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2026年 映画・演劇・舞台 etc

    
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2026.4.14

1975年のケルン・コンサート
KöLN 75




キース・ジャレットを初めて聴いたのは、
1995年 33歳で上京した冬だった。
バーテンダーの修行(というと大げさだけど)の
ために週末、自由が丘にあったバーで
アルバイトをさせてもらっていた。
シガー(葉巻)も吸えるオーセンティック・バー。
そこで流れる音楽(バーのマスターの選曲)は、
マドレデウス(ポルトガル)、エンヤ(アイルランド)、
マイク・オールドフィールド(イングランド)など
それまで私が聴いてこなかった音楽だった。

そんな CD の中にキース・ジャレット
(アメリカ)の『ザ・ケルン・コンサート』もあった。
ケルンでのコンサートのライヴ録音盤だ。
初めてそれを聴いた時は、ケルンがドイツの
街の名だということさえ知らなかった。
『ザ・ケルン・コンサート』は、ソロ・ピアノの
アルバムだったのだが、全編が即興だと
聞いても信じられなかった。
2枚組の CD で1枚に2曲ずつ、合計4曲。
曲のクレジットは、「Part I」、「Part IIa」、
「Part IIb」、「Part IIc」と曲名もない。
そもそも即興なのだから、はなから曲名などないのだ。
後にこのアルバムは、ジャズの中でも重要な1枚だと知った。

キースは現在80歳で、すでに音楽界から引退している。
脳卒中を発症し、その後遺症で残念ながら
演奏ができなくなったようだ。

前置きが長くなった。
今日は映画『1975年のケルン・コンサート』を観てきた。
前述のキースのアルバム『ザ・ケルン・コンサート』に
関する映画だ。
しかし、これはキースの映画であって、
キースの映画ではない。

主人公は、ケルンの女子高校生のヴェラ。
ひょんなきっかけから、ミュージシャンのツアーを
ブッキングすることを始めたヴェラは、
ベルリンのジャズ・フェスティバルで、
キース・ジャレットの演奏を聴き、衝撃を受け、
キースのケルン公演の開催を決意する。
当時18歳だったヴェラが、キースをケルンに
呼ぶまでも簡単な道ではなかったのだが、
当日になって、会場に用意されていたのは、
壊れた小さなピアノ。
キースは「このピアノでは弾かない」という。
さて、どう乗り切るか。
その日のコンサートの裏側で、こんなドラマが
あったとは知らなった。

ジャーナリストの質問に答える、キースの言葉が
深くて、そのシーンだけでももう一度観たいぐらい。
そして、この日キースは疲れていて、睡眠不足で
腰が痛くて、演奏をしたくなかった。
録音にも反対だったとは。

冒頭に「Inspired on true story」とテロップが出る。
「Based on」ではないし、オフィシャルサイトにも
「その舞台裏をドラマチックに映画化した」と
あるので、創作部分も多いと推測する。
できればどこが事実で、どこが創作か知りたいが、
それは無理だろうか。
でも、とにかく面白かった。

「全編が即興だと聞いても信じられなかった」と
書いた通り、私はある程度、モチーフぐらいは、
準備してステージに挙がっているんじゃないか、
こんな即興ができるわけない、と思っていた。
特に「Part IIc」は、『Memories of Tomorrow』
というタイトルでスタンダードになってしまっている。
それほど完成されたメロディなのだ。
しかし、この映画のキースを観る限り、
あれは本当に即興なのだと思った。
異常なほどの集中力で演奏しているので、
観客の咳で演奏が止まってしまう(来日公演での
実話)んだろう。

そして、驚くべきことは この映画でキースの
演奏音源が1曲も使われていないこと。
許諾が得られなかったという事情のようだ。
しかし、ちゃんとキースがピアノを弾いている
映画になっているのが 素晴らしい。
途中流れるキースの演奏は、ステファン・ルスコーニ
というスイスのピアニストがキースを模して
演奏しているらしい。
マイルス・デイヴィスの実際の演奏などは
流れるんだけどね。
鑑賞時にはキースの音源を使っていないなんて
事情を知らなかったので、原題が「KöLN 75」なのに
そのコンサートのキースのピアノ演奏が一音もなく
終わるのは 逆に斬新!と思ったよ。
これは音源を使えなかった怪我の功名じゃないだろうか。

キースを演じるジョン・マガロ、キースの
マネージャーのマンフレート・アイヒャー役の
アレクサンダー・シェアーがとても良い。

主役 ヴェラ を演じたドイツの女優
マラ・エムデは、映画の中で16歳から18歳を演じる。
どうみてもティーンには見えないので
そこは「ちょっと無理があるで」と思ったが、
1996年生まれとあるから、やはり撮影時には
28歳か29歳だったということだな。

この手の映画で、役がドイツ人なのに
全員英語を話すというのも珍しくないが、
本作ではちゃんとドイツ語と英語が
使い分けられており、そこは好感が持てた。

18歳の女性が、アメリカ人ジャズピアニストの
しかも1000人のオペラ・ホールのブッキングを
したなんて、1970年代ならではだろう。
現代ならシステムが出来上がっていて
そんなことは、無理なんじゃないだろうか。

今、『ザ・ケルン・コンサート』を聴きながら
これを書いているが、51年前の演奏であること、
そして、あの背景があったと思うと
また一味違って、感慨もひとしおです。
素晴らしい。
これ、ジャズ・ソロ・ピアノで一番売れた
アルバムだそうです。
こうなると、一度も生でキースを聴いていないのは、
とてもとても残念。

監督はイスラエル出身のイド・フルーク。


★★★★▲


2025年製作/116分/PG12/ドイツ・ポーランド・ベルギー合作
原題:Köln 75
劇場公開日:2026年4月10日

恵比寿ガーデンシネマにて鑑賞



ところで、驚いたことに本作が
今年初めて映画館で観る映画だった。
もう4月の半ばなのに。
コロナ禍の前は、年間50本から60本、
映画館で観ていたのに何かが変わってしまったようだ。
コンサートやライヴの数は、2022年には
コロナ前の数に戻ったのだけど、どういうわけだろう。
別に映画に興味がなくなったわけではないのだけど。





2026.4.18

Man on the Run
マン・オン・ザ・ラン




ザ・ビートルズ解散後のポール・マッカートニーの
数年間を描いたドキュメンタリ―『マン・オン・ザ・ラン』。
タイトルは、1973年に発売された、
ポール・マッカートニー&ウイングスのアルバム
『バンド・オン・ザ・ラン』から来ているのだろう。
製作は、Amazon MGM スタジオ。
全世界で今年2月19日、1日限定上映し、
2月27日から Amazon Prime Video による
世界配信が始まった。

本作を観て、私はポール(というかビートルズの
メンバ―全員だけど)が、ビートルズを解散して
どんな気持ちだったのかとか考えたことがなかった
ことに気付いた。
ビートルズで大成功し、解散し、それからも
苦労することなく、世界の音楽の第一線に
君臨し続けている、そんな勝手なイメージを持っていた。
もちろんビートルズ時代に観客が音楽を
聴かないのでライヴができなくなったり、
解散前後でジョンとの不仲説とかがあったのは
知っていたけど。

以下、ネタバレ含みます。
ビートルズの解散は、ジョンが脱退を言い出した
ことが始まりだったのに、ポールの脱退が先に
報道されたために、ポールが悪者になったとか、
ウイングスでは、リンダが叩かれたりとか、
何よりもポールが、ビートルズ解散後に
自分を立て直すのに、ずい分と時間がかかって
いることを恥ずかしながらこれを観て初めて知った。
なんだかそういう苦悩とポールのイメージが
結びつかなかったんだ。
でも、考えてみれば、いや考えるまでもなく、
ポールも人間だ。
もとビートルズの中心人物であっただけに、
その後のプレッシャーも半端なものではなかっただろう。
いつもいつも、ジョンと比較され、「ビートルズの
再結成は?」とうんざりするほどマイクを
向けられてきたことだろう。

ビートルズの解散が、正式に落ち着くのに
何年もかかっていることも知らなかった。

1975年の日本の法務省によるビザ発給拒否で、
来日公演が中止になったことや、
1980年のウイングスとして来日した際、成田空港で
大麻取締法違反により逮捕され、公演が全て
中止になった、あの事件のこともしっかり描かれている。
事前に「日本は厳しいから大麻を絶対に持って行くな」と
聞かされていたのに、やっちまったポールの心境。
もしかしたら、7年刑務所に入らなければならないと思い、
娘たちが東京の郊外で育つ姿を想像したという。

印象に残ったのは、ビートルズ解散の発表時に
配られた書面に書かれていたこと。
「今後の計画は?」の質問の答えは
「My only plan is to grow up.」

ジョンがポールのソロアルバム『マッカ―トニー』を
かなりすり減るぐらい聴き込んでいたこと。

ポールが、「僕の人生で大きな恵みは、
(ジョンと)和解できたこと」と語っていること。

1980年、ジョンの事件の当日、マイクを
向けられたポールが、とても冷たく応えており、
途中で「じゃこれで、以上だ」と話しを切る。
見ている者には、あまりにつれない態度に映る。
実際、そういう批判があったようだ。
しかし、ショーン(ジョンの息子)が、こう語る。
「僕には分かってた。
彼の目や声のトーンが物語っている。
ポールはこの出来事を受け止めきれてない。
あの時の彼の様子はまるで、ロボットだ。
冷酷だという人もいるが、当時から
そう思っていなかった。
ひどいことが起きるとああいう反応は当然だ」

ポールの娘は、その日の父ポールのことを
「あんなに驚いた姿を初めて見た」と語っている。

ビートルズ解散後もポールには名曲が多い。
『My Love』、『Silly Love Songs』、
『No More Lonely Nights』、『Let ’Em In』、
『Listen To What The Man Said』、
『Band On The Run』など
これらは、私が好きな曲だ。


★★★★▲


2025年製作/115分/イギリス・アメリカ合作
原題:Man on the Run


Amazon Prime Video で鑑賞







 ひとりごと