもの。
フランス領インドシナ、現在のベトナムだ。
もう一枚同じ日(1954年5月25日)に
撮った地雷原を歩く兵士たちの写真があった。
おそらくだけど、キャパは目の前で兵士が
地雷に触れ、吹き飛ばされる光景も
目の当たりにしたことだろう。
どんな気持ちで、この野原を歩いていたのだろうか。
たくさんの戦場を経験し、自分は死なないと
思っていたのだろうか。
いつ死んでもいいと覚悟していたのだろうか。
「戦場カメラマンの一番の望みは失業することだ」
これはキャパの名言の一つだが、文字通り
命をかけて戦争の記録を残し、その悲惨さを
世界に訴え続けた。
しかし、21世紀に入っても人類は殺し合うことを
一向にやめようとしない。
この写真は、今日も飾られていたが、
ルース・オーキン(Ruth Orkin)という米国の
女性カメラマンが1951年に撮ったキャパ。
ご覧の通り、ええ男である。
一時期、イングリッド・バーグマンと関係(不倫)が
あったというが、まあモテたんやろな。
ところで、私は無意識にキャパが米国人だと
思い込んでいたのだが、1913年、
ハンガリー生まれのユダヤ系。
本名は、アンドレ・フリードマン。
1934年、同じユダヤ人の写真家ゲルダ・タローと
出会い、後にふたりで「ロバート・キャパ」という
架空の人物を創り上げ、名乗ったのが始まりだった。
「ロバート・キャパ」は、アメリカで成功した
カメラマンという設定だったらしい。
しかし、1937年ゲルダは、スペインで取材中
戦車に轢かれて死んでしまう。
悲惨な亡くなり方だ。
有名な写真「崩れ落ちる兵士」には、
色んな説があり、今ではこれは撃たれたのではなく、
転びそうになっただけというのが有力なようである。
しかも、撮ったのはキャパ(アンドレ)ではなく、
ゲルダではないかという説もある。
「戦争のことは話したくない」とキャパが
この写真についての真相を語りたがらなかったらしいが、
写真が有名になり過ぎたせいで
「いやいや、ちゃうねん、この人 撃たれてないねん。
転びそうになったんを撮っただけやねん」とは
言えなかったのかも知れない。
2025.4.3
モノクロ写真展
The Monochrome 2025
明日から3日間、横浜で開催される
「モノクローム写真展」に8枚の写真を出展している。
お金さえ払えば誰でも参加できる写真展だが、
こういうのに出展するのは、初めてのこと。
作品は、昨年の沖縄旅行で撮影したものから選んだ。
2022年に写真展を開いた時には、
来場者は友人知人ばかりだったけれど、
今回は全く知らない人達が観るわけだ。
キャプションには私のインスタが書かれていると
思うが、わざわざ感想などを送ってくれる人も
いないだろうと何も期待していない。
ただこれも「やったことのないことをやる」シリーズの
一つで、写真展に参加することで何か新しい発見や
インスピレーションがあれば幸いだと思っている。
主催者(日本文藝)からの案内では、
「全国各地から総勢130名230作品以上の
モノクロ写真を展示予定」とあった。
私のように8枚も出展している人は、
ほとんどいないだろう。
払えないほどの金額ではなったので、
マックスの8枚で申し込んだのだけど、
考えてみれば、これは音楽でデモテープを作って、
レコード会社などに送っていた頃と同じで、
一点で勝負できないことの表れだな。
デモテープなんて、1曲の数小節聴けば、
判断されてしまうのに1曲で自信がないから
「他にこんなんもあります」と何曲も入れることに
なってしまう。
変わってないよね。
---- The Monochrome 2025 ----
<会 期>
4月4日(金)12:00-18:00
4月5日(土)12:00-18:00
4月6日(日)12:00-16:00
<ギャラリー>
みなとみらいギャラリーABC全会場
横浜市西区みなとみらい2-3-5
クイーンズスクエア横浜クイーンモール2階
<アクセス>
みなとみらい線「みなとみらい駅」直結
JR線・市営地下鉄「桜木町駅」徒歩「動く歩道」利用で約8分
入場無料
私は会場にずっといるわけではありませんが、
よろしければお越しください。
開催概要のサイトがあっても良いと思うのだけど、
なぜか出展募集のサイトしかない。
案内用のハガキは、10枚ほど送ってきたけど。
主催者に次回からは、宣伝用のサイトが欲しいと
言わなきゃね。
出展募集のサイト → The Monochrome 2025
2025.4.4
モノクロ写真展に行って来た。
The Monochrome 2025
作品を出展しているモノクロ写真展に行って来た。
会場は、横浜のみなとみらいギャラリー。
16時過ぎに会場に着くと、今日は平日のせいか、
ほとんど人がいなかった。
作品は撮影者の名前の順に展示されているようだった。
たくさんの作品の中で、どんな風に自分の作品が
見えるのか興味津々だったが、悪くないと思った。
見落としているかも知れないけれど、
8枚出展している人は他にいなくて、
多くの人が1枚のみ。
4枚や6枚の人は数人いたと思う。
写真の横には、キャプションが貼ってあって、
作品名、撮影者、撮影者のインスタグラムの
QRコードが記載されている。
昼過ぎからポツポツと私のインスタのフォロワーが
増えて、今日1日で8人増えた。
もちろん知らない人たちだ。
なるほどこういう効果があるのか。
インスタをフォローするということは、
展示されていた私の作品を観て、
気に入ってくれたか興味を持ってくれたと
いうことだろう。
それは嬉しいな。
毎日 真面目に、インスタをアップしていて良かった。
今回の展示会への出展について、昨日、
「『やったことのないことをやる』シリーズの一つで、
写真展に参加することで何か新しい発見や
インスピレーションがあれば幸いだと思っている」
と書いた。
もちろん人に作品を観てもらえることは
嬉しいのは間違いないのだけど、そんなに
強くは欲していない自分がいる。
これはひとえに歳のせいではないかと思っていた。
が、こんな風にたった数名見知らぬ人が
自分のインスタのフォロワーになったというだけで
嬉しい自分がいることにもちょっと新鮮な驚きがある。
なるほど、音楽でもアートでも観客の存在は
作者や演者の大きなインスピレーションの
元になるだろう。
しかし、そう思うとヴィヴィアン・マイヤー
(1926-2009)のことを思わずにいられない。
ヴィヴィアン・マイヤーは米国の写真家。
10万枚以上の写真を撮影しておきながら、
一切、世に発表しなかった謎の人物。
彼女は、ただ「撮る」という行為だけで、
満足し完結していたということなのだろうか。
誰にも観られることも、評価されることもなく。
ヴィヴィアン・マイヤーのことは置いといて。
インスタの連続アップは今日で891日目だった。
もうすぐ1000日だ。
1000日でいったんやめるか、そのまま続けるかは
まだ決めていないけど、1000日で何かを
成し遂げたわけではないのは分かっている。
音楽や芸術、写真は終わりのない旅だからね。
作品の前でポーズをとる筆者
出展した8枚は、会期が終わったら
改めてここにも発表します。
2025.4.7
モノクロ写真展 出展作品
The Monochrome 2025
4月4日から昨日まで3日間、横浜の
みなとみらいギャラリーで開催された
「モノクロ写真展 The Monochrome 2025」
が、終了した。
私は、8点の作品を出展していた。
最終日の昨日も会場に行ってみたが、
金曜日よりは人が多く、終了の16時前に
受付の人に何人ぐらい来たのか訪ねてみると
3日間合計で約800人位とのことだった。
2022年の私の個人的な写真展「僥倖」の来場者数が
2日間で 60人ほどだったことを考えると、
とても多くの人に観てもらえたことになる。
私のインスタグラムのフォロワーは、
この3日間で18人も増えた。
来場者が800人とすると2%以上の人が
私の写真を観て興味を持ってくれたことになる。
これは、まんざらでもないような気がする。
それから、8枚出展している人は、
私以外にももう一人いたよ。
出展者には、胸から吊るすように
「出展者」と書かれた紙の入った名札タグが
受付に 用意されていた。
それをぶら下げている人も数人いた。
そういう人は、誰かと話している人が多かった。
名札を付けている人同士が話しているのも見た。
私は知らない人と話すのが苦手だし、
「出展者」と名乗る必要も感じなかったので
「出展者」タグは 付けなかった。
でも、自分の写真の前で立ち止まって
何やら話している人たちの話は聞いてみたかったな。
意気地がないので声はかけなかったけど。
さて、作品の紹介。
今回出展したものは、昨年10月の
妻の還暦祝い&結婚25年旅行で訪れた
宮古島と石垣島で撮影したもの。
8枚選ぶのも難しかったけれど
タイトルを付けるのにも時間がかかった。
「宮古島の海」というような安易な説明を
タイトルにはしたくなかったので、
写真を1枚1枚観ながら、思い浮かぶ言葉を
タイトルにした。
すぐに思い浮かんだものは簡単に決められたけど、
全く思いつかず、ずい分言葉を探したものもあった。
キャプションの説明文には、宮古島か石垣島か、
撮影地だけを書き、何も説明を加えなかった。
説明文ではなく、写真から感じて欲しいから、
というのはカッコ良すぎる言い訳か。
でも、ここでは特別にどうしてそのタイトルに
したのかを書いておこう。
タイトルには、普段使わないような、
自分も知らなかったような言葉も選んだ。
― 刹那 ―
「刹那(せつな)」は、仏教用語では時間の最小単位。
このボートと木の存在も出会いも、悠久の時の中では
瞬間のことだと思った。
― 存在 ―
この石たちは、ずっとそこに存在している。
今までも、これからも。
― 無常 ―
波はまさに「無常」だ。
動き続けていて、同じ波は二度とない。
― 無始無終 ―
始まりもなく、終わりもない。
始まりがない、ということは、どういうことだ?
― 久遠 ―
「久遠(くおん)」は、今の状況から見て遠い過去や
遠い未来、または「永遠」を意味する。
長く久しい状態を表す仏教的な言葉。
私には「いつまでも続く、続いている」というイメージだ。
― 悠久 ―
これも「無始無終」や「久遠」に似ているイメージだが、
果てしなく、遥かに長い時を思った。
― 邂逅 ―
「邂逅(かいこう)」は思いがけなく会うこと。
この船は、外国からの観光船だろうか。
島に上陸した乗客にも「邂逅」があったかも知れない。
この船を見つけたのも、煙突からの煙も「邂逅」なんだ。
― 鎮魂 ―
サトウキビ畑の向こうに沈む夕陽。
この写真を観ると 私は畑の中に日本兵や米兵が
今も隠れているような錯覚を覚える。
Hey Soldiers,
The war is over.
Rest in peace.
「刹那」「無常」「存在」「無始無終」は、
宮古島で撮影。
「邂逅」「久遠」「悠久」「鎮魂」は、
石垣島で撮影。
撮影期間は、2024年10月9日から12日。