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2018年 映画・演劇・舞台 etc

    
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2018.1.5

私が殺したリー・モーガン
I CALLED HIM MORGAN


「ジャズ史上最悪の事件、
天才トランペット奏者リー・モーガン
殺人事件の真相」というコピーのついた、
ドキュメンタリー映画
『私が殺したリー・モーガン』を観てきた。

リー・モーガンのことは、名前ぐらいで
ほとんど知らなかったのだけど、
一応、映画を観る前に代表作のアルバム
『The Sidewinder』を聴いてみたら、
「ああこの曲("The Sidewinder")の人!」って
感じで、耳馴染みのある音だった。

原題は「I CALLED HIM MORGAN」。
「私は、彼をモーガンと呼ぶの」と言ったのは、
1972年に彼を拳銃で撃ち殺した、
内縁の妻 ヘレン・モーガン。
彼女は「リー」と呼ぶのがイヤだったようだ。

リー・モーガンは、子供のころから
神童と呼ばれるほどのプレイヤーだった。
16歳で、ディジー・ガレスビーのグループに入り、
その後、アート・ブレイキー & ザ・ジャズ・
メッセンジャーズ で活躍する。

才能に恵まれ、素晴らしいスタートを
切ったにもかかわらず、ご多聞にもれず、
ドラッグにおぼれてしまう。
ある夜には、部屋履きのスリッパで
クラブに現れたという。
ドラッグ代の為に靴を売ってしまったのだ。

そんなリーを救ったのがヘレンだった。
ミュージシャン仲間の
「ヘレンが、リーを泥川から救った」という
言葉があったけど、ヘレンはリーを
アーティストとしてだけではなく、
人間としても救ったわけだ。

ヘレンとの始まりの頃、リーは
真冬のニューヨークでコートも
持っていなかった。
コートは、質に入っていたのだ。

そんなどん底のだったリーを支え、
マネージャーもやり、第一線に
復帰させたのは、ヘレンの功績であることを
この映画を観れば誰も疑わないだろうが、
実は世の中ではあまり知られていない。
リーを殺したのがヘレンならば、
リーを救ったのもヘレンであることを
監督のカスパー・コリンは、
伝えたかったようだ。

映画の途中までは、なぜヘレンがリーを
殺すのか全く分からない。
でも、こういうストーリーは
大体 決まっていて、
ヘレンとリーの場合も同じこと。
そう、リーの気持ちが別のオンナに向いたのだ。
それは仕方のないことかも知れない。
でも、リーがもう少し利口な人だったら
殺されずに済んだに違いない。
リーはあまりにもヘレンを大切に扱わなかった。
とっても恩のある人なのに。
そして、ヘレンも一瞬、自分を見失った。
とっても優しい人だったのに。

ヘレン自身、ずいぶん後悔し
苦しんだであろうことは、彼女の息子
(ヘレン13歳!の時の子供)の
言葉からも推測できる。

この映画を作るにあたり、
とても重要なヘレンのインタビューが、
彼女の死の1ケ月前(1996年だったと思う)
というのも興味深い。
インタビューはまだ途中だったのだけど、
まるでいつかその内容が、
世の中に出ることを望んでいたかのようだ。

リー・モーガン、享年33歳。
生きていれば、今年80歳。
健康でいれば、もしかしたら
現役だったかもしれない歳だ。

演奏シーンでは、ディジー・ガレスビーや
アート・ブレイキー & ザ・ジャズ・
メッセンジャーズも映る。
若き日のウェイン・ショーターなども。
インタビューは、リーが殺されるきっかけにも
なった元ガールフレンドや、ヘレンの長男、
リーと共演していたミュージシャンが数人。
いずれもジャズ界の大物なのだろうけど、
私は、ウェイン・ショーターぐらいしか
分からなかった。

内容とは関係ないけど、
最後に映る演奏シーンは、
1960年代だと思うが、
ピアノが YAMAHA なのには驚いた。
そんな頃から、YAMAHA ピアノは
アメリカで使われていたんだ。

この映画のことをちょうど知った頃に
Ben Williams の "State Of Art" という
アルバムをレンタルした。
アルバムの3曲目は、
"The Lee Morgan Story" という
Rap の入った曲だった。
おまけに、ライヴで "Moanin" という曲を
演るので1958年のオリジナル、
Art Blakey & The Jazz Messengers の
"Moanin" を聴いておこうとチェックしたら、
なんとトランペットが、リー・モーガン!
来よるんです、こういう偶然が。
ああ、もうこの映画観るしかない、と
思ったのでした。


★★★★▲


リー・モーガンのことを調べていたら、
最初の奥さんが Kiko Yamamotoという
日系アメリカ人女性だったという記事を発見。
映画を観てからこの記事を読むと、
大変興味深いぞ。

日系Lee Morgan夫人のこと


私が殺したリー・モーガン オフィシャルサイト

めっちゃカッコええ Lee Morgan のソロ





2018.3.12

15時17分、パリ行き
THE 15:17 TO PARIS


1月5日の『私が殺したリー・モーガン』以来
なんと今年2本目の映画。
2ヶ月以上も映画を観に行かなかったのは、
10年以上ぶりやないやろか。
今年は、なんだかバタバタしてて
行く機会を逃していた。
今日は「観るぞ!」と決めて、2本観賞。

まずは、クリント・イーストウッド監督の
『15時17分、パリ行き』。
アカデミー賞に何もノミネートも
されていないのかと思ったら、
米国でも今年公開の作品だった。

「列車の中でテロが起こる」ぐらいの
予備知識しか持たず、
実際にあった事件だとも知らずに観始めた。
(2015年8月21日 タリス銃乱射事件)

以下、ネタバレ含む。

簡単にまとめると、子供の頃からのアメリカ人
仲良し3人組が、ヨーロッパの旅に出て、
アムステルダム発パリ行きの高速鉄道
タリス内で無差別テロに遭い、銃を持つ
テロリストに素手で立ち向かい、
やっつけて乗客を救った、という話。

ところが、映画が始まっても、
主人公たち(3人)の子供のころからの
エピソードが続き、中々事件が起こらない。
テロが発生するのは、映画が始まってから
1時間以上経ってからだ。(映画は94分。)

そのせいで、この映画の賛否が分かれている。
テロリストと戦うアクション映画を
期待していた人達には、不評のようだ。

私は言いたい。
クリント・イーストウッドでっせ。
今年、88歳やで。
この数年、彼が撮ってきた映画を考えれば、
そんなただの娯楽映画的なハラハラドキドキの
アクション映画を作るわけがない。

「面白くなかった」というレビューを
書いている人は、残念ながら、
悲しいほど、この映画のポイントを
見落としているように思える。

3人は子供の頃、たびたび校長室に
呼び出されるようないわば問題児だった。
3人組の一人、スペンサーは軍隊に入るが、
自分の行きたかった部隊には入れなかった。
いわば落ちこぼれだ。
しかし、気が進まないままに配属された先で、
訓練され身に付けたことが、見事に
テロリストとの戦いと負傷した人の救助に
役立つという伏線になっている。
また、バカと言われるほど、
勇敢で正義感が強かったことも
描かれている。
子供の頃、問題児であろうと、
どこかで希望の道に進めなくても、
何一つ無駄なことはないのだと
教えてくれているようなストーリーだ。

この前半があってこそ、彼らがテロと
戦ったことが意味を持つのだと思う。
そうでなければ、ホントに
ただのアクション映画として、
列車の中の出来事だけを描けばよい。

後半、事件解決後、
フランソワ・オランド大統領が登場し、
彼らに勲章を授けるシーンあたりで、
やっと(これ、もしかしたら実話?)と気付いた。
最初に「Based on a True Story」と
出たのを見逃したのかもしれない。

それでも、オランド大統領は
そっくりさんだと思っていた。
そのあと、最後に3人が地元をパレードする
ニュース映像が流れる。
そこに映るご本人たちを観て、
(またえらい よう似た役者、探してきたなぁ)と
思ったら、なんと!
3人とも、ご本人がご本人役を演じていたのだ!

よう、そんなんで映画撮ったなぁ、
クリント・イーストウッド。
こんな映画は、前代未聞やで。
でも、この3人がとても素人とは、
思えない演技なのだ。
スゴイよ。

テロリストは、300 発近くの弾丸と
たくさんの銃を持っていたらしく、
もしかしたら、彼らがいなかったら、
大惨事になっていたかもしれない。

どういうわけか、エンドロールで、
意味の分からない涙が止まらなかったよ。


★★★★★




シェイプ・オブ・ウォーター
THE SHAPE OF WATER


2本目は、アカデミー賞 作品賞、
監督賞(ギレルモ・デル・トロ)、作曲賞、
美術賞の4部門で受賞。
主演女優賞(サリー・ホーキンス)、
助演男優賞(リチャード・ジェンキンス)、
助演女優賞(オクタヴィア・スペンサー)、
脚本賞、撮影賞、編集賞、衣装デザイン賞、
録音賞、音響編集賞、とノミネートは9部門。

そんな話題作で期待したけど、
ちょっと、これは私にはハマらなかった。
こういうの好きな人は、
大好きなんでしょうけどね。

アマゾンの半魚人と人間の女性の
ラヴ・ストーリー。
完全にファンタジー。
しかも大人の。
セックスシーンにボカシが入って、
R15+ 指定なのだけど、
性的な描写をなしに子供でも観られるように
作ってしまうと、これはディズニー映画に
なってしまうわな。

以下、ネタバレ。
ファンタジーやから、突っ込んだら
あかんのやろうけど、陸の生活が続き、
衰弱した半魚人が、海に帰ろうとしたところで、
ピストルで撃たれる。
死んだのかと思ったら、立ち上がり、
手を当てるとみるみるピストルに
撃たれた傷が治ってしまう。
そんな力残ってるんやったら、
なんで、あんなにウロコがボロボロ
剥がれるほど衰弱しててん、と
突っ込みたくなった。

でも、半魚人は(特に顔)上手く
出来てたし、半魚人に恋をする主人公が、
どんどん艶っぽくなっていく様は、
良かったよ。
後半のミュージカル展開は、
唐突に感じたけど。


★★★★☆





2018.3.13

しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス
MAUDIE


モード・ルイスというカナダの実在した
画家のことを描いた映画、
『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』

主役 モード役にサリー・ホーキンス。
昨日観た『シェイプ・オブ・ウォーター』でも
主役を演じており、アカデミー書主演女優賞に
ノミネートされていた、サリー・ホーキンスだ。

まさか、同じ女優の主演作を2日続けて
観るとは思っておらず、映画が始まっても
すぐにはサリーだとは気が付かなかった。
それは、この映画は数か月前に予告編を
観た時に、観ようと決めていて、
出演者を気にしていなかったこともあるし、
サリーのことをよく知らないということもあるが、
彼女の演じるモードが、
『シェイプ・オブ・ウォーター』のイライザとは
あまりにも違うキャラクターだったと
いうことも大きい。

始まって、数分してから、
(あれ?この人、昨日の人?)と思ったが、
それでも、自信を持てなかったほど、
別人を演じていた。

そして、モードの夫エベレット役に
イーサン・ホーク。
いいねぇ、イーサン。

美しい映像、
美しい音楽、
美しい物語、
それに良い役者が揃えば、
良い映画なのだな。

予告編だけで、良い映画を十分に
感じさせてくれていたが、観ても正解。
私としては、本作が主演男優賞、
主演女優賞ものだった。
アカデミー賞にはノミネートされていないけど、
あちらこちらの映画祭で観客賞を
受賞している。

音楽も良かった。
昨日観た『シェイプ・オブ・ウォーター』は、
作曲賞も受賞しているけど、
あんまり音楽が印象にない。
比べる必要はないねんけど。

さて、ストーリー。
孤児院で育った無骨な男エベレットが
家政婦を募集する。
その募集を知ったのが、
子供の頃からリュウマチを患い、
手足が不自由で、家族からも
厄介者扱いされてきたモード。
最初は、モードに冷たく当たる
エベレットだが、徐々に2人の関係は
変わっていき、やがて結婚する。
このエベレットの変化が良い。

モードが趣味で描いていた絵が売れ始め、
話題になり、テレビにも出演し、
ニクソン大統領からも注文が来るほどになる。
エベレットは、絵を描くモードを
支え続けるのだ。
この2人の暮らしが、何ということは
ないのだけど、心に沁みる。
2人の関係の変化が、細かいところに
表現されていて素晴らしい。

劇中のセリフにもあるが、
モードの絵は子供でも描けそうだ。
だが、描けない。
ましてや、大人はこんな絵は描けない。

彼女は、絵を売ろうとか思っていなかった。
ただ、描きたいものだけを描きたいように
描いていた。
その才能を見抜く人が現れるのだな。

彼女は、1970年に67歳で亡くなった。
現在では、彼女の絵は 500万円の値が付くという。
それはそれで、複雑な心持になる。
だって、2人はガスも水道も来ていない
小屋で質素に暮らし続けたんだもの。
別に派手に暮らす必要はないけどね。

モードの絵







プリントだけど、部屋に飾りたくて
1枚買いました。(A4サイズぐらい)




★★★★★





2018.3.19

blank13

『Cu-Bop across the border』という
キューバの音楽ドキュメンタリーが
観たかったのだが、 21:05 からの
上映だったので、何かもう1本、
時間的にうまい具合に観られないかと
調べてみると『blank13』という映画が
ちょうど良い。

本作のことは、知らなかったのだけど、
俳優の斎藤工が「齊藤工」名義で
初めて長編監督を務めた作品。
斎藤工が長男役、次男役に高橋一生、
父親役にリリー・フランキー、
母親役に神野三鈴。

どうしようもないダメ親父が借金を作り、
ふらっと失踪し、13年ぶりに居場所が
分かった時には、末期癌で余命3か月と
いう状態だった。
タイトルの「blank13」は、空白の
13年間を指す。

以下、ネタバレ含む。

ダメ親父のせいで、大変な苦労をした
母親を見てきた長男ヨシユキは、
父親を許すことが出来ず、
見舞いにもいかない。

次男のコウジもダメ親父のことは、
嫌いだったはずだが、父親との楽しい
思い出もあったコウジは、病院を訪ねる。
しかし、何も変わっていない父に幻滅する。

数カ月後、葬式に訪れたのは、
この数年間、ダメ親父が付き合っていた
一風変わった人達が数人のみ。

その人達の父の思い出話を聴き、
ヨシユキとコウジは、自分の知らない
父親を知ることになる。

葬式会場の隣の大きなお寺では、
奇しくも同じ苗字の人の葬式が
営まれており、大勢の人たちが
参列している。
ダメ親父の葬式には、ほんの数人。
葬式に参列する人の数が、
まるでその人の人生の価値のような、
始まり方をするが、映画を観終えると
そうではないことに気づく。

家族を捨てた、ダメ親父の気持ち、
喪服を着ても、葬式に参列しなかった
妻の気持ち、喪主の挨拶を途中で
投げ出さなければならなかった、
長男の気持ち。
最後に親父に小遣いをもらった、
次男の気持ち。
それら一つ一つ、どの人生も重く切なく、
そして儚いのだと考えさせられた。

音楽は、金子ノブアキ(映画にも出演)。
エンドロールに流れる 笹川美和 の歌う
『家族の風景』が良い。
この曲、ハナレグミ(永積タカシ)の曲で、
数ヶ月前にカー・ラジオから流れてきて
知ったのだけど、とても良い曲です。
ジーンときます。

斎藤工のことはよく知らないけど、
最近ではインディードの CM の印象が強い。
本作を見ての感想は、監督として
今後も楽しみと思った。
70分の短い作品だったが、短いとは
感じさせられず、言いたいことは、
十分伝わってきたという体験が残り好印象だ。
また、シリアスとコミカルのバランスも良い。

本作は、放送作家・はしもとこうじ氏の
実話を基にしているとのこと。

それにしても、リリー・フランキーの
ダメ親父ぶりは素晴らしい。
変な褒め方やけど。
『幼な子われらに生まれ』での
宮藤官九郎のダメ親父も良かったけど、
甲乙つけがたいダメっぷり。


★★★★▲


blank13




Cu-Bop across the border

昨日のオマーラ・ポルトゥオンドに
続き、今日も キューバ です。
日本・キューバ合作 音楽ドキュメンタリー映画
『Cu-Bop across the border』を観てきた。
明日のオマーラの EX THEATER での
公演は、この映画の公開記念コンサートという
位置づけのようだ。

この映画は、2015年に公開された
『Cu-bop CUBA〜New York music documentary』
に再撮影と再編集を施した新作ということだが、
そちらの方は、私は観ていなかった。
その2015年版は、高橋慎一監督が、
自主製作で大変な苦労をされ撮影したらしいが、
音楽ドキュメンタリーとしては、
異例のロングラン上映となったらしい。
その作品を観た、プロの映画関係者や
色んな人たちが、これは商業作品として
完成させるべきだと、高橋監督に進言したらしく、
それで、世界公開版を作ることになったと、
今日の上映後、挨拶に登場した高橋監督が
言っていた。

私は、音楽ドキュメンタリーを観ると、
とても観たいのに強烈な睡魔が訪れるという
変な癖があって、今日も映画が始まってすぐに
眠気が襲ってきたのだが、本作は、
3月18日から23日の6日間、
1日1回しか上映されない。
今日観ておかないと、もう一度、
観ることはできないかも知れないので、
必死で起きて観たよ。

アメリカに奴隷で連れてこられた黒人たちは、
ドラムを禁じられた。
そのおかげで、タップダンスが生まれたと、
ちょうど昨夜観た『情熱大陸』が、
タップダンサー熊谷和徳の特集で、
知ったところだったが、キューバに連れて
来られた黒人たちは、ドラムを禁止されなかった。
だから、アメリカ本土とは違う文化(音楽)の
発展の仕方をした。
というような、興味深い話から始まった。

キューバの音楽と聞くとラテン音楽の
ドキュメンタリーかと想像したが、
本作は JAZZ にスポットを当ていた。
タイトルの「Cu-Bop」は、
キューバのリズムとバップが結びついた言葉で、
1940年代の Dizzy Gillespie らの
ラテン・ジャズを指すが、
ただラテンのリズムだけをジャズに
取り入れたものとは一線を画するようだ。

映画は、キューバからアメリカに亡命した
ピアニスト、Axel Tosca(アクセル・トスカ)と
キューバに残り活動を続ける、キューバの
ナンバーワン・サックス奏者、
Cesar Lopez(セサル・ロペス)の
共演まで実現させる。

本作が撮影されたのは、まだアメリカと
キューバが国交を再開する以前で、
アメリカに亡命したアクセルを
キューバに入国させるのは、違法なルートで
しかも成功するかどうか五分五分の
賭けであったようだ。

そんな、キューバ愛と情熱一杯の映画だ。
高橋監督の想いのいっぱい詰まった
パンフレットは、劇中に収録されたライヴの
CD と 未公開シーンの DVD まで付いて、
2,800円というので、思わず買いました。
A4 サイズ 28ページで、、『Cu-Bop』完成秘話、
セサル・ロペス、アクセル・トスカへの
最新インタビューなどが収められている。
特に監督の完成秘話、ホントよく撮ったね。

映画の中で、素晴らしい "Moon River" を
ピアニストが自宅らしきところで弾く。
その人が、ロランド・ルナ。
昨日のオマーラ・ポルトゥオンドの
ライヴで当初予定されていたピアニスト。
明日の EX THEATER での公演には、
参加するらしいが、あの "Moon River" を
聴かされると、やっぱり聴きたかったなと思ったね。
昨日書いた通り、奥山勝さんも素晴らしかったけど。

2013年の Buena Vista Social Club は、
ピアノが ロランド・ルナ だったのだけど、
14名のバンドだったし、注意していなかったので
印象に残っていない。

ラテンだからか、彼らミュージシャンの苦悩は
深刻には描かれておらず、実際は色々もっと
大変なことがあったんだろうと 想像した。
映画は、演奏シーンが多く、
秋のキューバ旅行では、ぜひ、現地の
ジャズクラブに足を運びたいと思ったのでした。

それまでにキューバの歴史や文化について、
もっと勉強しなければ。


★★★★☆


[参考記事]
傑作音楽ドキュメンタリー映画の新作『 Cu-Bop across the border 』
2018年3月、東京から全国上映決定! 公開記念コンサートも開催決定!!






2018.3.22

スリー・ビルボード
THREE BILLBOARDS OUTSIDE EBBING, MISSOURI


フランシス・マクドーマンドが、
アカデミー賞主演女優賞を
サム・ロックウェルが、
助演男優賞を受賞。
作品賞、助演男優賞(ウディ・ハレルソン)、
脚本賞、編集賞、作曲賞でノミネートされていた
映画『スリー・ビルボード』。

フランシス・マクドーマンドは、
アカデミー賞の授賞式の後、
オスカー像を失くすというお騒がせ事件が
あったところを見ると、
結構、おっちょこちょいなのかもね。
私には、同じく主演女優賞を受賞した
『ファーゴ』の印象が強かったが、
本作でその印象は、上書きされた。

助演男優賞のサム・ロックウェルは、
『グリーンマイル』でどうしようもない
イヤな囚人を演じていた人。
助演男優賞受賞は、納得の演技。

さて本作、アカデミー賞作品賞は
逃したけれど、私は作品賞を獲った
『シェイプ・オブ・ウォーター』より好き。

ミズーリ州のエビング(架空の町らしい)という
田舎町で、娘をレイプされ殺された母親
(ミルドレッド)が、7ヶ月たっても犯人が
捕まらないことに業を煮やし、警察署長を
批判する3枚の看板(ビルボード)を設置する。
看板の設置に反対する人々から脅されても、
ミルドレッドはけっして屈しない。
看板をめぐって、次々と事件が起こる。

以下、ネタバレ含む。

映画の前半では、ミルドレッドと対立する、
警察署長が「ワル」なのかと思うが、
そんなことはない。
この警察署長は、めちゃくちゃええ人なのだ。

しかし、物語はハッピーエンドでもなく、
救いがあるのかないのか、分からないような
解決感のないエンディングで終る。

ミルドレッドの最後の選択が、
正義なのかどうかも私には分からない。

感じたのは、ミルドレッドの何をも恐れぬ強さ。
頑固さと言ってもいい。

救いを見るとしたら、サム・ロックウェル演じる
警察官ディクソンの変化だろうか。
ディクソンは、こんな警察官がいるのかと
思うような(アメリカにはいてそう)
クソみたいな警察官。
でも、あることをきっかけに彼は変わる。

ミルドレッドもディクソンも
悪人ではないのに、結果的に悪事を
働くというあたりが、人間の弱さ、
暗なのだと思う。

「『マンチェスター・バイ・ザ・シー』と
共通する視点を持っている」と
書いている人がいたが、そんな風にも思える。
その人は「悲劇と喜劇、悲哀と笑いが
常に背中合わせで、いつどちらの顔を
見せるのかわからないという点で」と
書いていたけど、私には、
人間のどうしようもないダークサイドを
扱っているという点において。

人種差別や偏見など、いつまでも
なくならないアメリカの問題も
まるで当たり前のように描かれおり、
ことの根深さも感じる。


★★★★▲


JAZZ GUITAR BLOG の
この映画に関するエントリーが
興味深いことを書いていたので、
合わせてリンクをしておくので
興味のある方は、読んでみてください。

映画「スリー・ビルボード」を観て

その起源が明白でない不幸に悩まされる人々





2018.4.22

ダンガル きっと、つよくなる
DANGAL


インド映画史上 世界興行収入 No.1 という
『ダンガル きっと、つよくなる』。
2016年の作品。

タイトルの「ダンガル」は人名かと思いきや、
ヒンディー語で「レスリング」の意味。
家庭の事情で金メダルを目指すことを諦めた
国内チャンピオンが、息子に夢を託そうと
するが生まれるのは、女の子ばかり(4人)。

ある日、男の子とのケンカに勝った
娘二人を見て、彼女たちに無理やり
レスリングのトレーニングを始める。
最初は、嫌々だった娘二人は、
あるきっかけで、自ら本気で取り組むようになり、
最後には、国際大会で金メダルを
獲ったという実話に基づいた物語。

主役の父親役に『きっと、うまくいく』
『PK ピーケイ』などのアーミル・カーン。
この人、年齢が分からない。
本作でもかなり若い年齢から、
老けた年までを演じているが、
いずれのシーンにも違和感がない。
調べてみると、1965年生まれの53歳。
『きっと、うまくいく』出演時には、
なんと44歳で大学生役を演じていたのだ。
そして、本作では最初に もの凄い筋肉で
引き締まった身体を見せたが、
年を取ったシーンでは、デブッと太っている。
これは、役作りのために実際に27キロ
太ったのだという。

レスリングの試合シーンはかなりリアルで、
最後には、勝つことが分かっていても
手に汗握る展開で熱くなれる。
少女期、青年期の姉妹役を演じる、
4人はオーディションで選ばれたらしいが、
レスリングの試合シーンは、
全て本当に演じているとのこと。
その辺もこの作品のパワーになっているんだろうな。

前半では、自分の夢を子供に押し付ける、
わがままな親父のようにも見えるのだが、
実は深い大きな目的が隠されている。
そこが、また感動のポイントでもある。

女性の地位が低いインドでは、
彼女たちの活躍が少女たちの大きな
希望と勇気の源になったのだな。

父と娘の絆・愛を描いた、
久々の感動スポ根映画。


★★★★★


冒頭に本人たち以外の登場人物は、
フィクションです、みたいな文章が出る。
国家チームのコーチがひどい人物に
描かれており、その立場だった人は、
いくらフィクションと言われても、
実際にあった大会なのだから、
イヤだろうなと思っていたら、
やはり、「事実に反している」と
抗議の声を上げたらしい。
結末は、どうなったのか分からないけど、
それも話題作りに貢献したと、
オフィシャルサイトには書かれている。





2018.4.28

イタリア映画祭 2018
『世情』(仮題)
La tenerezza


毎年、この時期に開催されている
イタリア映画祭。
今日が初日で、5月5日まで
14本の初公開作品と、5本のアンコール
上映作品が上映される。

今年で18回目ということだが、
私は 2013年にこのフェスを知ってから、
毎年 数本は観に行っている。

今日の上映は、昼間から始まっていたが、
18時から開会式が行われた。
それに続いて上映される作品のチケットを
取っていたので、開会式も観た。
関係者の挨拶のあと、
イタリアから来日中の監督、プロデューサー、
女優が登壇し挨拶。
空席が目立ち、満席でないのがなんとも残念。



映画は、本年度、ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞
(イタリアのアカデミー賞)で作品賞他8部門に
ノミネートされているという『世情』。
(仮題)とあるのは、本公開時(今冬公開予定)に、
タイトルが変わるかもしれないということだろうか。
8部門にノミネートということで、
期待も膨らんだが、私にはちょっと難しかった。

舞台はナポリ。
元弁護士の一人暮らしの老人の隣家に
4人家族が越してくる。
夫婦と小さな子供2人。
老人と家族は、仲良くなっていくが、
老人は自分の娘とは不仲だ。
その不仲のわけは、後半になって明かされていく

解説文には、「父と不仲になった娘が、
父の隣家の家族に起こった予期せぬ事件を
きっかけに、その関係を見つめなおす
ことになるヒューマンドラマ」とある。

映画では、娘が関係を見つめ直すのではなく、
父親の方が、態度を変えるように見えた。
なぜ、老人が考えを変えたのかが、
私には分からなかった。
隣人の死に何か思うところが
あったのだろうが、
その辺が、語られていない。
観客の想像力に委ねられているのだろうが、
残念ながら私の想像力の欠如か。




★★★▲☆


イタリア映画祭 オフィシャルサイト





2018.5.1

ラスト・ワルツ
THE LAST WALTZ


今から30年ほど前、1987〜88年ごろだったと思う、
何かの用で東京に来る機会があった。
ちょうどその時、東京のとある映画館で、
『ラスト・ワルツ』を上映しているのを
情報誌か何かで知った。
覚えていないけど、大阪では観られない
何かがないかと探したのかも知れない。
どこの映画館だったかも覚えていないけど、
一人で観に行った覚えがある。

1976年、サンフランシスコで ザ・バンド が
豪華ゲストを招いて、解散コンサートを行った。
『ラスト・ワルツ』は、そのコンサートを収めた
ドキュメンタリー映画。
監督は、マーティン・スコセッシで、
公開は 1978年だが、撮影された1976年は、
『タクシー・ドライバー』が公開された年だ。

出演は、ザ・バンドのほか、ボブ・ディラン、
エリック・クラプトン、ニール・ヤング、
ジョニ・ミッチェル、ヴァン・モリソン、
ニール・ダイヤモンド、リンゴ・スター、ロン・ウッド、
ドクター・ジョン、ポール・バターフィールド、
ロニー・ホーキンス、マディ・ウォーターズ 等。

その『ラスト・ワルツ』が、
デジタル・リマスターされ
公開40周年記念上映ということで
公開されているので、観てきた。
30年ぶりの鑑賞だ。

「最大音量上映」とわざわざ謳っているので、
どんな音やろと楽しみにしていたが、
特に音がデカいとは思わなかった。

実は、先週も本作を観に行った。
私には「音楽ドキュメンタリー映画は寝る」と
いうジンクスがあるのだが、見事に
始まって10分ほどで、強烈な睡魔とともに
気絶し、気が付いたら40分ほど過ぎていた。

後半は、しっかり観たのだけど、
どうしてもちゃんと観ておきたくて、
今日もう一度、観に行って生きたのだ。
まあ、DVD が出てるので観ようと思えば
いつでも観られるのだけど、
映画館で、大音量で観るということに
意味があるので、こうなると、
絶対もう一度観てやる と、
半ば意地になっているような面もあるけど。

そういうわけで、今日はしっかり
目を開けて観たよ。

ウィキペディアには、「映画とサウンドトラックは
過剰なオーバーダビングが施されている」という
記述があるが、「ライヴビデオ」ではなく
「映画」なのでそういうこともありえるだろう。
確かにあんなマイクの使い方で、
よく声がちゃんと入っているなぁと思う場面はあった。
でも、そういうことを差し引いても、
今から42年も前のライヴが、リマスターされ、
クリアな映像と音で観られるのは、
素晴らしいことだ。
しかも、この豪華メンバーで。

ちょっとワイルドな リック・ダンコ(B&Vo)が
ロビー・ロバートソン(Gt)よりもカッコいい。
ジョニ・ミッチェルを見つめる視線は、
ちょっとヤバいけど。
後半に登場するエリック・クラプトンが、
これまたカッコいい。
この時、31歳かな。
"Further On Up The Road" の出だし、
1コーラス弾いた後、ストラップが外れ、
ヒヤッとするが、何ごともないかのように
ロビーがソロを引き継ぐ。
エリックのギター・ソロは圧巻で、
観客の盛り上がりも凄い。

ボブ・ディランが、"Forever Young" と
"Baby Let Me Follow You Down" を
2曲続けて歌うのだが、"Forever Young" の
終わりで、ディランがロビーに何か
耳打ちする。
エンディングが、ちょっと怪しい感じになり、
リヴォン・ヘルム(Dr)が不安そうに
ディランを見つめる。
すると、ディランが "Baby Let Me Follow
You Down" のイントロを弾き出し、
バンドが合わせてくるというシーンがあった。
打合せと違う何かが起こったのかと
思ったが、ウィキペディアによると
これはノッテてきたディランが
予定になかった "Baby Let Me Follow
You Down" を始めてしまったらしい。
なるほど、それでリヴォンのあの表情の
意味が分かった。

演奏以外にもこの時代の楽器を観るのも
興味深い(リックは、Gibson の
リッパ―ベースだ!)し、
インタビューでは、ザ・バンドのメンバーが
お金がなかった頃、スーパーで
万引きしたというちょっとヤバいエピソードや
ガース・ハドソン(Key)が当初、
音楽の先生という名目でバンドに
参加していたなど、貴重な話も満載。

それにしても、この時、ザ・バンドのメンバーは
全員30歳代(一番老けてる ガース・ハドソン でも
39歳)だし、前述のようにエリックも31歳。
出演者のほとんど、たぶんマディ・ウォーターズ
意外は、全員今の私より年下なのに
若者の演奏を聴いている風にはならないのが
不思議だなぁ。


The Band LAST WALTZ


★★★★★


30年前に『ラスト・ワルツ』を観た当時、
やっていたバンドのリーダーTさんが、
ザ・バンド が好きだった。
(その影響で観に行った。)
なので当時のレパートリーには、
ザ・バンドの "The Weight",
"I Shall Be Released",
"It Makes No Difference" なども含まれていた。
改めて、どれもええ曲ですな。
Tさんが作った、リチャード・マニュエル
(1986年没)を追悼した『リチャード』という
オリジナル曲は、名曲だったなぁ。





2018.5.11

GWの旅行中、
雨のため宿から外出しなかったのと
夜中に目が覚めてしまったので、
iPad で映画を3本観た。

本来、映画は映画館で観るものと
思っているのだけど、
映画館で観損なった作品や古い作品などは、
ビデオで観るしかない。

アマゾン・プライムというサービスは、
とても安価(月額400円)で便利だ。
映画やテレビ番組が見放題。
スゴイ時代になったもんだと思う。
映画の数は、限られているけどね。
新しく買った55インチのテレビでも
観られるようにしたので、
気になっていた作品を
これから色々観てみようと思う。

このたび観た3本の感想を書いておこう。




セトウツミ


2016年公開。
原作は、漫画らしいが読んだことはない。
ほとんどが、高校生男子2人が
川辺で話すシーン。
タイトルの「セトウツミ」は、
その高校生、瀬戸(菅田将暉)と
内海(池松壮亮)のことだな。

2人とも良い。
ゆるいストーリーで、これまた何とも良い。
菅田の大阪弁は上手いなと思っていたら、
大阪出身だったわ。
やはり、大阪弁ならではの空気感が
この作品には重要やろうな。
「おかん」というだけで、
「お母さん」「ママ」「母」と
いった言葉と違うニュアンスが含まれる。

2人の性格、育ちの対比や
微妙な友情、相手を思う心もなど、
ただコミカルなだけではない部分も
描かれている。
私もなんとなく、こういうダラダラした
青春時代を送ったように思う。
青春は儚いが、2人はずっと良い友人に
なれたんだとしたら、嬉しいな。

75分と短いが面白かった。


★★★★☆




横道世之介


2013年公開。
原作は、吉田修一の小説。
フィクションだが、主人公の横道世之介は、
2001年の JR新大久保駅での乗客転落事故で
ホームに落ちた男性を助けようとして
亡くなった日本人カメラマンという設定に
なっている。

長崎から上京してきた大学生、
横道世之介役に高良健吾。
その友人役に池松壮亮、綾野剛。
横道のガールフレンドに吉高由里子。

これも青春映画。
高良健吾、吉高由里子が好演です。

世之介が上京した80年代後半と、
その16年後が描かれているのだが、
16年後には、世之介はいない。
彼を思い出す友人達の記憶から、
世之介のユニークなキャラクターと
その思い出が消えることはない。
切ないよ。

世之介の母(余貴美子)の言葉が泣ける。
原作も読んでみたいな。


★★★★▲




箱入り息子の恋


2013年公開。
主演は、星野源(映画初主演)と夏帆。

真面目だけが取り柄のような
市役所務めの健太郎(星野源)35歳。
女性と付き合ったこともなく、
友達もいない。
両親(平泉成・森山良子)は、
息子の将来が心配でしょうがない。

そんな健太郎が目の不自由な
奈穂子(夏帆)に恋をする。
奈穂子の父(大杉漣)は、2人の付き合いを
大反対するが、奈穂子の母(黒木瞳)の
理解と応援で2人は付き合い始めるのだが・・・。

一応、ラヴコメということなんでしょうが、
あんな行動力のある健太郎なら、
普通に恋も出来たんじゃないかなと思った。
それとも、35歳で毎日家に昼飯を
食べに帰るような男でも、
恋をするとあんな風に変われると
いうことなんだろうか。

面白い部分もあったけど、
全体的には、共感しかねる部分も多かった。
ま、コメディでファンタジーなんでしょから、
そんな風に観なくても良いんでしょうけど。

奈穂子役の夏帆が、きれいな人だと思ったら、
『海街diary』の姉妹役の三女の人だった。
全く気が付かず。
違う人のようでビックリでした。


★★★▲☆





2018.5.19

ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書
THE POST


監督 スティーヴン・スピルバーグ、
主演 メリル・ストリープ & トム・ハンクス
という超強力な布陣による映画
『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』。
3月30日公開だったので、もうそろそろ
終わりそうなのだがやっと観てきた。

アカデミー賞の受賞は逃したが、
作品賞と主演女優賞(メリル・ストリープ)
でノミネートされていた。

原題の「THE POST」は、
映画の舞台となる、米国の新聞社
ワシントン・ポストのことだろう。
中学時代、吹奏楽部でたくさんの
マーチ(行進曲)を演奏したが、
その中にスーザ作曲の『ワシントン・ポスト』
という曲があった。
音楽に詳しくない人でも、
聞けば知っているような有名なマーチだ。
そのせいか、本作を観るまで、
私はワシントン・ポストは、
米国の全国紙のように思い込んでいたが、
映画(1971年が舞台)では、
ワシントンの地方紙として描かれていた。
米国では、全国紙より地方紙の方が、
好まれているらしい。
現在は、全国紙のひとつのように
書いているサイトもあったので、
詳しくはよく分からないけど。

さて、本作、ベトナム戦争中だった1971年、
政府の極秘文書 “ペンタゴン文書” を
入手したワシントン・ポスト紙が、
新聞に掲載するかどうかの瀬戸際の物語。
その文書には、政府が、ベトナム戦争に
勝ち目のないことを知りながら、
長年兵士を戦場に送り込んできたことが、
書かれていたのだ。
掲載すると、関係者は投獄され、
新聞社はつぶされる可能性もある。
しかし、報道の自由を守れるのは、
報道しかない。
自分たちが、掲載を取りやめれば、
それは権力に屈したことになる。
さて、どうするか。

最終決定者は、社主である
キャサリン(メリル・ストリープ)の
決断に委ねられている。
編集主幹のベン・ブラッドリー
(トム・ハンクス)は、絶対やるべきだと
主張するが、会社の役員たちは、及び腰だ。

結局、掲載し裁判になるのだが、
裁判でも勝ち、報道の自由は守られたのだ。

映画の見所は、キャサリンの勇気と
チーム・ワークだろう。
記事を出すということは、
キャサリンにとっては、長年の友人
ロバート・マクナマラ国防長官
(ブルース・グリーンウッド)を
糾弾することにもなる。
それでも個人的な感情に流されず、
会社を失うかもしれなくても、
投獄されるかもしれなくても、
報道の信念を貫いたのだ。
かっこいい!

司法は、その信念に応えた。
ここが、アメリカという国の、
あるいは、民主主義の素晴らしさだろう。
どこかのお国なら、問答無用で
投獄されるよね。

また、アメリカでも女性が軽視されていた
時代でもあった上に、キャサリンが
イマイチ頼りない面があった。
そのキャサリンの勇気ある決断は、
多くの女性の力になったのだろう。
裁判所から出てくるキャサリンを
見つめる女性たちの憧れと尊敬の
眼差しがそれを物語っていると思う。

そのちょっと頼りないけど、芯のある女性
キャサリンをメリル・ストリープが
好演している。
主演女優賞ノミネートも納得。

映画は、ウォーターゲート事件の
始まりを示唆して終わる。
ウォーターゲート事件でも
ワシントン・ポストは活躍するのだね。


★★★★▲




モリのいる場所

映画『モリのいる場所』。
山崎努、樹木希林 主演(初共演らしい)、
監督は、沖田修一。

沖田監督の作品は、
数本しか見ていないけど、結構好き。
『南極料理人』『キツツキと雨』
『横道世之介』『滝を見にいく』
と、それぞれ面白くて、
なんとなくほのぼのしているという印象。

今日が初日だったからか、
シネスイッチ銀座の 17:00 からの
上映は、ほとんど満席のようだった。
お客さんの平均年齢は、
かなり高目だったよ。

12:20の回、14:40の回は、上映前に
沖田監督、山崎努、樹木希林、池谷のぶえの
舞台挨拶があったようだ。
ちょっと惜しかったな。

さて、本作、実在した熊谷守一という
画家の94歳の時のある一日を描いている。
映画を観ていると数日間に渡っての
物語のように感じたけど、ラストシーン以外は、
一日だということだろう。

熊谷守一(通称:モリ)(山崎努)は、
30年間家の敷地から出たことがなく、
毎日、庭の植物や昆虫、鳥、池の魚などを
ず〜っと観察する毎日を送っている。
その日は、信州から旅館の看板の題字を
モリに書いてもらおうとする男や、
モリを撮影するカメラマン、
近所の人たち、近くに建設中のマンションの
関係者など、色んな人が訪れる。
中には、何者か分からない者も。

色んなエピソードを通して、
モリという画家、その妻(樹木希林)の
人となり、そして夫婦関係を描いていく。
ちょっとコメディあり、ファンタジーありで、
楽しい映画だった。
山崎努も樹木希林も素晴らしい。

モリは、かなり変わった人なのだけど、
皆、モリに惹かれている。

私は、この映画のことを知るまで、
熊谷守一という画家を知らなかったのだけど、
ググってみて、いくつかの作品を見て、
映画を観る気になった。
絵を気に入ったのだ。
作品は、とてもシンプル。

映画の冒頭、昭和天皇が、
モリが書いた餅の絵を観て、
「この絵は、何歳の子供が書いたのですか?」
と訊くシーンがある。
これは、実際にあったことらしい。
また、「そんなものもらったら
人がたくさん来て困る」という理由で
文化勲章を断るシーンがあるが、
これも本当のようだ。

一日中庭の中の昆虫などを観察し続けたモリは、
蟻が左の二番目の足から歩き出すことを発見する。
映画では何度も蟻が映し出されるが、
動きが速すぎて、とてもじゃないが
そんなことは見えない。
でも、それが見えるぐらい、
一つの物を何時間も観察したのだろう。
観察し続けることによって、
余計なものは全てそぎ落とされ、
その物の本質だけが残った。
その結果が、あのシンプルな絵なのだと思う。
その物の本質を観る、という面では
写真家の土門拳に通じるものを感じたけど、
どうだろう。

モリは、1977年に97歳で亡くなっている。

今の私には、情報と欲望が多すぎる。
一つのことにもっと時間をかけても
良いんじゃないかと省みさせられた映画だった。

1985年に豊島区の舞台になったモリの自宅を
娘さんが私設美術館として建替えられた。
現在では、豊島区立 熊谷守一美術館 と
なっている。
近いうちに行ってみたい。


★★★★☆


熊谷守一の作品








昭和天皇が子供が書いたと思われた「伸餅」





2018.5.21

『万引き家族』
カンヌ映画祭 パルムドール受賞


カンヌ国際映画祭で、是枝裕和監督の
『万引き家族』が最高賞のパルムドールを受賞した。

日本人のパルムドールの受賞は、21年ぶりで、
1946年にカンヌ国際映画祭始まって以来、
5作目(4人目)となる。

[日本人の受賞]
1954年 『地獄門』 衣笠貞之助
1980年 『影武者』 黒澤明
1983年 『楢山節考』 今村昌平
1997年 『うなぎ』 今村昌平
2018年 『万引き家族』 是枝裕和

いやぁ〜スゴイなぁ。
って、たぶん私は
どれくらいスゴイか分かってないと思うけど。

是枝監督の作品は、全部ではないけど、
この数年は大体観ている。
観たことさえ忘れる映画が多い中で、
それらは記憶に残る作品たちで、それだけ
訴えてくるものがあるっちゅうことだと思う。

授賞式で監督が語ったスピーチの一部が
印象的だ。

「対立している人と人を、
隔てられている世界と世界を
映画が繋ぐ力をもつのではないかという
希望を感じます。」

大きなビジョンの仕事に、
人は感動するのだと思う。

『万引き家族』も公開が楽しみ。
予告編観ると、ちょっとヘビーそうに感じたけど。


[ 是枝監督 関連エントリー ]
2008.11.9 『歩いても 歩いても』
2010.2.11 『空気人形』
2013.10.17 『そして父になる』
2015.7.6 『海街diary』
2016.5.22 『海よりもまだ深く』
2017.9.18 『三度目の殺人』





2018.5.27

グレイテスト・ショーマン
THE GREATEST SHOWMAN


ミュージカルは、あんまり好きではないので
舞台も映画も数えるほどしか観ていない。
好きではないと書いたけど、
正確には、セリフが突然 歌になるのが、
好きではないだけで、例えば昨年観た、
"BEAUTIFUL  The Carole King Musical" は、
楽曲とセリフが区別されており、
本当に素晴らしかった。

さて、2月16日公開だったので、
もう3か月以上のロングラン上映に
なっている『グレイテスト・ショーマン』。
主演は、ヒュー・ジャックマン。

大変評価も高く、珍しくこれは観ようと
思っていて、今までに2回観に行ったのだが、
2回とも観られなかった。
1回目は、観に行く日の2〜3日前に
最終の上映時間をチェックして観に行ったら、
どうやら変更されたらしく、映画館に
着いた時には、すでに上映が始まっていた。
2回目は、昨日。
1日1回の上映となった渋谷の映画館で、
なんと売切れ。
こうなると私のパターンでは、
何が何でも観ないと気が済まなくなる。
ということで、ようやく今日観ることが出来た。

ファンタジーかと思っていたら、
19世紀に実在した興行師、P・T・バーナムの
サクセス・ストーリーだった。

仕立て屋の息子で、貧乏に育ったバーナムは、
良家の娘、チャリティと恋におち、やがて結婚。
幸せな暮らしなのだが、仕事は上手くいかない。
勤めていた貿易会社も船が台風に巻き込まれ、
沈没したせいで解雇。

ここで、彼は沈没した船の登録証を
担保に銀行から金を借りる。
(これ、完全に詐欺やん。)
最初は、蝋人形館みたいな博物館から始まって、
いわゆる見世物小屋的なショーへと発展していく。
そして、紆余曲折があって、
サーカス興行師として成功するという物語。

私が本作を観て、100% 清々しくなれなかったのは、
バーナムが、身体的な問題を抱えていた人々を
見世物(商売の道具)にして豪邸を手に入れた
点だろうか。
(家は後に銀行に取られるけど。)

途中、パーティ会場に彼らを入れないシーンがあり、
バーナムが心底、彼らの解放を見据えて
いたのかどうかに、疑問が生じた。
結局、バーナムは、彼らに受け入れられ、
家族だ、みたいな終わり方をするのだが。

まあ、そのあたりは、デリケートで、
色んな見解のある所だろう。

映画は、そんなわけでやや複雑だったが、
最後に出るメッセージ、
「最も崇高な芸術は、人を幸せにする事だ」
は、いい。

そして、本編終了後に流れる、
メイキング映像が素晴らしい。
私は、本編よりも感動してしまった。
それは、映画製作が決定していない段階での
ワークショップ・セッションの様子。
レティを演じたキアラ・セトルが
主題歌の『THIS IS ME』を歌うのだが、
本編より遥かに感動的。
本編は、もう何度もリハーサルをして、
作り込まれてしまっているからだろうか、
残念ながら、この映像にある「本物感」
「リアリティ」「プレゼンス」には届いていない。
監督が「一生忘れない光景」と言うだけはある。
  ↓
ヒュー・ジャックマンも感涙!
映画『グレイテスト・ショーマン』
「This Is Me」ワークショップセッションの様子


興味があれば見比べてみてください。
  ↓
本編映像+歌詞  'This Is Me'

もちろん、本編を観た後に、あのメイキングを
観たので、感動したということもあると思うけどね。

『THIS IS ME』は、いくつかの賞を
受賞している。
『アナと雪の女王』の『Let It Go』の
ようにヒットしてもいいのにな。
日本語のカヴァーがないのかな。


しかし、アメリカのショービジネスは、奥深いなぁ。
以前、ケビン・スペイシーが、
ボビー・ダーリンを演じたミュージカル、
『Beyond the Sea』を観た時にも
感じたことだけど、これだけの
ミュージカル映画を果たして
日本で作られるだろうか。
演じて、歌って、踊れる、オトナな役者が
いるのだろうか、と思うのだ。
もちろん、いるだろうけどね。
私が知らない(有名でない)だけで。


★★★★☆





2018.6.16

万引き家族

カンヌ国際映画祭で、
パルム・ドール(最高賞)を受賞した、
是枝裕和監督の『万引き家族』。

リリー・フランキー、安藤サクラ、
樹木希林、松岡茉優、城桧吏、
佐々木みゆが家族を演じる。
そのほかに 池松壮亮、柄本明、高良健吾、
池脇千鶴、緒形直人など、出番が少なく
贅沢ともいえる使い方をしている。

樹木希林は、相変らずの怪演。
リリー・フランキーは、
やはりこういう役をやらすとピカイチ。
安藤サクラも良かった。
かなり、良かった。
そして、子役、城桧吏と佐々木みゆの2人。
スゴイね、2人とも。天才。

人間の明と暗、光と影が、ごちゃまぜになった
現代社会を描いている。
特に、法律的な善人が犯す悪と、
法律的な悪人が成す善が対照的で深い。

「絆」って何?
「家族」って何?
「家庭」って何?
「法律」って何?
「お母さん」と呼ばれなければ、
「お父さん」と呼ばれなければ、
親にはなれないの?

答えのない、問いかけを
突きつけられる映画だ。

後半、刑事の口から出る言葉は、
世の中的には「もっともな」ことなのだが、
「なんか違う」と思わざるを得ない。
私も、実は何も知らないのに、
こんな風に一般常識(良識?)という
枠組みから物事を観ているのだと思うと
ちょっと怖い。
そう、ニュースで報道される色々のこと、
実は、本当に何も知らないんだ。

観終えてから、じわじわと
心の中で何かが沸き起こり、渦巻いている。
そして、ちょっと哀しく、切ない。
大人は、自分の責任だし、選択だからいいけど、
あの子供2人が幸せな人生を送れるようにと
切に願わずにはいられない。


★★★★▲





2018.7.9

シェルブールの雨傘
Les Parapluies de Cherbourg


先日、ミシェル・ルグランのライヴを観て
映画『シェルブールの雨傘』を
観なきゃと思った。
便利な時代になったもんで、今では
DVD や Blu-ray を借りなくても、
ストリーミングのレンタルがある。
タブレットを使って、
週末の大阪往復の新幹線の中で観たよ。
Amazon Prime で、400円。

感想。
ストーリー自体は、なんてことのない映画。
「悲恋映画の傑作」ということだが、
私には、そこまでの物語とは思えない。
だって、17歳の娘が、彼氏が2年間の
兵役に行っているのを寂しくて待てず、
彼の子供を身ごもっているにもかかわらず、
金持ちの男に求婚されたら、
結婚してしまうというストーリーだもの。
戦争によって、一時離れ離れになるけど、
彼は生きているし、手紙も来るのに。
「なんだかなぁ」って感じ。

でも、本作が大ヒットしたのは、
喋るセリフが一切なく、全編、歌という
ミュージカルということと、
その音楽の素晴らしさ、そして
若かりし頃のカトリーヌ・ドヌーヴの
美しさだろうな。
残念ながら、カトリーヌ・ドヌーヴは、
金持ちの男と結婚するとなったとたん、
観ていて、かわいくなくなるんだけど。
(これは、男の気持ちでしょう。)

喋るセリフがない完全なミュージカルと
いうのは、この時代(1964年)には、
画期的なことであったようだ。
そしてやはり、音楽は素晴らしい。
主題曲『シェルブールの雨傘』の
切ないメロディ、そして、
繰り返し色んな歌詞で登場する
『Watch What Happens』。

ただ、深刻なシーンでもセリフが歌なので、
ミュージカル好きな人でないと、
ちょっとしんどいかな。
私には、間が抜けたように感じる
シーンもあったし、もともとミュージカル
ファンでもないので、全編歌にする
必然性も分からないです。

カトリーヌ・ドヌーヴにしろ、
他のキャストにしろ、歌っているのは、
本職の歌手らしく、つまりは、
出演者の声は、この映画では聴けない。
はっきりしたメロディがあるような
ないようなシーンも多く、
吹替えの作業は大変だっただろうなと
余計なことを思いながら観た。

あと、色がきれい。
フランス人は、本当に家の壁を
こんな色にしているんだろうか。
日本人の感覚では、ちょっと
落ち着かない気がしないでもないが、
色使いやデザインは、さすがフランスという感じ。
50年以上前の作品なのにこの美しい色合いは、
おそらく、デジタルリマスターなんだろう。

カトリーヌ・ドヌーヴは、
映画の前半では、17歳の役だが、
ちょっと大人っぽくて17歳には見えないな。
実際撮影時は、19〜20歳だっただろう。
エレン・ファーマーという女優も
出演しているが、この人も美しい。

シェルブールは、フランス北西部の港町の名前。

オープニングの傘の映像は、
Saul Leiter を思い出した。


★★★▲☆





2018.7.15

ジュラシック・ワールド/炎の王国
JURASSIC WORLD: FALLEN KINGDOM


映画『ジュラシック・パーク』は、
もう25年も前の映画なのだな。
ちょっとびっくり。

それから、数えてシリーズ5作目となる
『ジュラシック・ワールド/炎の王国』。
年とともにこの手の映画には、
どんどん興味がなくなり、
観るつもりではなかったけど、
時間つぶしに映画館に行ったら、
本作が、ちょうど良い時間だったので、
まあたまにはいいかと観てみることにした。

娯楽映画であるだけでなく、
遺伝子操作生命をもてあそぶ人類への
警告というテーマも十分に伝わってくるのだが、
中盤の火山爆発あたりがピークで、
後半は、ちょっと飽きてしまった。
悪者は恐竜に殺され、
何があっても主人公たちは死なないという
予定調和に もう驚きはなく、
ストーリーは意外性に欠ける。

ただ、恐竜、CGは迫力あります。
その技術の進歩は、本当に素晴らしい。

そして、「続編があります」的な
エンディングを見る限り、
まだまだシリーズは続きそう。


★★★☆☆





2018.7.24

ブリグズビー・ベア
BRIGSBY BEAR


映画『ブリグズビー・ベア』を観てきた。
以下、ネタバレです。

赤ん坊の時に誘拐されて、25年間、
その誘拐犯夫婦に地下シェルターで
育てられたジェームスが、
警察に助け出される。

ジェームスにとっては、最初、
助け出されたという意味も分からないのだが、
本当の両親のもとに戻り、
新しい生活がスタートする。

ジェームスは、育ての父(誘拐犯)が
作った「ブリグズビー・ベア」という
ビデオを観て育った。
その数、VHSテープで25巻・全736話。
チープな作りの SF 番組のビデオなのだが、
そこには色んなメッセージが込められていた。

シャバに出たジェームスは、
そのビデオは、育ての父が作っていたもので、
世の中には出回っていないことを知る。
そこでジェームスは続編を作ろうと思い立つ。
その映画作りを通して、社会復帰というのか
社会参画というのか、再生をしていくと
いうようなストーリー。
後半、不覚にも数回泣いてしまった。

悪人が登場しない。
といっても、ジェームスを誘拐した夫婦は、
悪いことをしたのは間違いないのだけど、
歪んでいるとはいえ、根っからのワルではなく、
ジェームスを愛情いっぱいに育てたのは分かる。
その証拠が、「ブリグズビー・ベア」の
ビデオ製作だ。
本作は、ファンタジーなので
将来、どうするつもりだったんだろうなんて、
シリアスな疑問は置いといてね。
あと、精神科医(カウンセラー?)も
悪人ではないのだけど、ジェームスにとっては、
良き理解者とはいえず、医者がこんな風では
困るなぁという存在。

監禁・洗脳からの再生の物語なのだが、
深刻なドラマではない。
それは、脚本と主演を担当した、
カイル・ムーニーがコメディアンだと
いうことが大きいのだろう。

何よりも、ジェームスがポジティヴで、
ピュアなことが、本作の肝だと思う。
そして、家族と友人の存在が大きい。

誘拐犯が子供のために作った、
「ブリグズビー・ベア」を
誘拐された子供が(大人になって)完結させて、
社会復帰を遂げる。
不思議なストーリーだが、
流れる涙に心を洗われる感じでした。


★★★★★




テイク・エブリィ・ウェーブ

TAKE EVERY WAVE: THE LIFE OF LAIRD HAMILTON


サーフィンの革命児とも言われる、
レイアード・ハミルトンというプロ・サーファーの
ドキュメンタリー映画『テイク・エブリィ・ウェーブ』。

なんで、サーフィンの映画なんか観るのかって、
それはキミあれだよ、
ボクが昔サーファーだったからだよ。
(嘘)

さて、このレイアード・ハミルトンという人、
とんでもない人です。
英仏海峡をパドリング(手漕ぎ)で横断したり、
地中海ではなんとかいう島から島の
70キロを(70キロと知らず)やはり
パドリングで横断したりした人。
命知らずのサーフィン・バカですね(尊敬込めて)。

で、本作を観るまで知らなかったけど、
この人が考案したトウインサーフィンで、
より大きな波に乗れるようになった。
普通は、サーフボードに乗って
パドリングで沖まで出て、波に乗るのだけど、
それだと限界がある。
で、トウインというのは、ジェットスキーで
沖まで引っ張っていってもらって、
普通では乗られなかった1キロ以上沖の
大きな波に乗るのだ。

これを考案した当初は、自分たちだけで、
楽しんでいたのだけど、経済的に
困った彼らは、このサーフィンを
撮影して売り出すのね。
すると、そのポイントに人が殺到して
大変なことになってしまう。

そんな紆余曲折も描きながら、
ラストでは、タヒチで誰も乗ったことのない、
ビッグウェイヴにめっちゃ長いこと乗ります。
ご本人が達成感で泣くほどの。
私もまさかサーフィンの映像で
落涙するとは思わなかった。
それほど、素晴らしい。
こんなことが出来るのかと、
サーフィンの既成概念が壊されました。

あと「フォイルサーフィン」というのも
初めて知った。
普通のサーフボードの下に、水中翼が
付いていて、波の上を飛んでいるようにも
見えるサーフィン。
言葉では説明が難しいので、
興味のある人は、下記にレイアード・ハミルトンの
写真と動画があります。

海上飛行するサーフボード 次世代サーフィン
『フォイルサーフィン』


タイトルは「全部の波に乗れ」ってことやね。


★★★★▲


映画とは、関係ないけど。
19〜20歳の頃、本当に何度かサーフィンに
行ったことがある。
今から、考えるとゾッとする。
だって、私、ろくに泳げないのに、
台風の来ている海に入ったりしていた。
若いって、アホです。





2018.7.30

クイーン伝記映画
『ボヘミアン・ラプソディ』


先日、映画館で『ボヘミアン・ラプソディ』の
予告編を観た。
『ボヘミアン・ラプソディ』は、
言わずと知れたイギリスのロック・バンド
"QUEEN" の大ヒット曲。

フレディ・マーキュリーが死んでしもて、
もう27年!(そんなに経つか!)
そのクィーンの伝記映画が、11月に公開される。

11月は、Eric Clapton のドキュメンタリー映画
『Life in 12 Bars』も公開されるので、
ロック映画祭りになりそうだ。(おおげさ)

フレディー・マーキュリーを演じるのは、
ラミ・マレックという人で、
予告編を観る限り、ええ感じで似てるのだ!
他のメンバーも似てる人を採用したみたい。
これは、楽しみだぞ。


映画『ボヘミアン・ラプソディ』予告編





2018.8.15

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス
BUENA VISTA SOCIAL CLUB : ADIOS

音楽ドキュメンタリー映画を観ると、
どうして、寝てしまうんだろう。
もの凄く興味があって観たいのに。

ドキュメンタリーというものが、
そういう性質だとは思えないし、
全ての作品でというわけではないが、
あまりにも寝てしまう確率が高すぎる。
(たぶん5割ぐらい。)

今年観た『ラスト・ワルツ』もそうだったが、
過去に観た『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』
『JACO』、『パコ・デ・ルシア 灼熱のギタリスト』
『バックコーラスの歌姫 (ディーバ) たち』は、
1回目寝てしまい、どうしても最初から
最後まで観たくて、2回観に行った。
『シュガーマン』は情けないことに2回目も
寝てしまい、3回目でやっと全部観ることが出来た。

実は本作『ブエナ・ビスタ・ソシアル・
クラブ★アディオス』も10日程前に
観に行ったが、やはり始まってしばらくで気絶。
たぶん、20〜30分は寝ていたと思う。

それで、今日2回目のチャレンジ。
ちゃんと、最初から最後までしっかり観てきた。
やっぱり、寝てたときに貴重なシーンがあったわ。

1997年、ライ・クーダー、ニック・ゴールドの
プロデュースでキューバとアフリカの
ミュージシャンで、アルバムを作る企画が
持ち上がったが、アフリカのミュージシャンが
キューバに渡航できなくなり、急きょ、
50〜60年代にキューバで活躍していた、
ミュージシャンを集めて、アルバムを
吹き込んだ。
それが CD『Buena Vista Social Club
(以下 BVSC)』だ。
『BVSC』は、世界中でヒットし、99年には、
ヴィム・ヴェンダース監督により、
同名のドキュメンタリー映画が制作される。

CD に参加したミュージシャンの多くは、
当時70〜90代で、中には引退していた人もいた。

あの映画から、18年。
『BVSC:ADIOS』はその続編であり、
『BVSC』の大ヒット後の彼らを描いている。

興味深かったのは、97年 CD 発売後の初ツアー。
アムステルダムでのリハーサル風景。
当時、90歳を過ぎていてコンパイ・セグンドと
他のメンバーが衝突し、コンパイは
「代わりのギターを弾ける老人を探せ」と
怒り出す始末。
バンマス(ファン・デ・マルコス・ゴンザレス)は
大変だっただろうなぁ。

それから BVSC のメイン・ヴォーカルの
イブライム・フェレール。
前作でも歌をやめて靴磨きをしていたという
台詞があったことを記憶している。
本作でも70歳を過ぎて、スポットライトを
浴びたイブライムの戸惑いと喜びが伝わってくる。
こんなに素晴らしいシンガーが、
埋もれてしまうというのは、
政治的経済的なキューバの事情があり
複雑なことなのだと思うが、
よくぞ世界に紹介してくれたと
関係者には感謝したい。

それから、今年3月に来日公演を観た、
キューバの至宝、
オマーラ・ポルトゥオンド(87歳)。
その日のエントリーに
「陽気なラテンを聴きながら、 涙が流れてくる」
「勝手に涙が出て、なんか分からん体験」と書いた。
映画を観て、そのわけが
少しだけ分かったような気がする。

ドキュメンタリーの後半は、BVSC 名義での
最後となる アディオス(さよなら)ツアーを
追っていくが、オバマ大統領に
ホワイトハウスに招待され演奏するシーンもある。
キューバ在住のアーティストが、
ホワイトハウスで演奏するのは、
50年ぶりだという。

映画を観て、ますます残念なのは、
イブライム・フェレールの
ステージをナマで観なかったこと。
2001年の BVSC 来日時には、来ていたはずだ。
当時は、映画を観ただけで満足だったんだな。

イブライムだけでも2時間の
ドキュメンタリー映画が出来るだろう。
そういう意味では、ちょっと詰め込み過ぎな感が
あったのは、仕方がないことだろうけども残念。


★★★★▲


オマーラ・ポルトゥオンドと、
バルバリート・トーレス(BVSCオリジナル・メンバー)
が、来月の東京JAZZに出演するが、
私のライヴと重なってしまった〜。
残念〜。
しかし、11月にはキューバへ行くぜ!


BUENA VISTA SOCIAL CLUB : ADIOS


[ 関連エントリー ]
2013.9.7 Buena Vista Social Club
2018.3.18 オマーラ・ポルトゥオンド





2018.8.17

タリーと私の秘密の時間
TULLY


予告編を観て興味を持っていた映画
『タリーと私の秘密の時間』。

3人の子育てに疲れた母親が、
夜だけ赤ちゃんを見てくれる
ベビーシッターを雇う。
そのおかげで母親は、
自分を取り戻し、生き生きとしだす。
しかし、ベビーシッターには
何か秘密があって、やがてその秘密が
明かされる・・・。
予告編で得た情報は、そんな感じだったが、
予想していなかった展開だった。

▼以下、ネタバレ(大ヒント)注意。▼
ある、からくりがあるのだけど、
それを見抜くのはちょっと難しそうに感じた。
というのも、誰もが分かるように
分かりやすくは描かれていないのだ。
ちょっと混乱させられるシーンもある。
ネット上のレビューを読んでも、
そのことに触れていないものも多く、
もしかしたら、分かっていない人も
いるのかもしれない。
もうちょっとハッキリ、
ブルース・ウイルスの "あの映画" のように
衝撃があるように描いた方が
良かったような気もするが、
もしかしたら、英語が分かれば、
伏線が散りばめられていたのかもしれない。

母親マーロ役に本作のために
18キロも増量したという、シャーリーズ・セロン。
夫ドリュー役にロン・リヴィングストン。
ベビーシッター役にマッケンジー・デイヴィス。

子供3人の子育ての大変さは、
十分に伝わってきます。


★★★★☆





2018.9.16

この5〜6年は年間60〜80本、
劇場で映画を観てきたが、
今年は極端に少ない。
もっと観たいのだけど、
なんだかんだと機会を失っている感じだ。
で、昨日は久しぶりに3本観てきた。



泣き虫しょったんの奇跡


この数年、公開された棋士の映画、
『聖の青春』(松山ケンイチ主演)
『3月のライオン』(神木隆之介主演)は、
なんとなく観損ねており、本作も
プロ棋士を目指す映画ということで、
ちょっと地味な印象もあって、
あまり期待はしていなかった。

ところがどっこい。
ええ映画でした〜。
先日、テレビに主演の松田龍平が
出ていたのを観て、
興味が湧いたのだけど
将棋の話だと思っていたら大間違い。
勝手な先入観はいけませんな。

主役の瀬川晶司は実在の棋士。
プロ棋士になるためには、
「奨励会」に入り、26歳の誕生日までに
四段に昇格しなければならない。
瀬川は、中学生で「奨励会」に入るものの
26歳までに四段になれず、退会し
絶望と挫折を味わう。

その後、アマチュアとして、プロ相手に
17勝6敗という成績を残したことが
きっかけで、35歳の時に特別に
プロ編入試験を受ける機会を得る。

まあそこまで行くのに色々あるわけだが。

将棋を知らない人が観ても
全く問題なく楽しめるし、
感動するだろうと思う。

「夢はあきらめなければ実現する」と
いうような甘い話ではないと
思うけど、ええ話である。
人生 無駄なことは何もないんだと思える。
親や小学校時代の担任の先生、
友達など、周りの人たちのひと言が
大きな影響を与えていることも、
この作品の素晴らしさの一つだと思う。
特に父親の影響が大きい。
中々こんな父親おらんと思う。

豊田利晃 監督の作品は初めて観たのだけど、
この監督自身が、「奨励会」にいたことが
あるのだという。
なるほど、そういう監督の想いも
込められているのかもしれない。

瀬川晶司(松田龍平)のライバル役に
RADWIMPS の野田洋次郎。
映画『君の名は。』の主題歌『前前前世』を
歌っていた人だ。
この人が良い味出してます。
あとイッセー尾形も好きやなぁ。
その他の出演者も豪華。
松たか子、美保純、イッセー尾形、小林薫、國村隼、
染谷将太、新井浩文、早乙女太一、妻夫木聡、
永山絢斗、渋川清彦、駒木根隆介、板尾創路 など。
ああ、一番凄いのは、通りすがりの男役の藤原竜也。

私は「自分のために勝つ将棋は終わった」
という台詞がとても印象的だった。


★★★★★




判決、ふたつの希望
L'INSULTE/THE INSULT


これは、予告編を観て絶対観ようと
思っていた映画。
原題の「INSULT」は、「侮辱」の意味。

昨日はイスラエルのことを書いたけど、
本作、レバノン・フランス合作ということで、
舞台となるのは、レバノンの首都ベイルート。
レバノン人のトニーとパレスチナ人の
ヤーセルの もの凄く些細なもめごとが、
やがて大統領まで巻き込み、
国が揺れるような裁判に発展していく。

前半、私は完全にトニーが悪いと観ていた。
いや、今でも「事件だけ」を見れば、
トニーが悪いと思っている。

しかし、そんな簡単には片づけられない、
複雑で根深い歴史が、レバノン人と
パレスチナ人の間にはあった。
このレバノンの事情に詳しければ、
本作はもっと深く理解できるのだろうけど、
国際情勢に疎い私でも、
詳しいことは分からないまでも、
なんとか話に付いていくことが出来た。
とても、考えさせられる深いテーマで、
日本人にも置き換えて考えることが
出来るので、多くの人に観てもらいたい。

予告編では、次のようなテロップが
映し出された。

「未来のことを考えたら、
いま、やるべきことはわかっている。
でも、過去がそれを許さない。
この人類普遍の問題に心を痛める人々に、
この映画は希望をもたらすか ――」

これは、憲法学者 木村草太氏の言葉。

「やるべきことはわかっている。
でも、過去がそれを許さない。」
これは、レバノンとパレスチナだけに
当てはまる問題ではない。

人間て、ホンマにアホやなぁと
思うと同時に理解さえし合えれば
希望があるんだと思った。
問題は、相手を理解しようという
姿勢があるかどうかだ。
そう思うと、時折 目にする、
近隣国の日本に対する不快な発言も
彼らのその発言の背景を知らねば、
何の前進もないのだと思ったのでした。

それにしても、難しい問題や。
報復、謝罪、理解、そして許し。
人類の永遠のテーマやな。


★★★★★




カメラを止めるな!


3本目は、原作か原案かパクリかで
話題になっていた『カメラを止めるな!』。
低予算のB級映画が大ヒットしていると
いうことで、期待してしまった。

面白かったと言えば面白かったのだけど、
傑作かと言われればそれほどでもないと
いうのが正直な感想。
『泣き虫しょったんの奇跡』で泣いて、
『判決、ふたつの希望』で重いテーマの
法廷劇を観たあとなら仕方ないか。

前半のゾンビ映画部分がやや退屈。
ただ、そこで席を立った人は、
この映画のことは永遠に語る資格がない。
最後まで観ないとね。

途中で「どんなオチでくるんやろ?」と
思っていたら、なるほどね〜という展開で、
前半の不自然な部分も全て解き明かされる。
でも、「どんでんがえし」というほどではない。
賛否両論のようだが、若い人には面白いのかな。
オジサンには、まあまあおもろいという程度。

好感が持てたのは、プチ父娘ストーリーが
絡めてあるところ。


★★★★☆





2018.9.16

樹 木 希 林

昨日(9月15日)女優の樹木希林さんが
亡くなった。75歳。

う〜ん、ちょっとショックやなぁ。
癌を患いながらも映画に出続けた。
たくさん楽しませてもらいました。
この数年だけでも
『歩いても 歩いても』『わが母の記』
『悪人』『ツナグ』『そして父になる』
『駆込み女と駆出し男』『あん』
『海街diary』『海よりもまだ深く』など。
今年に入っても『モリのいる場所』と
『万引き家族』の2本を観ているよ。

母の役をやらせたら一番だったなぁ。
とてもリアルで大好きでした。

アエラの死生観に関するインタビューを
読んでもとてもユニークな方であったのが
よく分かります。

アエラ記事 前半
アエラ記事 後半


合掌。





2018.9.18

BUENA VISTA SOCIAL CLUB

11月にキューバに行くので、
色々予習をしたいと思いながら、
中々時間を取れないでいるのだが、
ドキュメンタリー映画
『BUENA VISTA SOCIAL CLUB
(以下 BVSC)』をDVD で
レンタルして観た。
『BVSC』は、日本では
2000年に公開された。
劇場に観に行ったが、
18年も前ということに驚いてしまう。

キューバのことを知るためということも
あるが、先月、その続編ともいうべき
『BUENA VISTA SOCIAL CLUB : ADIOS』を
観たので、もう一度『BVSC』を
観たくなったのだ。

『BVSC』は、アムステルダムの
公演シーンから始まる。
『BVSC:ADIOS』では、
そのリハーサルシーンで、
コンパイ・セグンドが、エリアーデス・
オチョーアと衝突するシーンも
収録されていたが、改めて『BVSC』の
公演シーンを観ると二人は、ホントに
楽しそうに演奏している。
あのリハのもめごとのあと、どんな風に
まとまっていったんだろうな。
本番になったら、関係なくなるのかな。

後半の NY カーネギーホールで、
拍手喝采を浴びるイブライム・フェレールの
表情が何とも言えない。
彼は、歌に絶望し、靴磨きをしていたのに、
70歳を過ぎて脚光を浴びた。
人生は、何が起きるか分からない。

何度も、幼い頃に失った
母親の話をするイブライム。
自分のことを知って欲しいと、
私生児だったことを明かすイブライム。
カーネギーホールの公演で訪れた
ニューヨークへ家族を連れて来たかったと
言うイブライムが愛おしくなるほどだ。

元々は、1997年にライ・クーダーと
ニック・ゴールドが、キューバと
西アフリカのミュージシャンで、
CD を作ろうと企画したのだが、
西アフリカのミュージシャンが、
パリで足止めを食ってしまい、
キューバに渡航できなくなった。
そのため、急きょ、50〜60年代にキューバで
活躍していたミュージシャンを集めて、
アルバムを吹き込んだのが始まり。

そのアクシデントがなかったら、
『BVSC』の CD と映画は
作られなかっただろうから、
彼らのことを一生知ることはなかっただろう。
そう思うと、うまく行くことも
うまく行かないことも全て奇跡なんだ。





2018.10.19

誤 解

久しぶりの演劇観賞であった。
アルベール・カミュの戯曲『誤解』。
出演は、原田美枝子、小島聖、
水橋研二、深谷美歩、小林勝也の5人

アルベール・カミュのことは
名前を聞いたことがある程度で
何も知らなかった。
フランス領アルジェリア出身の
小説家、劇作家、哲学者、思想家。
1913年生まれで、1960年交通事故により
46歳で亡くなった。
1957年、ノーベル文学賞を受賞。
サルトルとは、思想的に対立し、
論争を展開した末、絶好状態だったという。

さて、この舞台を観てみようと思ったのは、
あらすじを読んでのこと。
タイトルが「誤解」とあるように
悲劇的な誤解の物語で興味を持った。

田舎の小さなホテルを経営する女性マルタと
その母親は、時々 宿泊客を殺し金品を奪っていた。
ある日、20年前に出てったマルタの兄ジャンが
成功して母親たちを救うために戻ってくる。
自分のことに気づいてもらえなかったジャンは、
自分の身分を隠して宿泊する。
マルタと母親は、その金持ちの客を
ジャンとは知らずに殺してしまう。
そして、殺したあとで、ジャンだと知ることになる。

これは、東欧で実際に起こった事件から
着想を得て書かれたらしい。

感想は・・・う〜ん、難しい。
最後のセリフの意味も私には分からない。
絶望的とは言わないけど、
希望が見えないというか、
結局、何が言いたいのか分からない。
娘の嫉妬とか苦悩とかは分かるけど・・・。
まさか母親は、娘より息子が可愛いということでもあるまい。

まあ、哲学者の肩書を持つ人の作品だから、
そんなに理解の容易な物語ではないんだろう。
私のようにのんきに生きている者には
理解できない世界か。





[ キャスト ]
原田美枝子
小島 聖
水橋研二
深谷美歩
小林勝也

[ スタッフ ]
(作)アルベール・カミュ
(翻訳)岩切正一郎
(演出)稲葉賀恵
(美術)乘峯雅寛
(照明)服部 基
(音響)加藤 温
(衣裳)原 まさみ
(ヘアメイク)川端富生
(演出助手)高野 玲
(舞台監督)村岡 晋

@ 新国立劇場 小劇場





2018.10.20

2001年宇宙の旅
2001: A SPACE ODYSSEY


小学校の入学時、どなたかからお祝いで
頂いた絵の具セットのケースが
映画『2001年宇宙の旅』の
デザインだったことを思い出した。
片方の面は、宇宙ステーションで、
反対側は、ディスカバリー号の
絵だったことをハッキリ覚えている。

私の小学校入学は、1969年。
映画『2001年宇宙の旅』は、
その前年 1968年に公開された。

今年は、映画公開から50周年。
2週間限定で IMAX で上映が
されているのを知って、
劇場で鑑賞する機会は、そうそう
ないだろうからと観に行くことにした。

映画『2001年宇宙の旅』は、
スタンリー・キューブリック監督の
SF映画の金字塔といわれる作品。
もう、20年以上前に一度、
ビデオを借りて観たけど、
難解でよく分からんという
印象しか残っていない。
あれから、20年以上。
時代も変わり、自分もあの頃よりは
少しは理解力がついたかもしれんと
思っての鑑賞だったが、
直前にお腹いっぱいご飯を食べたので、
やばいかなぁと思っていたら、
案の定、前半の猿人の部分が
終わったあたりから30分ほど気絶。
気が付いたら、木星へ向かう
ディスカバリー号の中のシーンだった。

今の時代では考えられないほど
台詞は少なく、テンポもゆっくり。
優雅ともいえるが、やや冗長な感もある。

感想はね、やっぱり難解。
でも、1968年にこんなものを作っていたと
思うとそれは凄いことだと思う。
タブレットや、AI、音声認識なんて、
今や当たり前やもんね。

ディスカバリー号の中では、
乗組員とコンピュータ HAL9000 の
やり取りが中心だが、この「HAL」は、
「IBM」のそれぞれのアルファベットの
一文字前を取ったものと、
学生時代に何かの授業で習った覚えがある。
その先生は、「IBM」の一文字 "前" なのは
お兄さんだからと言っていたが、
本当かどうか分からない。

途中で寝てしまったので、
今回は☆の評価は出来ない。
よほど余裕があって条件が合えば、
もう一度観に行くかもしれないけど、
たぶんないな。




クワイエット・プレイス
A QUIET PLACE


『2001年宇宙の旅』がやや消化不良だったので、
もう一本観て帰ろうと思ったら、
ちょうど『クワイエット・プレイス』が
始まるところだった。

予告編は何度か観た、
音を立ててはいけないという映画。
音を立てると何かが襲ってくるのだ。

以下、ややネタバレ。

音に反応して襲ってくる化け物は、
宇宙からやってきた地球外生物という
設定で、どうやら目は見えず、
音だけに反応するみたい。
で、人類がほとんど滅亡に
追いやられたみたいで、
主人公家族は、音を立てないように
工夫をしながら暮らしています。

この手のスリラー映画によくあるように
ドキドキハラハラは
それなりに楽しめたよ。
けど、突っ込みどころはいっぱい。
こういう映画には、
そういう野暮なことは言わず
楽しめば良いんやろうけど。

エミリー・ブラントは、
以前よりも魅力的になったと思う。
本作の監督で夫役でもある、
ジョン・クラシンスキーとは、
私生活でも本当の夫婦らしい。

あ、「女は強い」っていう映画でもある。


★★★★☆





2018.11.23

エリック・クラプトン〜12小節の人生〜
ERIC CLAPTON: LIFE IN 12 BARS


エリック・クラプトンのドキュメンタリー映画。
本日初日。
昨日予約しておいて、日比谷シャンテで
13:10からの上映を観たのだけど、
行ったら売切れになってました。

母親の拒絶、親友の妻への恋、失恋、
友人の死、ドラッグ、アルコール中毒、
最愛の息子の事故死・・・。
よく生きていたなと思う。
とっくに死んでいても不思議じゃない。

「自殺しなかったのは、酒が飲みたかったから」と
語るヤク中、アルコール中毒者を立ち直らせたのは、
音楽、ブルースへの愛だった。

私は、クラプトンのファンになって35年ほど経つ。
伝記も読んだし、数々のインタビューも
読んできた。
クラプトンほどになるとその数も多すぎて、
私が目にしてきたのは、ほんの一部だろうけど。
それでも大体のことは知っていたつもりだったけど、
知らないことも結構あった。
アレサ・フランクリンが、スタジオで
セッションすることになり、
クラプトンのサイケな服装に笑ってたのに
ギターを聴いたら笑うの止めたとかね。
あと、ジミヘンと会ったことがあるのは、
知っていたけど、あんなに仲良く
付き合っていたとは、知らなかった。

70年代、来日公演でも酔っぱらって散々だったと
いう話は、若い頃に聞いたことはあったけど、
客にめちゃくちゃ野次られたり、
客とケンカをする酔っぱらいエリックの
音声は、ちょっとショックだった。

黒人音楽に憧れてギターを弾いていた
エリックが、酔っぱらって、
人種差別発言をしてしまい、
自己嫌悪に陥ったり、
本作を観て、改めてその苦悩の深さを知った。

ジョージ・ハリスンの妻だったパティに
送ったラブ・レターなんてものも出てくる。

エリックが、ドラッグや酒に溺れていたのは、
70年代前半までのことと思っていたら、
私がエリックを良く聴くようになってからも、
彼はずっと苦しんでいたんだ。
友人の死、息子コナーの事故死など、
考えてみれば、エリックの人生は
本当に波乱万丈だ。

コナーの死以降は、少し駆け足に描かれている
印象を否めないが、今は3人の娘に囲まれ、
幸せな人生を送っているクラプトン。
最後は、ハッピーエンドにまとめられていて、
ただただ、生きていてくれて良かったと思った。

自分の明も暗も、栄光も恥も、あそこまで
赤裸々にさらけ出すことが出来るのは、
エリックがただのスターではなく、
ブルースマンだからだろうか。
そんなエリックにB.B.King がステージで
送る承認の言葉が、これまた感動的。

もう来日は ないかも知れないけど、
長生きして欲しいです。


★★★★★



劇場のディスプレ
マーティンのギターも飾られてた。




ボヘミアン・ラプソディ
BOHEMIAN RHAPSODY


今日は勝手に秋の「ロック映画祭り」。
2本目は、大ヒット中の映画
『ボヘミアン・ラプソディ』。
言わずと知れた英国のロックバンド、
「QUEEN」の、というよりは、
ヴォーカルの フレディ・マーキュリー を
描いた伝記映画。

エリックの『LIFE IN 12 BARS』と
続けて観たおかげで、同じ時代(1970〜80年代)も
描かれていたこともあり、妙にリアルだった。
始まってまもなく劇中で CREAM の
『Sunshine of Your Love』が流れたしね。
こういう偶然にやられてしまうんよね。

冒頭の20世紀フォックス映画のファンファーレが、
ブライアン・メイのギター調で、
(おお、ここまで凝ってくるか〜)と
嬉しくなってしまった。
調べてみたら、ホンマにブライアン・メイと
ロジャー・テイラーが、録り下ろしたんだと!

映画は、1970年のクィーン結成のエピソードから、
1985年のライヴ・エイドのステージまでを
描いている。
フレディは、その後 1991年、45歳で他界。

ライヴ・エイドといえば、当時衛星中継で
観たんだろうか、ロンドン、ウェンブリー・
スタジアムに出演したフィル・コリンズ が、
コンコルドに乗って、アメリカ会場の
JFKスタジアムに駆けつけて、
エリック・クラプトンの演奏に参加したのが
印象に残っている。
(両会場に出演したのは、フィルのみ。)
クラプトンは、英国ではなく米国の方に
出演してたんやな。

閑話休題。
フレディに話を戻そう。
天才とひと言で片づけがちだけど、
天才も人間なんやなぁ。
凡人と同じように苦悩はあるんや。

前半、QUEENの4人が、こんなに
仲良かったのかって思っていたら、
途中でやっぱり、分裂が起きた。
でも、本当にメンバーに恵まれたんだと思う。
でなきゃ『Bohemian Rhapsody』は
生まれていないし、ライヴ・エイドの
出演もなかっただろう。

誰もやっていないとか、常識とか、
何か過去の例にとらわれたりする人は、
新しい何かは創り出せないんだと思う。
そういう意味で、フレディもエリックも
本当にアーティストだと思う。

後半、エイズであることを ライヴエイドの
リハーサル後、メンバーに伝えるシーンで、
「俺はエイズにかかった悲劇のヒーローに
なならない」と言うフレディ。
そしてこう続ける。
"I decide who I am"
(俺が何者かは、俺が決める。)
それまでも何度もウルウルしてたけど、
ここで涙腺完全崩壊。
最後までパフォーマーであろうとしたフレディ。
彼の死後に出た QUEEN の『Made in Heaven 』
(1995年)を聴いたた時、
「まだまだ歌いたかったんやろな」と、
涙が流れたことを思い出した。

実際のライヴエイドの映像と見比べるのも楽しい。
 ↓
Queen - Live AID 1985 Full Concert
当たり前なのだけど、フレディ役の
ラミ・マレックは、フレディの振りしぐさを
凄くコピーしてます。


2016年の「QUEEN + ADAM LAMBERT」も
観たのだけど、1979年、高校生の時、
大阪フェスティバルホールで、
QUEEN のコンサートを一度だけ観た。
ナマでフレディを観たんだという記憶が
今となっては宝物です。


★★★★★





2018.11.26

『ボヘミアン・ラプソディ』を考える

先日観てきた映画『ボヘミアン・ラプソディ』。
英国のロック・バンド「QUEEN」の
フレディ・マーキュリーを描いた作品で、
大変高い評価を得ている一方で、、
一部マニアックのな QUEEN のファンには
不評のようだ。

というのも、事実と違う演出が
多々あるというのだ。
例えば、映画では1985年ライヴ・エイドの前に
フレディがメンバーに HIV に感染していることを
告白するが、実際には感染が診断されたのは、
1987年だったとか、ジム・ハットンと
会ったのも1987年だったとか。

そういう事実と違うことがたくさんあって、
嫌悪感さえ持った人たちがいるようなのだ。
おそらく、コアな QUEEN(フレディ)ファンで、
自分が知っている情報と違うことを
許せないのだろうな。

で、この創作部分を事実と思いこんでしまう人が
いるんじゃないかと危惧する人もいるようだ。
思いこんだって、誰も何も困らないんだけどね。

映画を作る上で、事実通りに作ろうとすると、
時間的に難しかったり、ストーリー的に
複雑になったり、色んな事情から、
多少、演出やフィクションも加わるのは、
仕方がないことだと思う。

それは、観る側も分かっていることとして
映画に臨まないと、楽しめないだろう。

事実を基にした映画は数々作られてきたけど、
100%事実通りなんてことはあり得ない。
というか、そもそも「事実」ってなんだ?
ってことになる。

たぶん伝記か公式の発表には
フレディが、HIV と診断されたのは、
1987年とあるので、批判している人は、
そういうことを書くのだろうけど、
それだって本当かどうか分からない。
フレディは、1985年から知っていたかもしれない。
そんなことは、誰にも分からない。

一つの情報を「真実」だと信じ込むのも
「無知」と変わりないように思う。

私としては、一人のロック・スターの
人生の一部を覗けただけで価値があるな。
たとえそれに、フィクションの部分が
多かったとしてもね。
フィクションって、ロック・ミュージックと同じ
「創作」だからね。

例えば、誰かの楽曲をカバーして、
メロディをフェイクするのは、
演奏者の自由だけど、オーディエンスは
いちいちオリジナルとメロディが違う、
リズムが違うとは言わない。
それが、その演者の表現だから。

同様に映画は、原案や元になる史実や
事件があって、製作者がそれをネタに
創作しているんだと思えばどうだろう。
もちろん例えば、その実在した人物の
名誉を傷つけるとか、悪意を持って
事実を変えるとか、その辺は誠意に依る
限度はあると思うけどね。

この映画が商品化される時には、
ノーカット版が付くという話も読んだ。
本当かどうかは未確認だけど。
5時間ほどあるというから、
もしそれが出たら、心して観なきゃならんな。


ところで、本作、公開当初は「IMAX」上映だった。
実は、11月17日の21:15から回のチケットを
その前日に予約していたのだが、夕方から
キューバ旅行の疲れ(2日前に帰国)からか、
しんどくなって、とりあえずいったん
家に帰って、2時間ぐらい寝れるなと、
思って寝たら、そのまま起きられなかった。
チケット代は、無駄になったけど、
まあいいやと思っていたら、
翌週、観に行った23日には、
もう IMAX は終了していたのだ。
残念。
でも、今まで数本、IMAX で観たけど
そんなに言うほど凄いと思ったことないねんけどね。





2018.12.8

ピアソラ 永遠のリベルタンゴ
ASTOR PIAZZOLLA INEDITO/
PIAZZOLLA, THE YEARS OF THE SHARK


ピアソラのドキュメンタリー映画を観てきた。
音楽、特にタンゴに詳しくない人でも
「リベルタンゴ」は耳にしたことがあるだろう。
その作曲者が、アストル・ピアソラだ。
1921年、アルゼンチン生まれで、
1992年に71歳で亡くなっている。
作曲家であり、バンドネオン奏者でもある。
バンドネオンというのは、アコーディオンに似た
楽器だが、鍵盤がなく代わりにボタンが
並んでいる。

2007年に梅林さん(sax, fl)とデュオを始めた時に
初めてピアソラの名前を聴いた。
それまで、タンゴに興味を持ったことなど
なかったのだが、ピアソラの「タンゴの歴史」という
フルートとギターのデュオ曲にチャレンジしたのだ。
「タンゴの歴史」は、4曲からなる組曲なのだが、
「I. Bordel(売春宿) 1900」と
「II. Cafe(カフェ)1930」は、なんとか
弾けるようになり、ライヴでも演ったことがあるが、
「III. Nightclub(ナイトクラブ) 1960」と
「IV. Concert d'aujourd'hui(現代のコンサート)」は、
やりかけたものの難しくて、途中でやめてしまった。

ピアソラは、タンゴの革命児と言われ、
ダンスのためだったタンゴに変化をもたらし、
踊れない、音楽としてのタンゴを誕生させた。
1950年代には、早すぎたのだろうか、
そのことが、祖国アルゼンチンでは
受け入れられず、ずい分と攻撃されたようだ。
しかし、アルゼンチンより先に
ヨーロッパで認められ、今では
タンゴの革命児として世界中で認められている。

映画は、没後25周年となる昨年、
母国アルゼンチンで開催された回顧展に
あわせて、制作された。
生前、ピアソラの娘、ディアナが録音した
ピアソラへのインタビューをもとに、
息子のダニエルが、父ピアソラの人となり、
その思い出を語る。

ピアソラが、バンドネオンを始めた
少年時代のいきさつ(父親が買って与えた)に
始まり、1950年、一度はタンゴをやめたのに
フランスに留学中、師ナディア・ブーランジェの
勧めで、再びタンゴに戻ってきて、
新しい音楽を始めるエピソードなど、
古い映像も交えながら、
ピアソラという人をミュージシャンと
してだけではなく、父親として、
一人の人間として、描いていく。
音楽が一番の人で、あまり家族を
大切にしなかったかのような一面も
垣間見れるが、基本的に子供たちは、
父ピアソラが好きだったのが、伝わってくる。

「過去はゴミだ」と言い、昨日書いた楽譜を
破り捨てたエピソードが、息子ダニエルに
よって語られるが、それは気に入らない
作品だったからじゃないのかと思った。
本当に毎日、昨日書いた楽譜を捨てていたら、
バンドで演奏する曲がないもんね。

若い頃のピアソラは、ちょっとお茶目な男前だが、
年を取ってからは、ひたすら渋い。
そして、享年71歳は、ちょっと早かったなと思う。

ダニエルが、始終、憂いを含んでいるような
表情なのが、ちょっと気になった。
ダニエルが、ピアソラに向かって
酷いことを言い、それから10年くらい
口を利かなかった時期があった。
もしかしたら、そのことと関係あるのかな。

映画本編とは、関係ないけど。
映画のチラシに使われている写真が、
私の好きな写真家、ソール・ライターの作品の
ようだと思っていたら、映画の中で
何枚もソールの写真が使われていた。
ソールといえば、1950年代のニューヨークの
写真が有名だが、ピアソラも50年代に
ニューヨークに移り住んでいた時期がある。
その関係かなとも思ったが、
先日のキューバ旅行の写真を見ても、
自分の写真にソールの影響を感じていた
矢先だったので、ソールの写真が出てきた時には
ちょっと驚いた。

もうひとつ、夏に妻が『超解釈 サルトルの教え』
という本を出したのだが、
ピアソラが娘ディアナに向かって、
「あの頃のお前は、サルトルが好きで
実存主義にハマってた」というような
ことを言ったので、これまた驚いた。

ピアソラを観に行ったのに、
ソール・ライター、サルトルと、
不思議なつながりを感じたのでした。

私には「音楽ドキュメンタリーは、
眠くなる」というジンクスがある。
そして、今日も来ました睡魔君。
でも、なんとか最後まで起きて観たよ。


★★★★▲





2018.12.23

家へ帰ろう
EL ULTIMO TRAJE/THE LAST SUIT


映画『家へ帰ろう』。
シネスイッチ銀座で14:40からの上映を
観る予定だったが、30分ほど早く劇場に
着いてしまった。
前の回には、上映後にトークイベントが
あったようで、まだその途中だった。
「良かったら空いている席に
お座りください」と劇場の人に勧められた。
中に入ると噺家の林家木久扇さんが、
映画についてインタビューを受けており、
マスコミのカメラが何台も入っていた。
なんで木久扇さんなのか、
不思議な感じがしたが、
話を聴いていると、ご自身が幼少期に
東京大空襲で自宅を焼かれるという
戦争体験をされていることが分かった。
それに、映画の主人公と年齢が近いと
いうこともあるのかもしれない。
映画を観る前に内容に触れられると、
ちょっと困ったけど、上映後の
トークショーなので、仕方がないね。

さて映画は、アルゼンチンに住む88歳の
じいさんアブラハムが、1945年に別れた
恩人でもある友人に約束の品(スーツ)を
渡すために、ポーランドまで旅をするという物語。

アブラハムは、自宅を娘たちに売り払われ、
老人ホームに入れられることになっていたのだが、
友人との約束を思い出し、
家出同然にポーランドへ向かう。
アブラハムは、ポーランド生まれのユダヤ人で、
戦争中、ナチスの収容所から逃げ出した。
その時に救ってくれた友人に
自分が仕立てたスーツを渡すのが目的だ。

途中、色んな人と出会い、その人たちに助けられ、
アブラハムは、ポーランドを目指す。

「ポーランド」と口に出したくないとか
例え通過するだけでもドイツに入りたくないとか、
アブラハムの当時の体験の過酷さ強烈さを、
映像ではなく、言葉で訴えてくる。

映画は、予想を裏切らない結末で、
冷めた言い方をすれば、ファンタジーなのだが、
それでもこの結末を望んでしまう。
アブラハムが道中に出会う女性が皆
魅力的なのも良い。
あ、これもファンタジーか。
でも、ホロコーストがらみの
ファンタジーというのも変な感じだな。

原題は、「最後のスーツ」という意味だが、
邦題は、「家へ帰ろう」。
「いえ」ではなく「うちへ帰ろう」だ。
イマイチな邦題が多い中、これはヒットだな。
なんで「家へ帰ろう」なのか、
映画を観れば分かる。
とっても良いタイトルだと思った。

アブラハム役のミゲル・アンヘラ・ソラが
とても良い味を出している。
撮影時には、68歳だったようだが、
メイクで88歳になり切っとります。

ホテルの女主人役のアンヘラ・モリーナ、
ドイツ人文化人類学者役のユリア・ベアホルト、
看護師役のオルガ・ポラズ、3人とも良いです。


★★★★▲




パッドマン 5億人の女性を救った男
PADMAN


本日、2本目の映画『パッドマン』。
「パッドマン」の「パッド」は女性の生理用品のこと。

北インドの村に住むラクシュミは、
愛する妻が生理の時に汚れた布を
使っていることを知り、市販の生理用ナプキンを
買ってくるが、そんな高価なものは使えないと
妻につき返されてしまう。
なんでも自作してしまう器用なラクシュミは、
自分で生理用ナプキンを作り出すが、
これが大問題に。(以下ネタバレ)

まず、この映画は実話を基にしているのだが、
2001年の時点で、インドでは生理中の女性は、
5日間、家の中に入らずに過ごすという
古い慣習に生きてることにビックリ。
当時のナプキンは、高価なこともあるのだろうけど、
その使用率は、12%で、ナプキンを
知らない女性も多く、生理自体がとても
恥ずかしいことであった。
そんな風なので、ラクシュミがナプキンを
自作しているなど、家にとっては
大きな恥であったのだ。
ラクシュミにしてみれば、女性に
使ってもらって、改善点を聞いて、
よりよいものを作りたい一心だが、
妻でさえも協力を拒んでしまうほど、
閉鎖的だったのだ。

もともとは、妻が不衛生な布を使うことで、
病気になるのではないかという心配から
始まったことなのに、その妻の理解も得られず、
終いには、家族はバラバラになり、
ラクシュミは、村を出ることになる。

村を出ても、あきらめないラクシュミは、
借金をしてまで、安価なナプキンを
作ることに取組むが、使ってくれる
女性が現れない。
そんな時、偶然、強力な協力者パリーが現れ、
彼女の力もあって、ついには、
工科大学の発明の賞を獲り、
国に認められ、国連に呼ばれ
講演をするまでに成功する。

というサクセス・ストーリーなのだが、
諦めなければ成功するとか、
続けていれば協力者が現れるとか、
そういう要素よりも、そのサクセスの
背景の方が気になった。
ラクシュミは、確かに安くて清潔な
ナプキンを産み出した。
それどころか、その工場を女性達の
職場とすることで、雇用までをも産み出した。

しかし、彼は村人に変態扱いされながら、
ナプキン作りに励んでいた時と
何も変わっていない。
ただ、大学の賞を獲ったとか、新聞に載ったとか、
テレビに出たとか、国連に呼ばれたとか、
周りの同意が変わって行ったことによって、
村人の態度が、180度変わってしまった。
変態、変人扱いから、村のヒーローだ。

いや、村人を責めることは私には出来ない。
きっと私もあの村人の一人だろうから。
この映画を観て、一番怖かったのはそのことだ。
人が何のために、何をしているのかなんて、
何も知らないくせに批判し、評価し、
自分が正しいと信じ込み、
分かったような気になっている、
そんな自分が、あの村人の中にいるような気がしたのだ。


最初は、理解を示そうと努力した妻も、
ある意味、ラクシュミを見捨てる。
それは、彼女には可哀そうな言い方だろう。
特にインドの女性にとって、死にたくなるほど
恥ずかしい目に遭わせたわけだから、
理解しろというのは、男の勝手だろう。
でも、ラクシュミが成功したら、
電話をかけてくるというのは、
虫が良すぎないか、と思ってしまう私は、
女心が分かっていないか?

ラクシュミに協力するパリ―が、
とても美しい魅力的な人で、
ラクシュミに惹かれているのだけど、
妻を愛しているラクシュミのことを
想って身を引く。
父親に「なぜ愛していると言わない?
なぜ引き止めなかった?」と訊かれ、
パリーは「私が引き止めたら、
彼はつまらない男になってしまう」と答える。
え〜っ、そういうもんなのか?と
お子ちゃまな私は、思ったのでした。

パリ―可愛かったなぁ・・・。
ラクシュミの妻、ガヤトリも美人なのだけど、
ラクシュミのことを理解してあげられない時点で、
だんだん可愛くなくなってくるのね。
観客(男)は、勝手なもんよ。

後半、国連でのスピーチは特に感動的。

ところで、本作は実話に基づいているのだけど、
冒頭に、登場人物などについて「脚色してます」と
テロップが出ます。
どのあたりまで、実話なのかなぁ。


★★★★★





2018.12.29

日日是好日

映画『日日是好日』。
今年亡くなった樹木希林の遺作だと
思っていたら、来年公開の映画
(『エリカ38』)がもう1本あるようだ。

さて『日日是好日』。
気になっていたのをようやく観てきた。
勝手に樹木希林が主役の映画だと
思って観に行ったら、
主演は黒木華でした。

『日日是好日』の読み方も分からず、
映画館の窓口で「ひびなんとか、下さい」と
言ってしまったが、
「にちにちこれこうじつ」と読むのだった。
むしろ「これこうじつ」は考えれば読めたのに
「日日」が間違っていたとはね。

さて、映画はおそらく私が20代の頃に
観ていたら、つまらないと思ったであろう、
ストーリーで、これは大人にならないと
分からない色んな深さがあると感じた。

映画の大半は、お茶のお稽古のシーン。
大きな事件もなく、主人公の典子に
大学卒業、就職試験、失恋などの節目は
あるもののそれらは全て、ほんのわずかな
カットと典子のモノローグで過ぎていく。

そして、大学生時代にお茶を始めた
典子の24年間の変化を、
彼女のセリフと表情、しぐさで
見事に描いていく。

この映画を観て、お茶を始めようと
思う人もいるのだろうな。
あまりに時間がゆっくりで、
私は耐えられないと思ったけど。
私達現代人は、急ぎ過ぎている。
もっとゆっくり生きた方が、
実は豊かなのだ、と思ったね。

数年前、何かで読んだ。
インターネットの普及で、現代人の情報量は
以前の5千倍になったと。
3日前の話題は、もう時代遅れだ。
そんな私達だからこそ、本当はお茶のような
時間の流れ、今をたっぷり味わう、
イコール 今を生きることが
必要なのだろうな。

雨の日は雨を聴く。
雪の日は雪を見て、
夏には夏の暑さを、
冬は身の切れるような寒さを。
五感を使って、全身で、
その瞬間を味わう。

だからこそ、「日日是好日」なのだと
典子は、24年のお茶のおけいこを
通して掴むのだった。

お稽古のたびに床の間の掛け軸が
違っているのも素晴らしい。
お茶の武田先生は、その日にふさわしい
掛け軸に毎回(もしかしたら毎日?)
替えられていたのだろう。
「日日是好日」に通じることなのだ。

本作は、原作者 森下典子の自伝エッセイの
映画化ということで、主人公の名前も典子だ。
そして、森下は今でも武田先生のお茶今教室に
通い続けているのだという。

樹木希林や黒木華が、
お茶未経験者だというのも凄い。
特に樹木希林。
やっぱり女優さんって色んな事
やってはるんやなぁと思ったけど、
映画のために習得した所作だと知って驚いた。
さすがです。

世の中には「すぐわかるもの」と
「すぐわからないもの」の二種類がある。
すぐわかるものは、一度通り過ぎれば
いいけど、「すぐわからないもの」は、
長い時間をかけて、分かってくる。
というような言葉が出てくるが、
そんなことでさえ、概念的に分かったような
気になっている自分の浅はかさを感じた。

「お湯の音と水の音は違う」というのも発見。
本当に違うねん。

典子が子供の頃にフェリーニの『道』を
観た時、まるでわからなかったのに、
大人になって観たら素晴らしくて、
感動したというセリフがある。
私は、数年前に『道』のDVDを借りて
観たのだけど、そんなに素晴らしいとは、
思った覚えがない。
これは、もう一度観てみようと思う。

最後に。
「日々是好日」ではなく、「日日是好日」と
書くのは、「同じ日は二度とやってこないことを
意味するからであり、それぞれの『日』は
意味合いが違う」と書いている人がいた。
「日々」ではなく「日日」。
それだけでも "かなり" 深いと思う。


★★★★▲





2018.12.30

音楽映画のハードル

映画『ボヘミアン・ラプソディ』が大ヒットしている。
それは、QUEEN にとっても 映画界にとっても
良いことなのだけど、私にはちょっとした
違和感があった。

「ボヘミアン・ラプソディ、良かった〜」とか
まだ観ていない人から「凄く良いらしいね」という
言葉を聞くと、「良い映画ほかにもあるのになぁ」
という反応があったのだ。

それは、『ボヘミアン・ラプソディ』が
良くなかったと言う意味ではなく、
『ボヘミアン・ラプソディ』だけが
特別にずば抜けて良いわけではなく、
(もちろん良かったけど)
他にも良い映画たくさんあるのに、
なんでこれだけがそんな特別に
言われるんだろうという違和感だった。

今年に限って言えば、
『グレイテスト・ショーマン』も
『ボヘミアン・ラプソディ』ほどではないが、
数人から「良いらしいね」という言葉を
聞いたが、その他の私が素晴らしいと
思った映画の評判は耳にしたことがない。

私は、年平均60本の映画を劇場で
鑑賞している。(この10年間の平均)
DVD は含まない。
もっとたくさん観ている人もいるだろうが、
年60本は、日本人の平均よりは多いと思う。
そうすると、当然 素晴らしい映画にも
たくさん出会えるわけだ。

だからなぜ『ボヘミアン・ラプソディ』が
そんなに特別なのか分からなかったのだ。

先日、車を運転中、FMラジオをつけると
その番組のゲストに 中井 圭 という
映画評論家が出ていた。

中井氏の今年のベスト3を選ぶというので
聴いていると1本目は、
『君の名前で僕を呼んで』。
ああ、残念、何度か予告編は観たけど、
これは観ていないので何とも言えない。

2本目『スリー・ビルボード』。
私の評価は、★4つ半だったけど、
確かに記憶に残る良い映画だったので納得。

3本目、何がくるかなと思っていると、
『判決、ふたつの希望』。
イエス!これは、私も★5つ。

『判決、ふたつの希望』なんて、
テレビコマーシャルもしていなかったし、
エンタテイメント作品でもないので、
かなり観た人の数は限られるだろう。
でも、凄く考えさせられる良い映画だった。

それで、中井氏が興味深いことを言っていた。
「音楽映画はハードルが低い」と。
「ハードルが低い」というのは、
それだけ観に行きやすい=観に行く人が
多いということだ。
それには、知名度が関係している。
例えば、『オペラ座の怪人』(2004年)は、
日本でもヒットしたが、
知名度が 97%だったという。

厳密には、すべての音楽映画の
ハードルが低いわけではないだろうが、
知名度は大きく関係しているのは、
容易に想像できる。

この話を聴いて、なるほどそういうことかと
腑に落ちた。

QUEEN の映画が公開されれば、
普段それほど映画を観ないかも知れない
QUEENファン、昔のQUEENファンが、
劇場に足を運ぶことになるだろう。
観た人が感動すると、当然、
周囲の人に話すだろう。
普段たくさん映画を観ない人ほど
そのインパクトも大きいだろう。
その結果、口コミで評判が広がり、
ヒットにつながるというわけだ。

『スリー・ビルボード』や『判決、ふたつの希望』
よりも『ボヘミアン・ラプソディ』の方が、
圧倒的にハードルが低いだろう。

それで気が付いた。
私が違和感を抱いた、
「ボヘミアン・ラプソディ、良かったわ〜」と
言う人は、普段、映画の話をしない人
(=あまり映画を観ない人)だったのだな。

そう考えると、
『ボヘミアン・ラプソディ』以外にも
ええ映画いっぱいあるのに、なんで
『ボヘミアン・ラプソディ』だけこんなに
言われるんやろ?
という疑問は簡単に解けたのだ。
他の映画をあんまり観ていないっちゅうことだ。

なぜそこに反応してしまったのかということには、
私がミュージカルよりもヒューマンドラマの方が
好きだということもあるのだが。

繰り返すが、『ボヘミアン・ラプソディ』が
つまらないと言っているのではない。
私は、★5つを付けたし、
その証拠に、今日2回目を観てきたんだから。

今年『ボヘミアン・ラプソディ』以外
良かった映画がない人は、
もっと映画館で映画を観よう!




ボヘミアン・ラプソディ
BOHEMIAN RHAPSODY
 2回目

『ボヘミアン・ラプソディ』、
2回目の鑑賞である。
1回目同様、いやもしかしたら、
1回目よりも感動したかもしれない。
1回目の感想にはフレディが、苦悩したことを
「天才も人間なんやなぁ。
凡人と同じように苦悩はあるんや」と
書いたのだけど、今日はそんな風には
思わなかった。
そこよりも、フレディが誰であったか、
誰として生きたかということが
心に迫ってきた。

ライヴエイドのリハーサルで、
自分がエイズであることをバンドのメンバーに
告げるシーンは、やはり一番の山場だ。
「自分が誰であるか」の宣言は、本当に感動的。

それから、ライヴエイド当日、
両親に会いに行ったシーンも良い。
父親に「善い思い、善い言葉、善い行い」をするよう
育てられたフレディは、若い頃、父親に向かって
「それで、何かいいことがあった?」と
憎まれ口をきくのだが、そのシーンでは、
「アフリカの子供たちを救うんだ」と
胸を張って、父親に言う。
父親との確執が解けたような瞬間だった。

数日前に「逸脱」というエントリーを書いたが、
フレディ・マーキュリーも逸脱しています。
音楽も生き方もね。
(ジャズのアドリヴにおける逸脱とは
ちょっと意味が違うけど。)


レディ・ガガの出演する映画
『アリー/ スター誕生』も公開中だ。
レディ・ガガという名前は、QUEEN の
『ラジオ・ガガ』をもじって付けられた芸名
だというのは有名な話だが、この時期に
この2つの映画が公開されている不思議を
ライヴエイドのシーンで、フレディの歌う
"RADIO GA GA" を聴きながら思った。


★★★★★




今年の映画


さて、10年間の映画の年平均鑑賞数は60本と書いたけど、
この10年では今年が一番少なく(のべ)33本だった。

【私の今年の★★★★★(星5つ)映画】(観た順)

『15時17分、パリ行き』
『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』
『ダンガル きっと、つよくなる』
『ラスト・ワルツ』
(ドキュメンタリー)
『ブリグズビー・ベア』
『泣き虫しょったんの奇跡』
『判決、ふたつの希望』
『エリック・クラプトン〜12小節の人生〜 』
(ドキュメンタリー)
『ボヘミアン・ラプソディ』
『パッドマン 5億人の女性を救った男』

【私の今年の★★★★▲(星4つ半)映画】(観た順)

『私が殺したリー・モーガン』
(ドキュメンタリー)
『blank13』
『スリー・ビルボード』
『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』
『万引き家族』
『テイク・エブリィ・ウェーブ』
(ドキュメンタリー)
『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ☆アディオス』
(ドキュメンタリー)
『ピアソラ 永遠のリベルタンゴ』
(ドキュメンタリー)
『家へ帰ろう』
『日日是好日』

おお、音楽ドキュメンタリーが、5本もあった。
『テイク・エブリィ・ウェーブ』はなんと
サーフィンのドキュメンタリーでした。

33本しか観なかったのに★4つ半、5つが、
合わせて20本もあるというのは、
かなり良い映画の確率が高かった年だと思う。



 ひとりごと